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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
一章

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10/43

10 異世界でお金を稼ぐ方法三選


 アレクサンダーの微笑みはなんというか、本当に胡散臭い。腹黒な雰囲気をひしひしと感じる。


 とはいえ、タブレットの説明には「執事は絶対に主人を裏切ることはない」って書いてあったし、心配はしてないけどね。これも個性だと思って受け入れようと思う。


 さて、落ち着いたことだしいろいろと聞かせてもらおう。今度こそ長く召喚していられるしね! まずはー。


「アレクサンダー、この世界でお金を稼ぐ方法を教えてほしいの!」

「少しお待ちくださいませね。思わぬ方向からのご質問に理解が追い付いておりませんので」


 ああ、ごめん。事情をすっ飛ばして急にこんなこと言われたってアレクサンダーも困るよね。

 なんとなく、ずっと私のことを見てくれていたような感覚で話しちゃった。よく考えなくてもずっと見られていたら嫌だけど。


 でもアレクサンダーなら知っていてもおかしくないな、って思っちゃう。それはそれで怖いか。


 私はベッドに腰掛けると、アレクサンダーにも椅子に座るように声をかけて、バリーを召喚した後から今までのことをざっくりと話して聞かせた。


「ふむ、バリーはかなりお役に立てたようですね。コトリ様からの評価が高く、大変妬ましいです」

「正直だね、アレクサンダーは」


 執事同士で張り合うこともあるんだ? これも執事によって性格が違うのかな。

 なんだか面白いよね。人間じゃないって言っていたけど、すごく人間味がある。


 アレクサンダーはひとしきり悔しげに顔を歪めた後、改めて説明しましょうと告げた。

 大げさな動きと余計な話を挟みはするけど、説明は上手なんだよね。助かる。


「お金を稼ぐ手段はございますが、我々がいる限りコトリ様がお金を稼ぐ必要はあまりないのですがねぇ」

「どういうこと?」

「食事も、住処も、全てをいつでもご用意できるということです。本来ならこうして宿に泊まる必要だってないくらいなのですよ」

「ダメ人間まっしぐらじゃん」


 生きていくだけなら出来るってことでしょ?

 衣食住が保証されていて、住処から出ない引きこもり生活……私のように人恋しくなるタイプは早々に病む自信があるね。


「私はちゃんと人間らしい生活がしたいんだよ。それに異世界に来ちゃったんだから、どうせならいろんなところへ行って、いろんな体験をしてみたいじゃない。お金だって自分で稼いで、普通に買い物もしたいし」

「……失礼ながら、ご質問させていただいても?」

「うん?」


 私が口を尖らせながら文句を言っていると、アレクサンダーが片眉を上げながら不思議そうな顔で聞いてきた。なんか珍しいな。


「コトリ様は、この世界に来る前はどのような暮らしをしていたのでしょうか」

「あー……」


 予想外の質問に今度は私のほうが片眉を上げてしまう。


 なんとも答えにくい質問をしてきたものだ。

 別に普通に答えればいいだけなんだけどね。特別おかしな暮らしをしていたわけじゃないんだから。


 そう、私はどこにでもいる普通の学生だった。

 平和で、幸せと呼べる日々だったと思う。


「……まぁ、普通に女子大生やってたよ。まだ一年も経ってない秋にこの世界に来ちゃったけど」

「急に異世界に来られて、さぞご不安なことも多いのでは? ですがコトリ様はその」

「平気そうに見える?」

「え、ええ。端的に言えば、まぁ、そうですね。常に笑っていてくださいますから」


 別に思うところがないわけじゃない。

 泣きたいし、帰りたいし、それでいて異世界ちょっと楽しいなって思ったりもする。


 矛盾してるなぁ、とは思うけど……それはたぶん、今の私にはアレクサンダーがいて、この世界でもどうにか生きていけるとわかったからだ。


 あと、あんまり考えないようにしてるんだよね。

 マイナスなことばっかりで頭がいっぱいになりそうだし、それは辛いと思うから。


 せっかくの新天地を楽しんでやるという気持ちでいたほうが、たとえ強がりだったとしても心が楽なんだ。


 ただ、それだけ。


「そう見えるなら、よかったよ」


 頑張って今の状況に適応しようともがいている段階なのだ、私は。

 これまでのことや、未来のことを考えるにはまだ早い。


「そんなことより、お金を稼ぐ方法だよ! 私でも出来る仕事ってあるかな?」

「……失礼いたしました。ではお答えいたしますね。この世界でお金を稼ぐ方法は大きくわけて三つ!」


 どことなく腑に落ちてない雰囲気を醸し出しつつ、アレクサンダーはビシッと指を三本立てて説明に戻ってくれた。

 いいね。その切り替えの早さ、好きだよ。


「一つ目は商売です。けれどこれは始める前に資金を必要としますし、この世界になんの伝手もコネもないコトリ様が始めるにはリスクが高いでしょう」

「たしかにね。そもそも、売れるようなものがないし」


 アレクサンダーが色々出してくれるけど、帰還したら同時に消えてなくなるんじゃただの詐欺だしね。

 犯罪に手を出す気はない。まっとうに生きたい。


「二つ目は従業員として働くこと。こちらは雇う側も長期雇用がほとんどですので、町に定住する方向けですね。安定した収入が望めるのがメリットです」

「なるほど、正社員とか長期バイトみたいな感じかな」

「そして最後は冒険者になること。これはこまめに依頼をこなして小金を稼いでいくスタイルです。依頼によって難易度も金額も変わりますが、全国各地どこででも働けるというのがメリットでしょうか」

「冒険者!」


 心配は尽きないけど、正直冒険者になるっていうのはワクワクするよね。

 いろんな場所に行けるし、今の私が選ぶなら冒険者一択かも。……けど、危険なことも多そう。


「……やっぱ冒険者って、戦えなきゃいけないとか?」

「戦闘スキルは必要になる場面が多いでしょうね。この世界は道中でさえ危険なこともありますから」

「ぐぬぬ、私には難しいかなぁ……」


 運動神経が悪いってほどではないけど、一般的な体力しかないし、武道を習ったこともない。

 まず魔物を倒せない。怖いもん。


 でもなぁ、出来ないとか言ってられないよねぇ。初心者でもこなせる仕事なんてどの世界でも稼げる金額はお小遣い程度だろうし。


「なぜです? コトリ様には我々がいるではないですか」

「それはそうだけど、結局アレクサンダーたちに働いてもらうようなものじゃん。私は何にもできないのに」

「執事召喚のスキルも、コトリ様の力の一つですよ?」

「そうなのかもしれないけど! でもそれは自分で得た力じゃないっていうかさぁ。楽して稼いでる感があってなんというか……嫌なのっ!」

「では、戦う術を身に着けますか?」

「今からでも出来るようになるかな? 努力次第、か……?」


 頑張ればどうにかなるかもしれないけど、すぐにどうこうなるとも思えない。


 はぁ。何事も簡単な道のりなんてないよね。地道な努力あるのみだ。


「当面の間は自分に出来る依頼をちょっとずつこなしながら、執事たちに頼る生活をするっきゃないね」

「じゃんじゃか頼ってください、こき使ってください、馬車馬のように働きますので!!」

「ちょっと気持ち悪いよ、アレクサンダー……あと声が大きい」

「はっ、私としたことが。密談でしたね」

「だから言い方」


 ……ふふっ。なんか肩の力が抜けちゃったな。アレクサンダーのこういうテンションには助けられているかもね。


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