表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

平成15年④

僕は美喜ちゃんの手を握った。今守ってあげられるのは僕しかいない。

何したらいいか分からないけど、そのぐらいしかできない。

僕らのベンチの近くに黒のヴォクシーが停まった。そこから、顔白で髪をセミロングでブラウンに染めている女性が出てきた。

「美喜!!!」

「お母さん‥」

美喜ちゃんは僕の手を離して、お母さんの所へ駆け寄った。

美喜ちゃんは涙ぐみながら、

「お母さん‥ごめんな」

パチーンと頬が叩かれる音がした。

僕は衝撃過ぎて、背筋がゾッとした。

美喜ちゃんのお母さんは平手打ちした後

美喜ちゃんを思いっきり抱きしめていた。

「美喜‥すごく心配したんだから。」

「お母さん、ごめんなさい。」

「うんうん、こっちこそ、叩いてごめんね。

痛くなかった?」

「痛かったよ!」

「ごめんね、でも、子供たち二人でこんな遠くに勝手に行くのって危ないでしょ?しかも、春樹くんなんてまだ小学生よ。そこの所を考えない。」

美喜ちゃんのお母さんは僕の方に来て、

「ごめんね。美喜の我儘に付き合って貰って、迷惑掛けてごめんね。」

僕は笑顔で

「でもね、おばさん!今日は凄く楽しかったよ!夏休みの1番の思い出だよ!」

「そう言ってくれて、ありがとう。」

と美喜ちゃんのお母さんは答えた。

美喜ちゃんは涙を拭きながら

「お母さんどうやって、ここの場所分かったの?何も言わないで出て行ったのに。」

美喜ちゃんのお母さんは呆れた様子で

「春樹くんが教えてくれのよ。」

美喜ちゃんは口を開けて驚きながら

「え?どうやって!?」

美喜ちゃんのお母さんが事情を説明した。

「春樹くんのお母さんから電話があったのよ。今、息子から電話があって、こういう状態なんだけどって。すごく心配なさってたから、仕事終わって直接ここへ向かったの。」

僕は続けて、

「ご飯調達しに行ってる途中で、駅の公衆電話からぼくんちに電話したんだ。」


僕らは美喜ちゃんのお母さんの車に乗った。

数分して、僕の隣で座っていた美喜ちゃんは気持ち良さそうに寝ていた。

すると、美喜ちゃんのお母さんが運転しながら

「春樹くん、美喜が迷惑かけてごめんね。」

「あ、はい」

「美喜、学校でね、クラスの子たちと上手くいかなくて。はぶかれちゃったの。それで、美喜は精神的に不安定になっちゃってね。

入学したての頃は学級委員になったとか、クラスメイトと遊びに行くんだって、張り切ってたの。でも、今一人ぼっちになって寂しくなっちゃんだよね。だから、今日春樹くんを誘ったのかもしれない」

「今日は凄く楽しかっし、立山の自然も綺麗だったよ!」

美喜ちゃんのお母さんは微笑みながら、

「そう言ってもらえると、私も美喜も嬉しいよ。これからも、美喜のことをよろしくね!」

「はい!」

と僕は返事をした。

美喜ちゃんは気持ち良さそうに僕の隣で寝ている。美喜ちゃんの寝顔を見てたら、僕も眠たくなった。

僕も車の中で心地良い眠りについた。


秋になって2学期が始まった。学校では一人で過ごし、家に帰って篭るか図書館に行く。常に同じライフスタイルだ。でも、一つだけ変わったことがある。朝登校する時に美喜ちゃんと会うようになった。家を出る時間がたまたま同じでお互いに「おはよう」と言って出掛ける。美喜ちゃんは朝しんどそうな顔をしていたが、気持ちに負けることなく学校に行っていた。そして、中1の2学期から1日も休まず出席し美喜ちゃんは中学校を卒業した。それと同時に僕も小学校を卒業した。

小学生時代のあの夏の遠出は一生忘れることはできないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ