18 腹立つけど有能!
うーん! すっきり良い目覚め!
でもどことなく目が重い気がするのは、昨日たくさん泣いたからかな。
……あれっ? 私、いつ寝たんだろう?
服は質のいい寝間着になっており、髪はほどかれふんわり良い香り。
なんというか、しっかりお風呂に入って温まってぐっすり寝ました、って感覚がある、気がする。
「昨日、お風呂なんか入ったっけ……?」
いやいや、入るわけない。この世界にお風呂というものがあるのかはわかんないけど、少なくとも私はお湯で身体を拭くか、水浴びみたいなことしかしてないもん。
寝てる間に一体なにが? まさか誰かがお世話してくれたわけでもあるまい、し……。
待って。そういえば私、アレクサンダーを呼び出したばかりで寝落ちしたような気がする。
アレクサンダーが無事で、ほっとして、そしたら怒りがこみ上げて、散々喚いた後に疲れ果てて寝たんだ。赤ちゃんかよ。
しかも私、何も言わなければ魔力切れまで召喚し続ける設定にしていたような。
つ、つまり。アレクサンダーは私が寝た後、一時間半ほど同じ部屋で過ごしていたってこと?
あのうるさい執事が一体その間、何をして過ごしていたというのだろうか。
もっ、もしかしなくても、執事の仕事とかいって寝ている私の世話をしてくれた、とか? 着替えも、身体を拭くのも……?
え、嫌だ。身の回りのお世話をしてくれるとはいえ、いくらなんでも裸を見られるのはちょっと。
いくら私が図太くても、一応は年頃の乙女なのに!
でも精霊なら……いや無理無理。あんな人間っぽい姿と言動してたらもうほぼ人間といっても過言ではないでしょ!
問い質さなくては……! とはいえ、聞くのもちょっと恥ずかしいな?
でも、もしこの先も似たようなことがあった場合、注意しておかなきゃいけないし。
ええい、今更恥ずかしいもなにもあるか! 昨日すでに泣き喚く失態を晒してるからね!
「執事召喚、アレクサンダー!」
もはや慣れた調子でアレクサンダーを召喚する。
お腹空いたし、バトル執事のチャズについても聞きたいしね!
「お呼びですか、コトリ様ぁ! どうやらすっきりお目覚めのようですね? 目元も……うんうん、腫れておりません。さっすが私」
「え、目元? ……確かに、腫れてはいないかも?」
ペタペタ顔を触りながら確認してみると、目元だけじゃなく顔もそこまでむくんでない気がした。
あれだけ泣いて顔もぐっちゃぐちゃで寝落ちしたというのに、だるさは少しあっても腫れてないとは。
「さすが私、って言ったよね? ……アレクサンダーが、何かしてくれたの?」
「ええ。昨日はあのまま眠ってしまわれましたからね。執事として、ご主人様の体調管理には気を配るようにしていますので」
なんと、アレクサンダーは冷たいタオルと温かいタオルを交互に使って顔を優しく拭ったり、保湿のためのクリームを塗ったりと甲斐甲斐しくスキンケアまでしてくれたとか。エステティシャン?
なんてくだらないことを考えている場合ではない。これも絶対に聞いておかなければ。
「ね、ねぇ。着替えさせてくれたのもアレクサンダーなの?」
「ええ。あっ、もちろん着替えの前に全身を綺麗に洗浄させていただきましたよ」
「洗浄!?」
やっぱりそうなのね!?
ひぃ、良かれと思って世話をしてくれたから怒るわけにもいかないし、むしろ正直ありがたくはあるんだけど、今後どんな顔してアレクサンダーを見れば——
「はい。このように!」
大慌てな私に対し、アレクサンダーはパチンと指を鳴らす。
その瞬間、ふわりと私の身体に温かな風がまとわりついた。何、何っ?
文字通り「あっ」と言う間もなく、気付けば全身がすっきりした感覚。
さらに、寝間着だった私の服がいつもの服装になっていた。しかもこれ、絶対に洗濯済み。
「私はこういう、身の回りのことに関する生活魔法というものが得意なのです。ご要望とあらば湯船もご用意出来ますが、寝ている間の入浴は危険ですからね。お顔のケアはさせていただきましたが、身体は失礼ながら魔法でささっと済ませてしまいました」
魔法、すごい。というか、顔のケアだけは丁寧にしてくれたのも気遣いの神かもしれない。
だというのに私ってやつはアレクサンダーを少し疑ってしまったのか。
は、恥ずかしい……!
俯いて自分を恥じていると、アレクサンダーが腹立つ顔を浮かべながらわざわざ覗き込んできた。
「あっれぇ? どんな想像をしてらしたんですかぁ? まさか私がコトリ様に無体を働いたとでもぉ?」
「う、うるさいなっ! 仕方ないでしょ? 警戒心くらい私にだってあるもん!」
「その割にスヤスヤと安心しきったお顔で眠っておられましたけどねぇ。私の! 腕の! 中で!!」
「言い方ァ!!」
くっ、絶対にわざとだこの執事。腹立つ~っ!
最初に会った時の丁寧さはどこいった!? 完全に被ってた猫ちゃんが逃げてるぞ!
……でも、助かったのは事実。気を効かせて自分で考えて行動出来る優秀さも認めざるを得ない。
「……あ、ありがと」
口を尖らせてそう言うと、アレクサンダーはワンテンポ置いてから「どういたしまして」と微笑んだ。
その後、アレクサンダーの用意した朝食をとりながらチャズについて教えてもらった。
一度召喚した執事のことなら、詳しい説明もある程度はしてもらえるらしい。
ステータス一覧も更新されるから、そのタイミングで執事側も情報解禁が出来るようになるのかもね。
やっと聞けて良かった。ただチャズを召喚する時は身の危険が迫ってる時、みたいなものだから、召喚せずに済むならそれに越したことはないって感じなんだよね。
でもせっかくなら仲良くなりたいし、危険なことがなくても時々召喚はしてみたいなぁ。用もなく呼ぶのは迷惑かもしれないけど。
さ、朝ご飯も食べ終わったし、チャズについてもメモしたし、今日の採集について改めてアレクサンダーと相談しよう。
怖い思いはしたけど、ここで冒険者の活動を休んでいたら先が思いやられるからね。
怖くても仕事は仕事! 働いてお金を稼ぐ目標は変わんないんだから!
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バトル執事
名前:チャズ
外見年齢:20代半ば
身長:178㎝(アレクサンダーよりやや低いらしいのでこのくらい)
必要魔力:8
赤髪長髪で暗器や武器も隠し持っているらしい。でもよく使うのは銃や剣が多めだそう。銃、あるんだ……?
とにかく強い戦闘要員で、その分消費魔力も多いけど大抵の敵には勝つんだって。最強。
その際、周囲の物も壊しがちなので注意。頼りすぎないように危険には近付かない、を心掛けたい。
無口というより口下手な印象。照れ屋だしちょっと可愛いかも。




