平成15年④
僕は美喜ちゃんの手を握った。今守ってあげられるのは僕しかいない。
何したらいいか分からないけど、そのぐらいしかできない。
僕らのベンチの近くに黒のヴォクシーが停まった。そこから、顔白で髪をセミロングでブラウンに染めている女性が出てきた。
「美喜!!!」
「お母さん‥」
美喜ちゃんは僕の手を離して、お母さんの所へ駆け寄った。
美喜ちゃんは涙ぐみながら、
「お母さん‥ごめんな」
パチーンと頬が叩かれる音がした。
僕は衝撃過ぎて、背筋がゾッとした。
美喜ちゃんのお母さんは平手打ちした後
美喜ちゃんを思いっきり抱きしめていた。
「美喜‥すごく心配したんだから。」
「お母さん、ごめんなさい。」
「うんうん、こっちこそ、叩いてごめんね。
痛くなかった?」
「痛かったよ!」
「ごめんね、でも、子供たち二人でこんな遠くに勝手に行くのって危ないでしょ?しかも、春樹くんなんてまだ小学生よ。そこの所を考えない。」
美喜ちゃんのお母さんは僕の方に来て、
「ごめんね。美喜の我儘に付き合って貰って、迷惑掛けてごめんね。」
僕は笑顔で
「でもね、おばさん!今日は凄く楽しかったよ!夏休みの1番の思い出だよ!」
「そう言ってくれて、ありがとう。」
と美喜ちゃんのお母さんは答えた。
美喜ちゃんは涙を拭きながら
「お母さんどうやって、ここの場所分かったの?何も言わないで出て行ったのに。」
美喜ちゃんのお母さんは呆れた様子で
「春樹くんが教えてくれのよ。」
美喜ちゃんは口を開けて驚きながら
「え?どうやって!?」
美喜ちゃんのお母さんが事情を説明した。
「春樹くんのお母さんから電話があったのよ。今、息子から電話があって、こういう状態なんだけどって。すごく心配なさってたから、仕事終わって直接ここへ向かったの。」
僕は続けて、
「ご飯調達しに行ってる途中で、駅の公衆電話からぼくんちに電話したんだ。」
僕らは美喜ちゃんのお母さんの車に乗った。
数分して、僕の隣で座っていた美喜ちゃんは気持ち良さそうに寝ていた。
すると、美喜ちゃんのお母さんが運転しながら
「春樹くん、美喜が迷惑かけてごめんね。」
「あ、はい」
「美喜、学校でね、クラスの子たちと上手くいかなくて。はぶかれちゃったの。それで、美喜は精神的に不安定になっちゃってね。
入学したての頃は学級委員になったとか、クラスメイトと遊びに行くんだって、張り切ってたの。でも、今一人ぼっちになって寂しくなっちゃんだよね。だから、今日春樹くんを誘ったのかもしれない」
「今日は凄く楽しかっし、立山の自然も綺麗だったよ!」
美喜ちゃんのお母さんは微笑みながら、
「そう言ってもらえると、私も美喜も嬉しいよ。これからも、美喜のことをよろしくね!」
「はい!」
と僕は返事をした。
美喜ちゃんは気持ち良さそうに僕の隣で寝ている。美喜ちゃんの寝顔を見てたら、僕も眠たくなった。
僕も車の中で心地良い眠りについた。
秋になって2学期が始まった。学校では一人で過ごし、家に帰って篭るか図書館に行く。常に同じライフスタイルだ。でも、一つだけ変わったことがある。朝登校する時に美喜ちゃんと会うようになった。家を出る時間がたまたま同じでお互いに「おはよう」と言って出掛ける。美喜ちゃんは朝しんどそうな顔をしていたが、気持ちに負けることなく学校に行っていた。そして、中1の2学期から1日も休まず出席し美喜ちゃんは中学校を卒業した。それと同時に僕も小学校を卒業した。
小学生時代のあの夏の遠出は一生忘れることはできないだろう。




