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ヨネばーちゃんと俺はよく、夏休みにスイカを食べた。

ヨネばーちゃんは、若い頃はとてつもない美人で、隣町からわざわざ見にくる人がいるほどで、とても有名な女の子だった。


ある朝、ヨネばーちゃんは、村に流れる源龍川の浅瀬で湯あみをしていた。村外れの人目につかない、岩陰にある、ひみつの場所だった。


森が山々を覆い尽くし、鹿が木立ちの向こう側に現れるかどうかという静かな場所だった。


まだ、日が昇る前の暗い空の下、若い頃の生娘だったころのばーちゃんは白い肢体を整えながら、昨日町外れの街道で出会った、若い流れ者の男のことがあたまに浮かんでいた。


男は道の側でしゃがみこみ、前髪がいくつか解けて、顔にかかっていて、その影からの、静かで鋭い目つきの視線をばーちゃんは感じていた。


「お前はいつか、俺と出会うことになる・・・」


微かな声が聞こえたと思うと、若い男の姿形が消えていた。最初からいなかったのではないかと思うこともあったが、やはり跡形もなく、姿が消えているとわかった。


その場には、若い男が先ほど履いていたと思われる、作りたての真新しい草鞋が2足、荒れた土の地面に転がっていた。


慌てて脱いだ様子もなく、忽然と消え去ったのである。


ーー。


ばーちゃんは意識を戻すと、ふと左横から強い視線を感じた。顔を向けずに、意識だけを左に集中させると、先ほどの若い男がすうっとそこに現れてひとり立っていた。


「あんた、どこからきたずらか?」


「あんたの名前はなんていうずらか?」


若い男は、スラリとした長身で、どこか影が薄く、存在があやふやなままであった。


男はすぐに返事はしなかったが


「くろえ‥」という声が微かに聞こえる気がした。






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