(番外編)帰還した俺と、日常に潜む新たなフラグ
「──イオリ様!お弁当のおかず、今日はリアが作ったのですよ!」
「……聖女たる者、箸の持ち方は大切ですわよ、コロちゃん?」
「うるさいわね。アンタら、ちゃんと、平穏な日本の高校生活ってやつに適応する気あるの?」
教室の窓際、三年C組──結城イオリの席は、今日も騒がしかった。
異世界を救い、すべてのフラグを無効化したはずの彼は、何故かヒロイン全員を引き連れて現代に帰還していた。
しかも、全員がなぜか転校生として同じクラスに在籍しているというカオス。
「……これが、ラブコメは続いていくってやつか……」
イオリは額を押さえながら、机の上に積まれた、異世界仕込みの手作り弁当の数々を見つめていた。
「お兄ちゃん!今日はコロ、デザートにドラゴンフルーツ持ってきたよ!」
「それ、食っても大丈夫なやつか?」
「だいじょーぶ!爆発は……一回だけしかしなかった!」
「一回がアウトだっての……」
フラグは見えない。けれど――イオリには、分かっていた。
恋愛フラグは、もはや《視える》必要などないほど濃厚に、日常に根を張っているのだと。
「なあ女神、俺の人生、どこで間違えたんだろうな……」
そう呟いたときだった。
教室のドアが静かに開き、長い銀髪の美少女がひょっこりと顔を覗かせた。
「転校生でーす……えっと、アルシアです。イオリ様を……迎えに来ました♡」
「お前まで来たのかあああああああ!?」
平穏な学園生活など、もはや幻想でしかない。
けれど、どこか賑やかで、温かくて、愛おしい。
──これは、世界を救った少年とヒロインたちが紡ぐ、もう一つの日常の物語である。




