11 裏稼業に手を出してないだろうか
方向性が決まったところで、宿でアレクサンダーから基礎知識を習うことに。
スキル持ちの人は珍しいって言ってたけど、どんな割合で存在して、一般的な人はどんなスキルを持っているのか、ってあたりを聞かせてもらったよ。
曰く、スキル持ちは千人に一人くらいの割合で、その中でもよく見かけるのは戦闘系スキルや魔法特化スキル、治療スキルや薬師スキルなど、とのこと。
ふむふむ、珍しいといってもそこまでじゃなさそう。それから自分の能力を高めるスキルが多い、って感じか。
召喚系スキルもあるらしいけど、これは本当に希少だそう。特に精霊召喚は伝説レベルなんだって。
私がまさにこれにあたる、と。
これが私の異世界転移チート能力ってことか……。
有能すぎる執事の精霊召喚だもんねぇ。
衣食住に困ることがないというのも、冷静になって考えればとんでもない能力だ。
とはいえあんまり自分の力という感じがしなくて釈然としないんだけどね。
ないものねだりで贅沢な不満だと思う。
だからこそ、感謝の気持ちは忘れずに持っていよう。これは当たり前ではない! ってね。
その他、冒険者のランク別ステータスの例なんかも教えてもらえて助かった。そういう常識は知っておきたかったからありがたい。
うーん、やっぱり上位ランクの冒険者は全体的に能力が高めだ。それでも執事には遠く及ばない感じだったけど。
執事を基準にしたらダメだってことがよーーーーくわかった。
ちなみに他の召喚獣と比べてもかなり能力が高いらしい。さすが精霊。
鼻高々で語るアレクサンダーが少しだけ可愛く見えた。
でもハイスペックなんだよなぁ……ずるい。
ステータスの他は通貨とか、世界の常識とかも教えてもらえた。
他にもいろいろあるらしいけど、そういうのは生活していく上で都度知っていったほうがいいとのこと。
一理あるね。今詰め込んでも全部忘れる自信しかない。
疑問に思ったことはその時に聞いて、私がおかしなことを言いそうな時は執事に止めてもらうって方向で話はまとまった。
「まだ時間は残っていますし、冒険者ギルドに行って登録でもしてきますか?」
「出来るの!?」
「ええ、もちろん。登録料もガイドもお任せを」
「ぐ、ぬぬぬ……一文無しだし、最初は頼るかぁ。ってかその資金は一体どこから出てるんだろう?」
「さぁ、どこでしょうねぇ?」
悪い笑みを浮かべるんじゃない。
え、本当に大丈夫だよね? 怖い。経済バランスを崩してしまうとか、ないよね……?
「ふふっ、冗談ですよ。ご安心ください。ちゃんとした筋から得たお金ですから」
「ちゃんとした筋」
本当に? 信じるよ?
にしたってまるで贋金や盗んだお金を使うかのような気分っていうか、すごく悪いことをしている感覚になるんだけど? そういう冗談、良くないぞ!
ええい、考えたら負け! お借りしたお金は絶対に自分で稼いで返したいし、コツコツやっていこう!
返済後は少しお金を貯めつつ、冒険者の仕事に慣れることから始めよう。旅に出るのはその後って感じで。
うんうん、目標が出来るとやる気も出るってものだ。
あと、直接お金を貰う以外は執事をどんどん頼っていこうと思う。
これも私の能力ではあるし、一人で何でも出来るほど強くもないから、意地張ってたって仕方ないもんね。
「よし! それじゃあ冒険者ギルドに行こう! アレクサンダー、手続きとか手伝ってね」
「はい、よろこんで!」
さっき行ったばかりだし、道は大丈夫。
ただ、またロッテさんたちに会うのは少し気まずいね。忘れ物でもしたかとか、もうお金なくなったのかとか聞かれそう。
「ありゃ、もうお金がなくなったのかい?」
「言われる気がしましたが、違います!」
やっぱり聞かれた。私が食い気味に答えるとロッテさんは声を上げて笑った。
まったく、執事といいこの世界の人は冗談が好きだね!
「ん、その人は?」
「あっ」
しまった、今はアレクサンダーが一緒なんだった!
この町で合流する人がいるって話はしてあるし、大丈夫かな?
でもどうやって紹介しようかなぁ、なんて少し悩んでいると、アレクサンダーが一歩前に出て自ら挨拶し始めた。
「私はコトリ様の執事でございます。この町で合流予定でして、ようやく見つけたのですよ」
「ああ、言ってたね。でもまさか執事だなんて。え、もしかしてコトリはやんごとない身分の……?」
「ち、違います! 一般人ですよ、私は!」
「でも一般人は執事なんて連れ歩かないよ」
ごもっとも! でもあり得るんですよ、このようにね!
ど、どうしよう、なんて言い訳すれば……!
「コトリ様は一般人でございますよ、ロッテ様」
「なんであたしの名前……んん?」
しばしアレクサンダーとロッテさんのにらみ合いが続く。何? 何が起きてるの二人の間で。
「……なるほどね。一般人か。そういうことにしといてやるよ」
「ご理解いただけで感謝いたします。あ、これはコトリ様がお借りしていたお金になります。親切にしていただいてありがとうございました」
「いや、困ったときはお互い様だからね、って。貸した分より多いじゃないか!」
「コトリ様を救ってくださったのです。どうかお受け取りください」
……なんか、なんかさぁ。
まるで私が「一般人のフリしたやんごとない身分のお嬢様」みたいなことになってない?
直接的な言葉は何も言ってないのに、にらみ合いとそれっぽい話術でそう思わせてしまったというか。
しかもサラッとアレクサンダーが借金を返しちゃった。悔しい。悔しすぎる。
早く返せて良かったけどさぁ! 私の決意の行き先ぃ!!
その後、二人はしばらく会話を続け、最後には固く握手をして話を終えた。もはや私に口を挟む隙はない。
「さ、コトリ様。お時間もあまりありませんし、早速冒険者登録をいたしましょう」
「あっ、そうだね! ロッテさん、何度も言いますが色々とありがとうございました!」
「ははっ、本当に何度も言うね? いいんだよ。冒険者の活動で困ったことがあったらいつでも言いな!」
ロッテさんは最後にそう言い残すと、にこやかにその場を離れていった。
それを笑顔で見送る私たち。
「……ねぇ、アレクサンダー?」
「嘘は申しておりませんよ?」
「でも誤解するように誘導したよねぇ?」
「はて。ロッテ様がどう誤解なされたのかは、私にはわかりかねますね」
息をするように嘘を吐くじゃん……?
やっぱりアレクサンダーは胡散臭い。みんな騙されないように気を付けてほしい。
私だったらすぐ騙されただろうなぁ。主人で良かった。




