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4話 入学式です!①

高校時代って思い出せませんね……

 4月、とうとう高校の入学式が行われる日になりました。

 杉野井高校に行くのはこれで2回目です。

 1回目は冬の合格発表の日でした。

 初めてブレザーの制服を着た私は杉野井高校の校門の前へ両親と来ていました。

 両親は保護者専用の待機所があるらしく、校門から先は別行動です。

 初めて見た杉野井高校は冬であったためか校門から生徒玄関へと続く道の左右にある桜の木に緑はなく、どこか寂し気な雰囲気があったことを良く覚えています。

 ですが、今は桜が一面に咲いており、風に乗って舞う花弁は今この時を待ちわびたかのように踊っています。

 周りを歩く新入生達はその歓迎に目を輝かせ、これから自分たちの未来に待ち受けている華々しい高校生活を想像しとても楽しそうにしています。

 その中、下を俯き歩いている私は周りからも浮いており、少し距離をあけられています。まるで見えないバリアーがあるかのようです。

 これからこの田舎で高校生活を送ることを考えると気分が沈んで仕方ないのです。

 なぜこの人たちはそんなに楽しそうなのでしょうか?

 こんなに生徒玄関に行くのが億劫で仕方ないのは久しぶりです。

 中学校での生活では友達がいなかったわけではないのですが、学校というものが嫌いであまり行くことはありませんでした。


「はぁー」


 無意識にため息をついてしまったようです。


「朝から暗いね~折角の入学式なんだから明るくいこうよ!」


 不意に後ろから声をかけられました。


「やっほ~夏川さんだよ~」


 やっぱり夏川さんでした。同じ高校だったんですね。

 ですがその夏川さんの隣には見たことのない女の子がいました。

 身長は私と同じくらいで160cm程度でしょうか、ロングヘアーで眼鏡をかけている大人しそうな感じがします。目は半開きでどこか眠そうです。


「おはようございます夏川さん。ところでそちらの方は?」


「この子は秋山美琴ちゃん。みこみこって呼んであげてね!」


 どうやらこの子は秋山さんというらしいです。ですが今話している最中にも首がかくんかくんと揺れています。半分船を漕いでる状態です。


「初めまして秋山さん。私は清水春野といいます。よろしくおねがいします」

「ん」


 ん。なんと短い返事なのでしょうか。そもそも私の声は聞こえているのでしょうか?

 あ、船を漕ぐどころかヘッドバンキングにレベルアップしてしまいました。


「あはは~ごめんね~みこみこはいつもこんな感じだから気にしないでね!」

「あ、そうなんですか……」


 なかなかに個性が際立ってますね。


「さーて、クラス分けを見に行きますか!」


 そうです。クラス分けがありました。これで私が1年間過ごす環境が決まるのです。重大なイベントです!

 


 生徒玄関を抜けると少し広いホールがあります。そこに張り出されたクラス分けの前に人がひしめき合っていました。まぁ、こうなることは想像できていました。少し待って人がいなくなったタイミングで見るしかないですね。


「ちょっと私がみてくるから、みこみこのことよろしくね!」


 えっ? この人ごみの中を行くんですか? それより秋山さんをよろしくって……。

 気まずいです。なにを話せばいいのでしょうか? それより秋山さん。立ったまま寝るなんて器用ですね。


「あ、秋山さん! 秋山さんはここ杉野井出身なんですか?」

「ん」

「もしかして夏川さんとは昔からの付き合いなんですか?」

「ん」

「中学から?」

「んーん」

「小学校から?」

「ん」


 これは会話と呼べるのでしょうか? もはや言葉のキャッチボールというか何というか……。


「おーい、どうやら私たちAクラスみたいだよ! 同じクラスだね!」


 私たちは同じクラスみたいです。


「全員で73人かー、なんかこんなに多いのってわくわくするね!」


 え? 73人?

 少なくないですか?

 私の中学校時代の1学年の1/2以下じゃないですか。


「あのー、ちなみに中学校時代は何人だったんですか?」

「えーと、51人だよー。あの時も人数が増えるからどきどきしたなぁー」


 1/3!?


「しょ……小学校時代は?」

「25人だったかなー」


 1/4以下!?

 まままマジですか……

 少なすぎやしませんか?


「少なすぎやしませんか……」

「えぇ!?」


 あ、声に出てしまっていたようです。


「いや、東京に居たころと比べるとですね?」

「へ、へぇ~東京の方が少し多いのか~」


 少しどころではないのですが。


「そ、そうですね~」

「ちなみに何人いたの?」


 それ、聞いちゃいますか。


「あれですね。えーと、控えめに言って2倍くらいは」

「2倍!? それに控えめに言って!?」


 めっちゃ驚いてますね。


「ほ、ほーう。まあ東京だもんね。仕方ない仕方ない」


 そういって夏川さんは目を暗くして教室へと向かっていきました。

 その後ろ姿は小さいうえにさらに小さく見えました。

 ですが、できれば秋山さんも連れて行ってほしかったです。

 秋山さーん。そこはゴミ箱ですよー。頭を入れるところではないですよ。

次はその2を書きますよ!ここまで読んでくださりありがとうございます!読んでみての感想などありましたら書いていただけると嬉しいです!

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