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女神の正体と、隠された本当の運命

「イオリちゃん、聞こえますか?」


その声は——夢の中から響いた。


暗闇の中、目の前に現れたのは、あの女神だった。


「アルシア……!」


異世界召喚の時に現れ、俺にスキルを与えた張本人。神々しい微笑を浮かべる女神アルシアは、今も変わらず俺を見下ろしていた。


だが、俺はもうあの時の俺じゃない。


「……あんたが、全てのフラグの創造主なんだな?」


女神は笑みを深くした。


「さすがですね、結城イオリ。あなたの成長は、私の想定以上です」


 


====


 


《フラグ解析》のスキルが、進化したことで、俺は見えてしまったのだ。


——世界そのものに貼り付けられた、創造者の印。


フラグとは、アルシアがこの世界に施した運命の監視装置に他ならない。


誰がいつ死ぬか。誰が誰を好きになるか。何が破滅を招くか。


全ては——最初から決められていた。


そして俺のスキル《フラグ解析》《回避》は、その監視装置の「点検ツール」にすぎなかった。


「お前は……神じゃない。観察者だ」


女神は、あえて驚いた表情を見せる。


「正解です。私はこの世界を、観察し続ける存在。数千回、数万回のループを繰り返し、観測データを収集してきました」


——ループ?


俺は、胸が締めつけられるのを感じた。


「じゃあ、この世界は——」


「はい。すでに何度も滅びた世界です。あなたが来る以前にも、幾度もこの物語は繰り返されました」


——終わりのない、死と運命のループ。


その中心に、ヒロインたちの死があった。


リアが戦場で死に——ミナが世界を救って消え——ルナが裏切られ——コロが討たれる。


それが、この世界の既定ルート。


 


====


 


「じゃあ、俺は……そのループを壊すために選ばれた?」


「……いえ?」


女神は、心底愉快そうに笑った。


「あなたは、たまたま、私の実験に反応した例外個体です。つまり……失敗作の副産物にすぎません」


「……!」


「でも、面白いので観察を続けていたのですよ。あなたが、どこまで抗えるかを」


「……てめぇ……っ!」


怒りが、爆発しそうになる。


だが、女神はあくまで笑っていた。


「さあ、どうしますか? この世界は、フラグで構築された牢獄。あなたがいくらフラグを壊しても、根本が変わらなければ、いずれ全ては元に戻ります」


「なら、壊してやるさ」


「……え?」


「お前が貼り付けた、その《牢獄の設計図》ごと、全部な」


 


====


 


——その瞬間、夢が終わった。


目覚めた俺の前に、ミナティがいた。


「イオリちゃん、おはよう☆ とんでもないもの見ちゃったネ☆」


「……見てたのか?」


「うん。ぜーんぶ見てた。ループのことも、女神の本性も。ついでにイオリちゃんの黒歴史的セリフもね☆」


「うるせぇ……」


ミナティは、いつもの能天気な口調をやめ、真剣な顔をした。


「イオリちゃん。この世界を、本当に救うには、《世界そのものの書き換え》が必要なんだよ」


「世界を……書き換える?」


ミナティが差し出したのは、黒く染まったフラグの欠片。


「これは、さっき女神との対話で発生した《創造主フラグ》。今なら……この力を逆利用できる」


「つまり、女神のシステムを使って、逆に運命を再定義できるってことか……!」


「そゆこと!」


 


====


 


その夜、全員を集めて、俺は真実を語った。


——この世界がループしていること。


——ヒロインたちの死が、何度も繰り返されてきたこと。


——女神アルシアが、その外側で見下ろしていたこと。


リアは怒りで拳を震わせた。


ミナは祈るように目を閉じ、涙を浮かべた。


ルナは静かに、それでも真っ直ぐに俺を見つめた。


「……で、イオリ。あんたはどうするの?」


「決まってる。書き換える。全てのフラグを、システムごとぶっ壊して——新しい未来を選ぶ」


全員が頷いた。


たとえそれが、世界そのものを敵に回すことになっても。


「よーし! じゃあイオリちゃん、ついにラスボスの部屋に突撃だネ!」


「……誰がラスボスだよ。あの女神が『裏の創造神』だってのは間違いないが、まだ『本当の黒幕』がいる気がしてならない」


 


====


 


イオリたちは《創造の祭壇》と呼ばれる禁忌の地へ向かう。


そこに眠るフラグ創生の核——世界そのもののテンプレートを書き換える装置。


それを奪い、使いこなし、全ての因果を自由にするために。


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