46.魔王城
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半信半疑で、アルラウネの指した方向へ進み出す。
――ただ。
面白い魔物をお持ち帰り出来なくなったポール。
アルラウネを諦めるかわりにと、ダンとユウはポールの馬に乗ることになってしまった。相当、ダンたちに興味がわいている様だ。
ポールが作った魔力でできた籠に、二匹はゆったり乗って、どこから出して来たのか……おやつまで貰っている。
私はすっかり手持ち無沙汰。まぁ、ダンとユウが快適そうだから良いけどね。
――だんだん先に進むにつれ、霧が酷くなってきた。
いや、霧にしては重苦しい。悪い空気……瘴気が充満しているのかもしれない。
耳を澄ませば――。
悍ましい呻き声が彼方此方から聞こえてくる。
これが、ルイの言っていたアンデットの声?
鳥肌が立ち、身体が強張ってくる。すると……。
ライアンは手綱を持ったまま、後ろから私をぎゅっと抱きしめると、耳にフッと息をかけた。
――――ひゃあぁぁぁぁっ!?
ビックリし過ぎて、頭が真っ白になる。
二匹をだっこしていたら、きっと落としてしまったに違いない。
状況を理解すると、恥ずかしさで今度は全身が熱くなった。しかもっ、ライアンの顔はまだ私の耳元のすぐ近くにある。
何か言おうにも、パクパク口は動くが上手く言葉が出てこない。
「お、お兄様……な、何をっ」
やっと言えた。
ライアンは腕を緩め姿勢を戻すと、クスッと笑った。
「お前は緊張し過ぎだ。大丈夫だ、肩の力を抜け」
「あっ……」
今ので不安で強張った身体が解れた。
ライアンなりの気遣いには感謝だが、このやり方は違う意味でドキドキするので本当にやめてほしい。
たぶん今、私の顔は真っ赤になっているだろう。
呻き声がより近付いて来ると、前を走るルイが馬を止めた。それに続くライアンもポールも馬を止める。
ルイは馬からヒョイっと降りた。城までは、まだだいぶ距離があるはずなのに。
「ルイ? どうしたの?」
「うん、これから先は大量のアンデットが出て来る筈だからね。一掃して時短しようかな、と」
ルイは片手に魔力を集め聖剣を取り出した。
輝く聖剣を高く掲げて、更に魔力を加えると、思い切り振り下ろす!
――それは刹那の出来事だった。
太く大きな閃光は、真っ直ぐ魔王城の方へ伸びて行く。そこに居たはずのアンデット諸共、瘴気を消し去った。
閃光が通った場所は木々も無くなり、道が出来上がっている。
「「……凄いな」」
唖然としたライアンとポールは、同時に呟く。
やっぱり、聖剣すごいっ! 超カッコいい!!
私の刀でも同じことが出来ないかしら……? ううっ、試したいっ!
私が興奮している間に、ルイはまた馬に跨がる。
「では、先に進みましょう」
何事も無かったかの様に、出来たてほやほやの道を進むルイに続く。
もう暫く行くと、アルラウネの言った通り、魔王城が見えてきた。
魔王城のある場所は少し小高くなっていて、分厚く高い城壁に囲まれていた。その周りには水堀まであり、この正面以外からは簡単には入れないようになっている。
「アルラウネに感謝だね。他の道からだったら、正面に辿り着く迄に、かなり時間がかかったかも」
ルイの言う通りだった。
城の正面にだけは、橋も下ろしてあり簡単に入れるみたいだ。
ふと、アルラウネの予言を思い出して身震いした。
あれも、当たるのかしら? ヤバイ奴って……。
私たち一行は、警戒しつつも橋を渡り城の入り口へと向かう。
城の中へ入ろうとすると、こちらにやって来る者がいた。
全身を鎧で包み、首から上が無い……よくよく見ると、首を小脇に抱えていた。
――――ひぇッ!!
キモいっ。これもアンデット!?
『我は名はデュラハン。これより先は通さん!』
抱えられた頭部がデュラハンと名乗り、鎧を着た体は黒い魔力の剣を抜く。
――来るっ!!
思わず私は馬から飛び降りた。
刀をペンダントから取り出し、さっきルイがやった様に刀に光の魔力を纏わす。
デュラハンの剣を躱し、私の刀が斬り込むと……一瞬でデュラハンは消滅した。
「あれ?」
あまりに呆気なくて、私はポカンとした。
「「はあぁぁ……」」
と背後から溜め息が聞こえてくる。
「姉さんてさ、本当に規格外だよね。なんか、聖剣なんて無くても、姉さんなら魔王倒しちゃいそうだよ……」
いや、それは勇者の伊織の仕事だからっ。
そこはちゃんと、我慢しますっ!




