影狼と封印の門
「遺跡まではどれくらいかかる?」ヴィトルがアムラスに尋ねる。
「あと一時間もあれば着く。が気を抜くな。このあたりには普通じゃない魔物が徘徊している。」アムラスは周囲を警戒しながら答えた。
「普通じゃない魔物、か……」
ヴィトルは周囲の森に目を向ける。 背の高い木々が密集し、葉の隙間から差し込むわずかな光が、ゆらゆらと揺れる。 湿った土の匂いとどこからか臭い鉄臭さが鼻をかすめた。
その時――何かが音もなく、木々の間をすり抜ける気配があった。
「止まれ!」
アムラスの鋭い声が聞こえた。瞬間、ヴィトルは無意識に息を止めた。
音の主はすでにここを見ていた。
茂みの中、金色の瞳が妖しく光る。
ヴィトルの全身に冷たい汗が伝う。 それは普通の獣の目ではなかった。合理性と狡猾さを持った、狩る者の瞳――。
「出やがったな……シャドウウルフだ。」アムラスが静かに剣を抜ける。
ヴィトルの指がクロスボウの引き金にかかる。
シャドウウルフ――影に紛れ、魔力を吸収する狡猾な捕食者。 その
黒い体毛はまるで霧のように揺らめき、光の加減で形が歪んで見える。
「くそっ……こんな場所にBランクの魔物が出るなんて聞いてないぞ!」
「心配は後だ。こいつは素早い、気をつけろ!」
ヴィトルが息を飲んだ瞬間――
ズッ――!
シャドウウルフが動いた。
まるで風のように、一瞬で視界から消える。
「そらよ!」アムラスが叫ぶ。
ヴィトルは反射的にクロスボウを構え、茂みから負けた影に向かって金を引く。
シュッ――!
矢が放たれ、一直線に闇を裂いた。
しかし、シャドウウルフは軽く飛び跳ね、矢をかわす。
「速い……っ!」
ヴィトルが叫ぶ間もなく、ウルフは着地途中で床を蹴り、矢の進路を見たたかのようにジグザグに駆け抜けながら近づいてくる。
「くそっ!」
ヴィトルは驚いて二本の目の矢を装填しようとするが、シャドウウルフがそのスロットを狙って低い姿勢で飛びかかる!
「させるか!」
アムラスがすかそのまま踏み込み、長剣を横に繰り出す。シュンッ!
シャドウウルフは紙一重で斬撃をかわしつつも、足にかすり傷を負い、バランスを崩した。
「今だ!」
ヴィトルはクロスボウをしっかりと修正し、覚悟を決める。
ウルフが体勢を立て直してしまう瞬間――
「喰らえ!」
ヴィトルの放った矢が、ウルフの前足に命中!
シャドウウルフは苦悶の声を上げ、一瞬の動きを止める。
まあ、まだ終わらない。
強烈なウルフは最後の力を振り絞り、低い姿勢で飛びかかろうか。
ヴィトルの指が怖い。
間に合うか!?
その時――
「終わりだ!」
アムラスが地を蹴り、跳躍し剣を振り下ろす!
ズバァッ!
剣がシャドウウルフの首元に深く食い込む。
「……っ!」
シャドウウルフの瞳が揺らぎ、そのまま地面に崩壊。
しばらくの静寂の後、ヴィトルは勝ち肩の力で勝った。
「ふぅ……やれやれ、手強い奴だったな。」ヴィトルは額の汗を拭きながらアムラスを見た。
「えー、思ったよりやるじゃないか。」
アムラスは少しだけ笑みを浮かべる。
「とにかくな。お互い無事でよかった。」
お互いに無傷で乗り切ることができた。だがまだ、これらが序の口であることを二人はまだ知らないのである。