24 新しい執事は個性が強め
うなだれていると、アレクサンダーが肩ポンしながら慰めの言葉をかけてくれた。
「まぁ、これは仕方のないことかと。コトリ様は何も悪くはありませんよ」
「悪くはないかもしれないけど、良心が痛む~っ!!」
良かれと思ってしたことがうまくいかなかった時の無力感たるや……!
しかも一度は持って帰ろうと思っていただけに後悔がやばい。保身に走ってしまったばっかりに。
取りに行ってあげるべきかなぁ? いや、それなら彼女に落ちてた場所を教えたほうがいいかな。
「もう日が沈むし、今から伝えても町の門が閉まる時間になっちゃうよね。それでもあの人に伝えたほうがいいかな……」
なんで持って来てくれなかったの!? とか言われたらどうしよう。彼女の様子からしてそんなことは言わなさそうだけど……ああ、また保身に走ってしまう。
「良い案がなくもないです」
「え、なになに!?」
迷えるコトリにアレクサンダーが提案を口にした。
どことなく嫌そうだけど、今は何でも食いつくよ!
「あの方のカバンを今日中に取りに行くことが出来ますし、うまくいけばコトリ様はあの者に恩を売れ、謝礼もいただけます」
「まるで私が恩を売って謝礼を欲しがってるみたいな言い方はやめよ? どこで覚えたのそのハンドサイン」
手でコインの形を作りながら淡々と言うんじゃない。
それはさておき、そんなうまいアイデアがあるなら聞かない手はない。
こういう詐欺の手口がありそうな上、アレクサンダーが言うとますます胡散臭いことはこの際置いておく。
「新たな執事を召喚するのですよ。こういう時こそ、コトリ様のスキルの出番なのでは?」
「あっ、そうか。そう決めてたっけ」
次に新たな執事を召喚する時は、必要な時って決めてたもんね。
思っていた以上に有益な提案だった。
そうじゃん、私にはまだ見ぬ有能執事がいるんだった!
「今の状況で必要なのはやっぱりスピードだよね。足がとんでもなく速い執事とか、いる?」
「……はぁ。いますよ、適任が」
「……なんか嫌そうなのは気のせい?」
ま、まぁ、気のせいということにしておこう。
魔力は残り……うん、9ある。ずっとアレクサンダーを召喚しっぱなしだったから心配だけど、9あれば呼べるよね?
アレクサンダーがあと十分くらいしか残れなくなるけど仕方ない。
「じゃあ、早速。執事召喚!」
右手を伸ばし、足の速い執事を強く求めて路地裏でこっそり召喚。
手の甲にあの紋章が現れ、地面に同じ魔法陣が描かれていく。いつも通りの光景だけど、新しい執事が出てくると思うとワクワクするね。
魔法陣からゆっくりと執事が現れた。
輝く銀髪、襟足は長くて、細い三つ編みに結っている。身長は私より少し高めくらいの小柄な感じだ。
あっ、執事服だけどズボンが膝下丈だ。しかもスニーカー。それだけでなんか速そう!
「いやっほーーーー! やっと呼ばれたぜぇ、オレちゃん! 新しいご主人様、うぇーい!!」
「え、チャラ……」
あまりのテンションの高さに引いてしまった。横ピースと舌ペロが似合うな……?
チラッと隣に視線を向けると、アレクサンダーも死んだ魚のような目をしている。
そんな顔、初めて見たよ。嫌そうにしてた理由がちょっとわかった。
「オレちゃんの名前はドム! ご主人様は?」
「こ、恋鳥……」
「コトリ様ぁっ! かんわいい名前っすねー! ひゅーっ!!」
「アレクサンダーよりうるさい執事とか存在したんだ……?」
「失礼ですね、コトリ様。私はこんなに下品ではありませんよ」
私とアレクサンダーの会話を聞いて「酷ぉい!」と笑いながら言うドム。うん、強いな。個性が。
「そんなことよりドム! 両手を広げて!」
「? うい」
「そのままゆっくりその場で回転!」
「うーい」
まず確認しなければならないことがあるからね!
手を広げてゆっくりその場回転するドムを頭から足先までじっくりと確認する。
……見つけた。
右ふくらはぎに例の可愛い紋章~っ!!
どうしてわざわざ肌を晒した部分に紋章があるかな!?
今のところ、アレクサンダーの首筋が一番目立たないよね!?
「コトリ様、どうかしたっすかー?」
「ううん、ありがと。もういいよ、ドム……」
私はスッと目を逸らし、ドムにお礼を告げた。
「コトリ様? 時間がないからドムを呼んだのでは?」
「そうでした」
確認より先にカバンを取りに行ってもらうべきだったね。なんのために召喚したんだか!
「ドム、お願いがあるんだ」
「オレちゃんに!? なになに~? なんでも聞いちゃうゾ☆」
「……森に向かう道の途中に、大きめなカバンが落ちてるの。目立たないように背の高い草むらに隠してあるんだけど、それを大至急持って来てほしいんだ。もうすぐ町の門がしまっちゃうから、その前に」
テンション感についていけないけど、どうにか笑顔で頼みごとが出来た。
するとドムはピシッと敬礼しながら眩い笑顔を見せる。
「お安い御用っすよー! ではっ、行ってくるっす!」
ドムはそれだけを言い残すとトンッと軽く足を鳴らす。何をしてるのかな? と思った次の瞬間、その姿が消えていた。
あとにはふわっと風が吹き、ドムが走り去った際に起こした風なのだと遅れて気付く。
「……人智を越えた速さだね?」
「精霊ですからねぇ。あの程度の距離なら、私が送還される前には戻ってくるでしょう」
「そんなに速いの!? あの場所からここまで来るのに四十分くらいはかかったのに!」
「コトリ様の足ですからねぇ……」
「ええい、そろそろアレクサンダーには『一言余計執事』の称号を与えちゃうからね!」
まったく口の減らない執事だよ、アレクサンダーは。
でも、たった一瞬だけ会話をしただけなのにドムがいなくなった瞬間ものすごく静かに感じるのはなんなんだろうね?
今のうちにタブレットでドムのステータスでも確認しておくかぁ。
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【ドム】
タイプ:スピード
HP:6000
MP:20000
攻撃力:D
防御力:D
素早さ:S
賢さ :F
器用さ:B
運 :B
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賢さ……。
私はそっとタブレットを切って見なかったことにした。
人にも執事にも得て不得手があるものだよね! それが個性だ!




