19 コトリの望むこと
一度アレクサンダーを送還してから、今度は一人で冒険者ギルドに向かう。
なんでもかんでも頼りきりだとだめになりそうだからね。やり方はわかったし、わからないことは職員さんに聞けるし。
それに執事召喚は魔力と相談しなきゃいけない時間制限付きだ。レベルだって急には上がらないし。
常に側にいてほしい気持ちはあるけど、いざという時に困らないためにも一人でなんとかなるなら控えておこうと思ってさ。
そう伝えたらアレクサンダーは悲しい顔で送還されていったけどね。本当にいちいち大げさだよ。
「えっ、あんな目に遭った翌日にまた採集依頼かい?」
「ロッテさん。おはようございます」
そして今、私は冒険者ギルドの魔導掲示板の前に立っていたところをロッテさんに声をかけられている。
気持ち的には私もお休みしたいところなんだけどね。ここで休んじゃうと、次に採集に行く時もっと怖くなりそうで。
「弱音なんか吐いてられませんからね。働かなきゃお金は稼げないので」
「そりゃそうだ。なんだ、意外と根性あるんだね、コトリは」
「図太い自覚はあります」
「ん! 冒険者に必要な素養だ! まぁ、昨日みたいなイレギュラーはそうそう起こるもんじゃない。最低限の警戒を怠らないこと、森の奥には入らないこと、ってのを気を付けてりゃ大丈夫さ」
ロッテさんのような頼もしい大人の女性に励まされると元気が出るよね。
その後、私はロッテさんにオトギソウ以外の初心者向け以来のおススメを教えてもらい、採集に向かった。
◇
朝起きて、冒険者ギルドに向かい、依頼を受けて採集、夕方になる前に帰ってくる。
これを四日続けては一日休みを繰り返す日々が続いた。
幸運にも、というかこれが普通なのだろうけど、初日以外は特に強い魔物が出てくることもなく、平和に採集が出来たのはよかったな。
それからレベル上げも地道に行っている。
毎日アレクサンダーだけを召喚していてもレベルが上がりにくいと言われたので、すでに召喚したことのあるバリーとチャズを時々召喚してみたりもした。
「これといって特別な用はなかったんだけど、呼んで大丈夫だった?」
という私の質問に対し、バリーは、
「なんの! コトリ様との交流の機会を与えられるのは嬉しい! いつだって呼び出してくれていいんですぜ!」
と白い歯をニッと出して元気に答えてくれた。うん、今日も上腕二頭筋が素晴らしいね!
それだけに私の可愛らしい紋章が残念で仕方ないけど。
せっかくなのでご自慢の筋肉を触らせてもらったりもした。意外と柔らかくて変な声出ちゃった。
貴重な体験、ありがとう。主人特権でまた触らせてください。
それから同じ質問をチャズにもしたところ、
「別に、気にしない」
という素っ気ないお返事だった。予想はしてたよ。
でもこちらの質問にはちゃんと答えてくれるし、お礼を言うと恥ずかしそうにするのでそれだけで十分。
たぶん会話は苦手だろうに、いつも律儀に答えてくれてありがとうね。
チャズが苦手なことでも一生懸命応えてくれる姿に悶えたくてさ……悪い主人でごめん。
けど、やっぱり毎日召喚してしまうのはアレクサンダーだ。
最初に呼んだから、というのもあるのかもしれないけど、なんとなく一番丁度いいんだよね。うるさいけど。
ずば抜けて何かが得意というわけじゃなくても、なんでも出来るというのが心強いのかもしれない。
ペラペラ喋りながらでも、食事の用意や身の回りの世話を当たり前のようにしてくれるからかな。お母さんか?
あっ、あと弱い魔物なら簡単に倒してくれるしね。
おかげで魔物討伐部位も売れて少し財布も潤いつつある。
……それを私の実績にされてしまうのがなんとももどかしいけど、細かいことを言っていたらキリがないので、考えないことにした。
ちなみに、アレクサンダーの召喚場所は森についてからだったり、町を出てすぐだったりと毎回まちまちだ。
だって当たり前だけど、いつも違う場所に人がいるんだもん。
こそこそ人目を気にして召喚しなければならないのが不便だけど、人に知られた時のほうが面倒になるならこのくらいは我慢だ。
そうこうしている間に、私のレベルがまた1上がった。ようやくレベル3である。
同じ執事ばかり召喚していることと、私自身が魔物の討伐をしていないから上がりにくかった模様。
だけど、採集と同じスキル行使だけでレベルを上げるには本来一か月はかかるそうなので、二週間たたずに上がったことを考えるとやはり早いみたいだね。
これで魔物を倒せるほどフィジカルが強ければもっと面白いくらいに上がるのだろうけど、無理はしないがモットーなので!
「他にも呼ばれるのを待っている執事がたくさんいるのですけどねぇ。あらゆる執事を呼び出せば、その分レベルも上がりやすいのですが」
「でもそれって初回特典みたいな感じでしょ? 一度呼び出した執事を次に呼び出した時に得られる経験値は同じになる、みたいな」
「意外と鋭いですね。その通りです」
「意外は余計なんだよ、アレクサンダー」
呼ばれるのを待ってる、と言われると私も呼んでみたいなと思うけど……んーっ、やっぱり楽しみにしたい!
誰を呼ぼうか一生迷う気がするし、初対面の執事を用もなく呼ぶのにどうしても抵抗があるのだ。
これまで通り必要な時に必要な能力を持っている執事を呼ぶか、魔力が100を超えた時にまた新しい執事を呼んでみようと思う。
あと、執事召喚だけで初回のレベル上げをするのが、なんだかずるをしているみたいで嫌なんだよね。
チート能力くれよ! って叫んでいたくせに何を言ってるんだ、って感じだけどさ。
改めて自分のステータスを眺めてみる。
まだレベルが低いからステータスの上昇も微々たるものだ。
でもレベル1の時の倍以上魔力量が増えたのでまた召喚出来る時間が増えたのが嬉しい。
心細いと思う時間が、その分減るってことでもあるから。
ようやく生活のリズムが整ってきたかもしれない。
アレクサンダーのおかげで生活の心配をしなくていいというのが精神的支えとして大きいかもね。
そろそろ、この先どう生きていくかを考え始める時だろう。
……うん。やっぱり改めて考えなくても望みは変わらないや。
悲しくなるから考えないようにしてきたけど、今ならこう思っても泣きたくはならない。
──私は、元の世界に帰りたい。
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【コトリ・アサウミ】Lv3
HP:24
MP:22
攻撃力:F
防御力:F
素早さ:E
賢さ :C
器用さ:D
運 :A




