14.ユウの散歩
読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
二話続けて投稿いたします。
あの日、ライアンの部屋で起こったこと――。考えるだけでドキドキする。
恥ずかしくて、口に出すことも、ダンとユウに相談することも出来なかった。
幸い(?)ライアンは、私に対して特に変化もなく、あれは夢だったのかと思ってしまうくらいの態度で接してくる。
結局のところ、今までと変わりない日々を過ごした。
とはいえ、剣はしっかり教えてもらえたけどね!
剣を習う場所は、人気の少ない侯爵家所有の森。
ライアンの休日に、こっそり二人で出かけて行っては教えてもらう。やはり、令嬢が剣を振るうのは見られてはまずいらしい。
最初は慣れない動作に戸惑ったが、ライアンの教え方が上手く、メキメキと上達できている気がする。
防具が無いので、もちろん当たれば相当な痛みが。
だから、剣でかわして防御することを徹底し習った。本物の剣なら痛いどころではなく、死が待っているので必死にもなる。
自分がやりたかったことだから、慣れるのにもそんなに時間はかからなかった。
「まったく……お前の運動能力は凄いな! 筋も良いぞ! 面白いっ、俺から一本取れるようになったら、本物の剣をプレゼントしてやろう」
「嬉しい! お兄様、約束ですよっ!」
などと様々な会話をしつつ、剣を交えるのが楽しみになっていった。
傍目から見たら、とても喋れる様な動きではない。毎回一緒について来ているダンとユウは顔を見合わせた。
((あの二人の身体能力は、化け物だよねっ))
◇
――そんな日々が続いていた、ある日。
『……ねえ、主人』
「ユウ、どうかした?」
『私、ちょっと外へお散歩に行ってもいいかしら?』
「外? いつも森へ一緒に行っているのに?」
首を傾げ、不思議に思い聞き返す。
『森じゃなくて、伊織の様子を見に行きたいの』
「伊織の? ……でも、危ないんじゃない?」
『主人もダンも気になるでしょ? 私なら、塀も木も登れるし。猫の私が聖騎士団の訓練場を通ったとしても自然よね?』
ユウは伊織にも懐いていた。ひと目見たいと思う気持ちは良くわかる。
「じゃあ、決して危ない事はしないでね! あと、お兄様にはくれぐれも見つからないようにしてねっ」
ライアンは、二匹に魔力がある事を知っている。バレたらきっと怪しむだろう。ダンとユウに危険が迫るのは、絶対に嫌だ。
『任せて!』と、ユウは窓から近場の木に飛び降りて、軽快に走っていった。
◆
――かなりの距離を走り、ユウの視界にやっと王宮が見えてきた。
本来、この世界では騎士は王ではなく、領主の為に働くのだ。
ただし例外もある。近衛騎士は王族を守り、聖騎士団に限っては、王の命令があれば軍としても機能する。その為、王宮の近くに訓練場が置かれていた。
聖騎士団は能力さえ有れば、高位爵から騎士まで……いや、平民であっても十五歳以上は入れるのだ。
(……そろそろ訓練場の近くだわ)
ユウは、人目に付かないように上手く障害物を躱しながら、サッと訓練場の中の木の上に登った。
(随分とたくさんの人が居る)
今日は平日なので、任務に当たっていない全ての騎士団員が訓練をしている。各班ごとに訓練内容は違うみたいだ。ユウは、木の上から青い髪の少年を探す。
そして、アンジェが言っていた、師団長室の窓にも注意を払う。
(伊織……どこかしら?)
この世界に来て、人の姿に変身出来る様になった頃から……以前よりも視覚が発達したみたいだった。ダンの方ら嗅覚が凄くなっている。
だから、ユウはかなり遠くでも良く見えていた。
(青い髪……見つけた! あれが今の伊織……元気そうで良かった)
木から飛び降りると、ルイ姿の伊織が見やすい所まで行き、草陰に隠れ訓練が終わるのをひたすら待った。
勿論、お昼寝もしっかりして体力温存もばっちりと。
――ガヤガヤと周りが騒がしくなり、耳を動かしたユウは目を開く。
団員達は片付けをしているのか、移動し始めた。
殆どの騎士団員は、寮らしき建物に向かっている様だった。
ただ、伊織はそっちには向かわない。だれかと親しげに話している。
ユウは会話に耳を傾けた。
「ルイも十五才になれば、寮に入れるのになぁ。未成年は通いだから大変だな」
「ジャン、僕は通いの方がいいんだよ。家で爺ちゃん待ってるからさ」
「そっか、じゃあ気をつけて帰れよ。また明日!」
「またね」
(へぇ。伊織は誰かと暮らしているのね)
訓練場を後にした伊織に、ユウは気配を消してついて行った。
暫く歩き、下町のような所に着いた。人気の無い路地に入った伊織を慌てて追う。
すると曲がった路地の真ん中で、こちらを向いた青い髪の少年ルイが、ユウを待っていた。
「ユウ、会いに来てくれたんだね!」
(………!)
――伊織の懐かしい気配を漂わせたルイが、嬉しそうに微笑んでいた。




