22.帰還
振り返った私に向かって、ライアンは駆け寄った。
そして、そのまま腕を掴まれ引き寄せられる。
ライアンは直ぐには言葉を発せず、ただ強く私を抱きしめた。聞こえるのはライアンの胸の音と息遣い。
何が起こっているのか理解できない――!
「……アンジェ、無事でよかった」
ようやくライアンが話し出した。
「お、お兄様っ!? いつお戻りに?」
「今朝だ……。聖騎士団本部に戻って、オスカーからお前が全く姿を見せなくなったと聞いて――心臓が止まるかと思った……」
「本当だよ、姉さん。これ以上心配させないでよ……」
――あれ?
ルイ、私のこと姉さんて呼んじゃってるよ!?
抱きしめられながら、視線だけルイに移す。
「い、今……姉さんて?」
「……全て……聞いた」
ルイが答える前に、耳元でライアンが言った。
ヒェェ――ッ!! お兄様、耳に息がかかってますよっ!!
身悶えするが、全く離してもらえない。
む……無理、心臓が持ちませんっ!
パニック状態で抱きしめられている私に、ジルベルトが助け船を出してくれた。
「おーい。そのくらいでアンジェを離してやれ、若造」
若いってのは良いもんだ、と笑いながら。
やっとライアンの手が緩められ、ぷはぁっ……と息をした。
だめ、ドキドキが止まらないっ!
ライアン自身も落ち着いたのか、辺りを見渡すとこの場所の有様に気付いた。山岳に広がる、不自然な平地。
「……これは、アンジェがやったのか?」
何て言おうか迷っていると、代わりにジルベルトが答えた。
「ルイとアンジェの二人の仕業さ。儂の訓練の賜物だっ」
ライアンはハッとし、姿勢を正す。
「貴殿が聖騎士団創設者の……ジルベルト閣下ですね!」
「閣下はやめてくれ、今はただの爺だ」
色々な事が進展していて、ついていけない。
ライアンは、どこまで聞いているのだろうか? ここに来たということは、ルイの家から転移した筈だし。
ちんぷんかんぷんな私を見かねたのか、ルイが口を開いた。
「巴姉さん、今回の調査で色々あったんだ。それで、ライアン師団長には協力してもらえることになって、全てを話したんだよ。転生の事も含めてね」
「……そうだったの」
「それで、ようやく調査を終えて帰ったら、姉さん行方不明じゃないかっ! オスカー副師団長も、心配していたよ。ライアン師団長なんて、本当に大変だったんだからっ!」
ライアンは、オスカーから私のことを聞くと、心配で調査報告もそこそこに、侯爵邸へ大急ぎで帰ったそうだ。執事やメイドに事情を聞いて、リアムを問い質したらしい。
そして、ルイの祖父との約束をアンジェが破るはずが無いと、また本部へ戻り、ルイに頼み込んでここまで一緒に来たそうだ。
「僕が見てくるからって言っても、全然聞いてくれないし……」
ルイはぶつぶつ文句を言う。
申し訳なさで肩身が狭くなる。
「心配かけて、本当にごめんなさい!」
「いや、アンジェは悪くない。リアムがそんは馬鹿なまねをするとは……俺がもっと気をつけておくべきだった。すまなかった……」
「お兄様は、何も悪くありませんっ」
慌てて否定すると、ライアンは目を細め、そっと私の頬に触れる。
「侯爵家に帰ろう」
「で、でもっ! 私は侯爵家に迷惑をかけました」
もう帰れないと言う私に、ルイが駄目だと言う。
「姉さんには、侯爵家に帰って十五歳の社交界デビューを果たしてほしいんだ。その時に全てが動くから」
「……へ?」
残念ながら、私にはルイの言っていることが全く理解ができない。
「簡単に説明するとね、社交界デビューしたら姉さんは王太子に見初められてほしいんだ」
「……はあ!?」
余計に意味がわからないんだけどっ!
ライアンに目を向けると、困ったような表情で頷いた。
――お兄様っ! 以前、私に告りませんでしたか?
お読みいただき、ありがとうございます!
人物視点がごちゃごちゃだったため、改稿でアンジェの視点に統一しました。




