43.国王の宣言
「――我が国を支えし、皆の者。これから話す事をよく聞いてほしい。この国に……魔王復活の兆候が現れた」
……ざわっ……。
国王の話が本題に入り、その場にいた貴族達は不安そうに騒ついた。
今日のこの場にいる貴族達は、社交界デビューする子息・息女とその親。そして国を支えている領地を持った、伯爵以上の地位の者ばかりだった。
騒つきはしても、国王の言葉を遮ることなど誰も出来ないので、ただジッと次の言葉を待つ。
国王は順を追って話していった。
占星術師サイモンによって、魔王の復活が明らかになったこと。東の樹海の魔物達の異変。その他に生息している魔物の凶暴化。それから、魔王を倒せる者の存在について。
固唾を呑み、話を聞く貴族達。
「――この国に、魔王を倒せる勇者が現れた!」
……ザワッ! 会場が、一気に騒つき出す。
「勇者ルイ、我が前へ!」
「はっ!」
貴族達が目を見張る中、ルイは颯爽と国王の前に出て膝をつく。全員の視線がルイに集まった。
「聖剣を此処へ」
格調高い占星術師の正装をしたサイモンが、聖剣を運んで来る。
そして、国王の前に用意された、凝った装飾の台へ丁寧に置いた。
「この聖剣は、王家に代々伝わる魔王を倒せる聖剣だ。扱える者は選ばれし勇者だけである! 真の勇者かどうかは、剣を持てばわかる。ルイ、聖剣を持つがよい」
立ち上がったルイが聖剣を持ち上げた。
その刹那、聖剣はエメラルドグリーンの閃光を放ち、会場を明るく照らす。
ゴクリと唾を呑み見守っていた人々は、ルイが勇者であることを確信した。
「そして、この勇者ルイを見出した、聖女を紹介しよう。アンジェ・ダグラス、前へ」
私は呼ばれると、真っ直ぐに壇上へと向かう。ルイの横に立つと、会場は更に熱を帯びる。
さっきのダンスの効果か、貴族達は神々しい者を見るように私達に注目した。
いつの間にか、魔術師団師団長の制服に着替えたポールが、立派なクリスタルの器を持ってやって来た。
中には、私が作ったオーロラに輝く最高級ポーションが入っている。
「見よ、この素晴らしきポーションを。聖女アンジェがこの国を守る者達の為に、ただの水をポーションに変えたのだ」
――会場から歓声が上がった。
聖騎士団師団長の制服を着たライアンも呼ばれ、
「勇者と聖女と共に、我が国が誇る聖騎士団が魔王討伐に向かう」と、国王は話を締めくくった。
◇
だぁ――――、疲れたぁ! 心の中で叫ぶ。
無事に、宴と聖剣授与式的なパフォーマンスが終わり、謁見の間では、私とルイ、ライアンにポールが待たされていた。
暫くすると、サイモンを連れて国王がやって来た。
「ルイ、アンジェ、今日は良くやってくれた。これで皆が一つになり、魔王復活による災いに迅速に対応できるだろう」
「陛下、私のお願いした通りにしていただき、ありがとうございました」とルイ。
「うむ。まさか本当にあの聖剣が勇者を認める物だったとは……。今まで、誰が触れてもあの様にはならなかったのでな」
ルイは神から、聖剣の機能的なことも聞いていたのだろうか?
「ところで、聖剣には鞘は無かったのだが……」
「ご心配には及びません」
ルイが聖剣を手に取り、閃光を放ったかと思ったら――突如、聖剣は消えた。
「――――なっ!? なんと!?」
「聖剣は私の中に取り込みました」
その場にいた全員が口を開けポカンとした。
ルイは何も無い手を出して魔力を放つと、またその手には聖剣が現れる。
何よそれ――!!?
便利すぎじゃない! その剣……私も欲しいっ!
驚きから正気に戻った国王がルイに尋ねる。
「ところで、ルイよ。魔王討伐に、ジョセフも一緒に行きたいと言っているのだが………」
「「「却下です!!」」」
全員一致の即答だった。




