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 屋敷とメイド

瓦礫撤去の募集が出ていた場所へと向かった。


屋敷は街の高台にあったらしく、坂道を登っていくと、やがて広い敷地と鉄の門が見えてくる。大きな爆発の跡が生々しく残る屋敷の一部が、煙に燻されたまま崩れていた。


門の前には、一人の女性が立っていた。


黒い長髪をタイトに結び、完璧な姿勢で立っているその人は、白と黒のメイド服を着ていた。


「おはようございます。お二人とも、瓦礫撤去の応募の方でいらっしゃいますか?」


低く、澄んだ声。口調は丁寧で淡々としていた。


ヒロが軽く手を挙げて応える。


「そうでーっす。大人1名、子ども1名。体力にはちょい自信あり!」


かわいいメイドを見て、ヒロはテンションが上がる。


「かしこまりました。では、案内いたします。足元が悪くなっておりますので、お気をつけて」


メイドはくるりと踵を返すと、滑らかに歩き出す。


(メイドってすごい丁寧だなぁ)


リユウは言葉にしないまま、動きの一つひとつが静かで無駄がないメイドに感心していた。


瓦礫の現場には、すでに数名の労働者が作業していた。崩れた柱、焼けた木材、土砂と石。中にはまだ黒焦げの本や薬瓶が見つかることもあるらしく、作業は慎重に行われている。


ヒロとリユウも手袋を受け取り、簡単な説明を受けたあと作業を開始した。


瓦礫の下からは、時折不思議なものが見つかった。


金属でできた不思議な器具、ガラスの球体、壊れたレンズのようなもの――


「なんか色々落ちてんな…?」


「錬金術師たちが用いていた装置の残骸でしょう」


メイドはすっと手を差し出し、それを受け取った。


休憩時間になり、弁当を用意している人や外食に向かう人 労働者はそれぞれ昼休憩を始めた。


その日の作業が終わる頃、メイドが再びリユウたちの前に現れた。


「本日のご協力、誠にありがとうございました。明日も来ていただけるようでしたら、報酬は倍額にいたします。理由は申し上げられませんが、信頼のおける方にだけお願いしたく思いまして」


メイドの目が、まっすぐリユウを見ていた。

リユウは一瞬疑問に思ったが、すぐ頷いた。


「……うん」


ヒロも返事をして軽く笑った。


「おう、明日も来るぜ」


メイドは深く一礼した。


「感謝いたします。私の名はゼラ。以後、お見知りおきを」


その日も牛の屋で肉盛りを2つ買い、宿で夜食をしながら2人は雑談していた。


「なんかあのメイドさん、距離を縮めにくかったなぁ。お近づきになろうと思ったんだが…」


「そうなの?」


飯しか頭になかったリユウは興味なさげに返事をしていた。


労働後の牛の屋はまた格別にうまかった。

前はタレだったが、今回は塩の味付。

うん、最高。

リユウは事件を忘れてがっついていた。



次の日



翌朝。朝露に濡れた瓦礫現場へ、僕とヒロは再び足を運んだ。


「おはようございます、リユウ様、ヒロ様」


屋敷の入り口、ゼラはリユウとヒロを見かけると挨拶をした。

黒い長髪は朝日に照らされても艶やかで、今日もその佇まいは揺るがない。


「おはようさん。もう結構片付いてんな?昼には終わりそー」


早速作業に取り掛かる。


ー昼ー


撤去が終了した。

ゼラはお礼をし、労働者は皆解散する。


ヒロは倒れた棚の下敷きになっていた研究レポートを読んでいた。


「錬金術師達は魔人の研究してるっぽいぞ、しかも対象は15歳前後の少年少女らしい」


リユウは重ねた本を椅子にして座っていた。


「…ほんと興味なさそうだな」


リユウは飯の事を考えていた。

(トッピングとかないのかな〜)


すると、ゼラがお礼を言いにやってきた。


「今日もありがとうございました。無事に片付けられてよかったです。」


「そういえば、こんなもん見つけたぞ?」


ヒロはレポートをゼラに見せる


「それは…。今後この街は争いが起こる可能性もありますので話しておきましょう」


ゼラは説明を始める。


3年前から錬金術師達の実験は始まっていて、最初は動物から対象に 次は子供、その次は少年少女をと実験体を変えていった。


そして、当時16歳のゼラは元実験体だった。

監禁され、魔素を入れられた彼女は次第に感情と理性を失っていった。

そして夜、魔力が抑えられなくなって爆発したらしい。


「物騒だな、だから山にオオカミが…」


ヒロは話を聞いて険しい顔つきになる。


「私も今日でここのメイドは辞めます。どこか、宿ありませんか?」


ゼラはメイドを辞めるらしい…聞かれたヒロは答える。


「まぁ主人もいないしな。それなら俺らが借りてる宿はどうだ?『寝処ねどころ-朝寝あさしん-』っていうんだが」


「教えていただきありがとうございます。荷物の整頓が終わり次第、向かいますね」


ゼラは一礼するとどこかへ行ってしまった。


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