妖狐よ、騒霊の音色で舞え
冥界、あの世である。いつもは幽霊がそこらいっぱいに蔓延っているというのに、今だけは何もない。その何もない空間の最中、音楽が聞こえてくる。その音楽に合わせて、ひとりの亡霊が舞う。
「〜♪」
「〜♪」
遠くから、龍と虎が見守っている。
「・・・・はい、お仕舞い」
「素敵な舞でしたよ、暁様」
「姉ちゃん達の演奏とも息ぴったりだったぜ」
「暁さんと私達は最早あうんのこきゅーだよね!舞に導かれて演奏してるようでもあって…演奏に篭った想いが舞に現れてるようでもある」
「うんうん、舞を見てると勝手に体が動いちゃうんだ。抑揚の付け方も魅力的〜♪」
「・・・・・」
すると突然、騒霊の一人が倒れかける。
「わっ、姉さん大丈夫?」
「ああ…少しふらついただけ、疲れただけ。ふふ、おかしいよね。暁さんの方が疲れてるはずなのに」
「演奏も体力使うんだろ?そんなこたないだろ、謙遜すんなって」
「…ふぅ。それで…暁さんが言っていたものはできた?」
「ああカメラか?言われた通りのボタン押したぜ。ヒビ入るくらい入念に押したから撮れてるだろ」
「びゅーてぃふぉーな舞が撮れてるはずだね!」
「・・・・」
騒霊の瞼が閉じかけそうになるが、必死に抗う。それを見た亡霊は縁側に座り…
「ちょっとこっちいらっしゃいな」
「はぁ…?」
言われるがまま亡霊の隣に座る。すると
「!?」
肩に優しい圧力がかかったかと思えば、騒霊の頭は亡霊の膝にふわりと乗っていた。
「疲れたらちゃんと休むのよ。貴方が頑張ってることは私よくわかってるから」
優しく手で撫でる、それはまさに母親。
「それに、貴方になにかあったら『お父さん』に顔向けできないじゃない」
「・・・」
「いい子いい子。貴方はとてもいい子ね」
「…あの、もう平気です」
「いいのよ、好きなだけ私の膝の上にいても。これ一度やってみたかったし。…それに、こんな遅くに『舞いたい』とわがまま言った私の責任だしね」
「いやそんなことないです…!」
「ありのままの私をカメラで撮っておきたかったのよ」
「ありの…まま?」
「カメラはその一瞬を切り取り記録する。それは真っ当な真実で嘘偽りは一切ない。だから残しておきたい、私や私の周りのもの…特別でなくとも大切なもの」
「・・・わざわざ形にする必要もないじゃないですか。私はみんなのそばから消えたりしませんよ」
「そう……そうよね」
「・・・」
亡霊が頭を撫でる、しばらくすると騒霊は静かに眠りについた。
「あらら、眠っちゃったわね。せっかくだからみんな泊まっていきなさいな」
「わーい!お泊まり会だ!」
「障子破って良い?」
「ダメです」




