☆最終話 大好き☆理沙side
プルルル…
携帯の着信音が鳴った。
誰だろ?と思って携帯を開いてみる。
ディスプレイにうつったのは達也の名前だった。
…なんだろう??
さっきのことで少し照れながらも達也からの電話にでる。
「もしもし?達也?」
『………』
返事がない。
達也からかけてきたのに…
どうしたの…??
なぜか胸に不安がよぎる。
やっと、電話の向こうで、達也の声がした。
『…理沙、ちょっと外でてきてくれる??』
感情のこもっていない、無機質な声だった。
「うん…いいけど…」
様子のおかしい達也が心配になって、電話を切ると、寝まき姿のまま外にでた。
「達也??」
外にでると、家の前に達也が立っていた。
うつむいていて、表情は見えない。
「理沙…」
つぶやくように私の名前を呼ぶと、いきなり私を抱きしめた。
「!?」
びっくりして、抵抗してみるけど、達也の力は強くてはらいのけられない。
達也は私を押さえつけると、乱暴に私の唇にかみついた。
「んんっ!?」
達也は何度も角度を変えて、私にかみつくようにキスしてくる。
「やめ…」
息が苦しくなって、しめつけられる体が痛くて、涙がにじんだ。
怖い…
怖い…
どんどん達也に対する恐怖心が大きくなっていく。
たまらなくなって、なんとか達也の手をふりほどくと思いっきりつきとばした。
達也はすんなりとつきとばされて、しりもちをつく。
私の目からは涙がぽろぽろとあふれでていた。
「達也…どうしちゃったの…??」
「………」
達也は何も言わない。
私の方を見ようともせずにうつむいていた。
なんであんなことするの…??
達也、さっきはちゃんと私に許可とってくれたじゃない。
こんなことされたって…
怖いだけだよ…
こんなの、達也じゃないでしょ??
「…ごめん。」
やっと達也が、うつむいたまま口をひらいた。
「ごめんじゃないよ!なんであんなことしたの!?」
思わず少し強めの口調で言ってしまう。
達也は少し間をおくと、しぼりだすように言った。
「理沙…オレ、オレなぁ…」
やっと顔をあげた達也の顔は、涙でぬれていた。
「大阪に戻ることになってん…」
「…えっ??」
自分の耳を疑った。
今、達也は何って言ったの…??
たしか…
『大阪に戻る』って…
「ウソ…うそでしょ??」
冗談だと思った。
また達也が笑顔で私にでこピンするんじゃないか、なんて思った。
けど、達也は一向に笑顔を見せない。
涙を隠すようにうつむく反応は、それが本当であることを示していた。
「オレ、理沙と離れたくない…」
達也が声をふるわせながら言う。
私だって…
私だって達也と離れたくないよ…
達也みたいに思いっきりとりみだしたくなった。
思いっきり泣きたかった。
けど、こんな達也をほっといて、私がとりみだすわけにはいかない。
いつもどこか、余裕がある達也。
こんなに取り乱すところを見るのは初めてだった。
私が…
しっかりしなくちゃ…
無意識に思って、震える達也を胸におさめる。
達也は、子供のように私にしがみついてきた。
「理沙…オレ、戻りたくないんや…おまえと離れたくないんや…!!」
「…うん。私も、同じだよ…」
私は達也が落ち着くまで、達也のそばにいた。
しばらくすると達也は、やはりうつむいたまま立ち上がって「準備あるから。」と一言言い残して帰っていった。
達也が帰ったのを確認すると、ふらふらと家に戻る。
自分の部屋に入るとドサッとベッドに倒れこんだ。
達也が大阪に戻っちゃう…
それはつまり…
達也と簡単には会えなくなっちゃう…
こらえていた涙があふれでる。
「嫌…いや…いやだよ…達也ぁ…」
達也と離れ離れになっちゃうなんて嫌…
達也と会えなくなっちゃうなんて嫌…
「いかないで…達也ぁ!!」
私は一晩中泣きあかすと、疲れて、眠り込んでしまった。
「………」
明るい日差しが入りこんできて、眩しくて目を覚ます。
「…もぅ、朝??」
どうして、朝がきちゃったんだろう…??
今日、達也はいなくなっちゃうんだ。
そういえば…
達也は何時に出発するんだろう??
というか、今何時??
寝ぼけながら、携帯を開く。
すると、一通のメールがきていた。
差出人はもちろん達也。
【昨日はごめん。今日、11時の電車に乗るから、できれば来て欲しい。】
達也らしくない、要件だけを告げたメールだった。
11時って…
時計をチェックする。
時刻は10時半。
あと、30分しかないよ!?
私は飛び起きると、急いで着替えて駅へと走った。
私の足なら、早くて30分。
遅い。
お願い…
お願いだから間に合って!!
急いで駅にかけこんだ。
はぁはぁ、と息をきらしてホームに入ったとき、
ちょうど、隣を電車が通りすぎた。
びっくりして、その場に崩れおちる。
遅かった…
達也はもぅ、いっちゃったんだ…
「達也ぁ…なんでいっちゃったのよぉ…」
ショックで思いっきり泣いた。
私、最悪だ。
寝過ごして、達也とのお別れに間に合わなかったんだ。
もぅ、達也と会えない。
大阪に、すっごい遠いところにいっちゃったんだ…
そう思ってあきらめかけたとき、
「何そんなところで座りこんでるんや??」
少し、笑みのはいった声。
ありえないはずの、声。
ゆっくりと顔をあげた。
そこには笑って私を見降ろす達也の姿。
「た、達也??どうして…??」
もしかして、さっきの電車じゃなかったの??
時計を見て見た。
時刻は11時を過ぎている。
…やっぱり、あの電車だったんだ。
なのに、どうして達也はここに残っているの…??
達也は私の頭の中を読み取ったように笑うと、座り込んでいる私の手を引いて立たせながら言った。
「オカンとオトンに頼みこんで、オレだけもぅ一本後の電車で行くことになったんや。…その、おまえがくるって信じてたから。」
照れ隠しするように頭をかく。
今日が大阪に戻る日だっていうのに、達也は昨日のように取りみだしてはいない。
むしろ、いつものようにどこか余裕があるように見えた。
「…うん。そんなの、来るに決まってんじゃん…」
達也はにこっと笑って私の頭をなでた。
「知ってた♪」
私達はとりあえず隅の方のベンチに座った。
私の右手は、達也の左手に包まれている。
「ねぇ、次の電車っていつくるの??」
「う〜ん…多分12時ぐらいやったと思うけど…」
達也が時計を見たのを見て、私も時計を見た。
今は11時25分。
達也といられる、残り時間はたったの35分。
短いな…
もっと、もっと一緒にいたいのに。
こんなことなら、昨日達也を引きとめてでも一晩中一緒にいればよかった…
「…昨日は、めっちゃ取り乱してごめんな?」
「へっ??あっ!いいよ、いいよ!大丈夫だから。」
達也はもうしわけなさそうに私を見た。
「いや、ホンマに…ごめん。あんときはオレも何がなんだか分からんようになって…ホンマにごめんやで?」
達也の言葉で昨日の夜のことを思い出す。
無理やりに私にキスを迫ってきた達也。
多分、あのときは頭が真っ白になってたんだろうな…
ぼんやりとそう思った。
「もぅ、大丈夫やから。昨日は…ありがとうな。」
「うん…」
私、昨日はすっごく冷静に達也を慰めることができた。
けど、それは昨日、達也がすっごく取り乱してたから。
私がしっかりしなくちゃって思ったんだ。
でも、今日の達也はすっごく冷静で…
こんなんじゃ、私、絶対に自分をおさえられなくなっちゃう…
それから私達は少し、たわいのない話をした。
そして、話しているうちに、達也が乗る電車がきてしまった。
「…じゃぁ、理沙。お別れや。」
達也がすっと立ち上がる。
そして電車に乗り込もうとした。
私はその腕を必至になって引き留める。
「嫌!いっちゃだめ!」
達也は困ったような笑顔で私を見た。
「理沙…」
達也が私の名前を呼ぶ。
…??
あれ?
この場面…
どこかで見たような…
突然、頭の中にある光景が浮かんだ。
それは、ずっと、繰り返し見てきた夢。
達也に恋してから、見なくなった夢。
私は、達也のことが好きになるまで、ずっとあの夢の中の【彼】が大好きだった。
でも、【彼】の正体は分からなかったまま。
けど今、【彼】の正体がわかったよ。
あなたは…
達也だったんだね。
夢の中ではずっと呼べないままだったけど…
今は、あなたの名前を呼べるよ。
思う存分、あなたを引きとめることができる。
「やだよ。行かないで?達也…」
あふれだす私の涙をぬぐいながら、さみしそうにほほ笑む達也。
夢と、ほぼ同じ。…違うのは、私が泣いているというところだけ。
達也は、何も言わずに私に口付けた。
昨日みたいな乱暴なキスじゃなくて、いたわるようなやさしいキス。
花火大会の時みたいな甘い甘い幸せなキスじゃなくて、涙で少ししょっぱい悲しいキス。
達也は離れるのを惜しむようにギリギリまで唇を離さなかった。
けど、電車がもうすぐ出発しそうなのに気がついてゆっくりと唇を離した。
そして最後に、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「そんなに落ち込まんでも…オレが死ぬわけやないんやから…」
達也は一瞬間をあけると、さびしそうな雰囲気なんてまったくない、輝く笑顔で言った。
「きっとまた会える。…いや、絶対に会える。絶対にまた、ここに戻ってくるから。」
電車の扉が閉まる音が鳴り響いて、達也は急いで電車に駆け込んだ。
ゆっくりと扉が閉まる。
私は慌てて声を張り上げた。
「絶対、絶対だよ!!会いにこないと許さないんだから!!」
扉の向こうで達也が、いつもの笑顔で親指を立てた。
ゆっくりと電車が動き出す。
私は涙をふきとって、笑って達也を送り出そうと思った。
でも、ムリだった。
涙は止まらなくて、私は夢中になって電車を追いかけた。
「達也!達也ぁー!!」
達也は驚いた表情で私を見ている。
そのうち、ホームの端まできて、追いかけられなくなった。
飛び越えてでも、追いかけようと思った。
けど、そうしているうちにも電車はいってしまう。
私は、電車が見えなくなるまで、ずっとずっと眺めていた。
そっと、指先で唇をなでる。
そこにはまだ、達也のぬくもりが残っていて、やっぱり涙があふれでる。
それでも、私は泣きながら笑顔をつくった。
大丈夫。
達也はきっと戻ってくる。
だって、達也が言ったんだ。
本当に決まってる。
それまで…
そのときまで…
私はずっと達也のことが好きだから…
達也のことを待ってるから…
絶対に、絶対に会いにきてよ?
私はずっとずっと…
達也のことが大好きなんだから。
『大好きです☆』完結しました!
といってもまだ達也sideが残っているのですが…
それにしても達也の行動が意味わかりません…
それと、駅員の人、理沙達のために電車出発させるの待っててくれてたんですかね?




