9.測定結果
読んでいただき、ありがとうございます!
三話続けて投稿致します。
「なっ。なんだ……と?」
「あの森の大猪ですよね? 急に襲って来たんですっ! もう、怖くて……。でもダンとユウを守らなきゃと思って、落ちてた木の棒で脳震盪させようか……と」
あれ?
見る見るうちにライアンの顔が険しくなって行く。眉間のシワは、それ以上深くならないほど寄っている。拳でこめかみをグリグリしてるし。
もしかして私、何か変なこと言っちゃったかな?
「あれは、お前の仕業だったのかっ。因みに、木の棒では猪は切れん!」
さすが話が分かってらっしゃる!
「はい! そうなんですよっ。木で思い切り脳天に打ち込もうとしたら、木の棒が光って刀になったんです! あれには本当にビックリしましたよ」
「脳震盪狙って、打ち込んだと……?」
私は頷く。
「そしたら、真っ二つになって……。私も生まれて初めての経験で……あれ? お兄様はあの大猪のことを知っていたのですか?」
「……まったく! あれだけ大きな物が倒されていたのに、気付かない訳がない」
明らかに呆れ顔だ。
ああ、確かに目の前にあったな。二つになった猪が……。
はあ、とライアンは盛大に溜め息を吐く。
「では、アンジェの魔力を測ろう。それで解るはずだ」
これで、本当に原因解明するのだろうか?
半信半疑で魔石にそっと手を触れる。
―――――!?
測定の針は完全に振り切って、その先には動かない。
「……まさかっ!?」
「ええええええっ!? もしかして、魔術具壊れちゃったんでしょうか? もし、こんな高価そうな道具を壊したら私は……」
半泣きになる。
「お兄様、私どうしたら良いのでしょう……」
弁償という二文字が頭に浮かぶが、私にそんなお金は無い。
「壊れた訳ではないから、大丈夫だ。だからっ、泣くな!」
慰めようとしたのか、優しく頭を撫でてくれた。うぅ、本当のお兄ちゃんみたいだ。余計に泣けてくる。
それから暫く黙って考え込むライアン。
顔を上げると真剣な表情で、今日やった測定については絶対に他言してはならないと言った。全て、ライアンに任せるようにと。
勿論、ダンとユウについてもだ。魔術師団に借りて来た手前、報告する魔力量については詐称するらしい。
私の魔力は真ん中位の数値、つまり王族くらいだと。
そもそも私を養女にしたのは、魔力量が多い娘が男爵家に居ると、魔術師団の人間が占ったからだと言う。
詳しくは教えてもらえなかったが、私が国にとって大きな存在になるそうだ。
それについては意味不明だけど。
真偽が定かでは無かった為、王家や公爵家ではなく、侯爵家で養子縁組をする事になったのだ。
そして、私を見定める為に、聖騎士団師団長であるライアンが直接やって来たのだと言う。それで、あの騒ぎがあり私を気に入ってくれたらしい。……解せない。
「剣を教えるのは構わないが、明日は王宮に魔術具を返しに行く。その後、聖騎士団の訓練風景を見てみるか?勿論、アンジェはまだ王宮内は入れないけどな」
「行きますっ。行かせて下さいっ!!」
嬉しくて舞い上がる。ライアンは生暖かい視線をよこした。
「ダンとユウの能力は、他の人間に知られてはならない。絶対にだ。アンジェの部屋で大人しくしている様に」
「「はいっ! 主人のお兄様」」
二人は元気よく返事した。