表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/85

第一章 転生

…ーい  ぉーい おーい!


遠くからの声で目が覚めた。

(…いつのまにか寝てた?)


木にもたれ掛かり寝ていたらしい。

立とうとして左手をついた時にボキッと幹が折れる感触がした。


(折っちゃった…)


紫色の花が幹の根本から折れてしまった。

応急処置として、木の枝で添え木してみた。

(ここの草原には ちらほら花は咲いているけど、この花だけ綺麗で気に入ってる)


真ん中に黒紫色の繊維状があって、花びらは白い紫色をしている。


「一番綺麗な花だから治って欲しいな…」

「おーいリユウ、こんなとこにいたのかぁ!」

 

屈んでいた僕は、立って呼んでいる声の方に振り向く。


「もうすぐ夕方になるから帰ろーぜ!」


(ヒロ兄ちゃんだ)

180cmくらいの背丈で坊主、少しタレ目でメガネをかけている。髭は無精髭で目つきが少し悪い、でも良い人、僕の直感だけど。


「うん」


短く返事をして合流した。

帰路の途中、歩きながらの会話。


「今日はなんかしてたのか?」

「いつもの昼寝」

「あっこ好きだなぁ?」

「あと、起きたら手で花折っちゃったけど治る?」

「治るんじゃね?生命力たけーだろ、しらんけど」

「今日のめし何にするの?」

「よくぞ聞いた!釣りで魚を釣ったんだわ、それで釣り上げたら鳥に持ってかれそうになってだな?

石ぶん投げたら鳥は落ちてきたけど魚はどっかいっちまったよ!がははは」


そのへんの動物に盗られちゃったか。


「今日のメインは焼き鳥ってこと?いいね」

「そーいうこった!帰った頃にはできてるだろーよ」


(鳥の肉おいしーんだよな、さっぱりしてて)

僕は口元が少し緩んだ。


「おーいキサゲ、帰った、ぞ…?」


帰ったら、キサゲの左腕が噛み千切られ、横腹には噛みつかれた跡があった。


「なんでこうなった?」


ヒロはキサゲの近くで屈んで話を聞いていた。

僕は会話の様子を後ろで見ていた。


「ごふっ…持ってきた鳥の血の匂いを嗅いでか…来た……いつのまにか、背後にいたが…ドア閉め忘れただろ…」


「あーまじで?そーいや血垂らしながら持って帰ってきてたわ、がはは」


どう見ても重症、致死量の出血と怪我をしてるキサゲという青年はヒロの同期だ。

親に紹介されたお見合い相手にも興味持たず、引き篭もり生活をしていたらしい。

 たまにぺったんたんとか褐色肌がーとか変な話してるけど、良い人。


「どんくさいおまえが悪いな!相手はオオカミか?」


「たぶん、な…鳥投げたら…持っていったわ…ゲホッ」


「俺らの晩御飯がねぇ、そのオオカミとやらを狩るかぁ。お前は寝てろ、運んでやる」


「いてて…ヒールくれよ」


その冗談にヒロがニヤケながら言う。


「ほんじゃ10年間ありがとうよ、楽しかったぜ今まで。あと俺ら魔法使えんだろ」


僕ら3人、魔法のセンスはゼロだ。

魔力なんてあったもんじゃない。


「知ってた、…ふっ」


「全く…。俺は子供の頃くらったDVで右目ほとんど見えねぇし勝てるか分からんが」


ヒロ兄ちゃんは15歳の頃、親父(仮)に籍も入れずに家に住んでんじゃねーよと啖呵を切って、暴力で逆にねじ伏せられた。その時に右の視力をかなり失ったらしい。


その数日後は狩りから帰ったら家族皆殺しにあっていた。

親父のせいだなきっと…窃盗団にいたらしいし、ろくな人じゃなかったに違いない。


「リユウ、お前はここに…」


「僕も行くよ」


ヒロは残るよう提案しようしたが、リユウは即答した。


「いやあぶねーぞ?もうすぐ夜になる」


「大丈夫、貰ったナイフあるし」


腰から果物ナイフを取り出す。


「それ小動物狩る用の…まぁこれも狩りっちゃあ狩りか、がはは」


もしかしたら怪我するかも知れないけど。


「うん」


ヒロは斧を武器にしている。

自作で作った握れる程度の1mある木の棒に研いだ鉄の刃を紐で括り付けている。


「そんじゃ行くか」


リユウはなにか言いたげな感じでこっちを見ていた。

視線を感じ取ったキサゲは、右手で握りこぶしを作ってリユウに向ける。


もう喋る元気がないので仕方なく顔を少し振って、行けって合図をした。

リユウは差し出された拳にグータッチしてヒロと外出した。


いつも無表情なリユウの去り際に見えた少し悲しそうな顔を見て、キサゲは少し驚いていた。


(普段なに考えてるか分からないが、ちゃんと表情に出るんだな)


嬉しくもあり、そしてキサゲは二人の背中を見送ると…


「だからちゃんとドアを…」


そう思い残し、キサゲは目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ