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悲しい感情?
リユウはぼーっとしていた。
それもそのはず…共に時を過ごした同居人が、この世を去ったのだ。
リユウは自分の感情にとても疎い、どうすればいいのか分からなかった。
彼の死を悼み、ヒロは一人、墓前に酒を持って出かけた。
リユウが出かけた先は、小屋から少し歩いた先にある静かな草原。
穏やかな癒しの地だった。
草原の奥にそびえる一本の大木
日中は木陰で昼寝をしたり、何も考えずに風に吹かれたり。
特に、大木のすぐ近くに咲いている花が、リユウは好きだった。
白紫の花弁に、中心部から黒紫の繊維が広がる神秘的な一輪。
大木にもたれ、リユウは小さく呟く。
「……今夜は、ここで寝ようかな」
風が葉を揺らし、花の香りがふわりと漂う。
リユウは深い眠りへと落ちていった。
その頬を、一滴の涙が静かに伝うことに、彼は気づかなかった。
それは、彼の心の奥底に残った、別れのしずくだった。