平成24年⑧
「よっしゃ〜テスト終わったぜ!」
斎藤が両腕を上げて喜んだ。
沼山は微笑みながら
「夏休みだねぇ」と言った。
エミリーが僕らの方を向いて
「この後、前期終了お疲れ会をしよう!」
と満面の笑みで言った。
その意見に全員一致で賛同した。
僕はエミリーに問いかけた。
「沙優はどうする?」
エミリーはムスッとした表情をし
「沙優はいいよ。彼氏とイチャイチャしてるんじゃない?」と答えた。
取り敢えず、みんなには内緒で沙優にもLINEで連絡した。しかし、既読になることはなかった。
僕らは大学の門を出た所で沙優と偶然あった。
沙優は、僕らの方を見て
「やっほー!元気?みんなこれから帰り?」
と聞いてきた。
僕以外の人は反応がなかったので
「帰りだよ。これからみんなとごは」
と言いかけた所、
エミリーが割り込んで
「沙優はこれからデート?」
と聞いた。
すると、沙優はニコッと笑い
「そー!前期のテスト終わったから、これからご飯食べに行くの!あと、少しで彼来るからさ。」
と言った。
僕らは沙優と別れ渋谷駅の方へ向かった。
僕らは渋谷のジンギスカン料理のお店で肉を大量に頬張った。
飯田が、「渋谷ってすげーな、羊の肉が食えるんだぜ!うめ〜羊だけにう、メェ〜」
斎藤が「甲府ではなかなか食えんでしょ?」
と言った。
「いやいや、ジンギスカンぐらいあるわ!」
「ほうとうの店が大半かと思ったよ。」
「甲府は県庁所在地なの!いろんなお店あるよ!セレオもあるんだよ!」
「セレオ?」
「百貨店だよ!百貨店みたいな感じ!取り敢えず肉くおーぜ!沼山早くどんどん焼いてくれ!」
「飯田くんも斎藤くんもたくさん焼いてたくさん食べる分にはいいよ。焦げたやつどうするの?ペースが早すぎて焦げてるよ。」
「焦げたのは沼山と高瀬が専門だから。」
と斎藤は笑って答えた。
エミリーが僕の方を見て質問した。
「高瀬は夏休み帰省するの?」
「うーん。帰省しないかな。アルバイトでもはじめるか。川越生活をのんびり楽しむよ。」
「家族も帰ってきたら喜ぶんじゃない?友達とかもさ。」
「家族はそうかもしれないけど。地元に友達いないんだ。」
「今までぼっちだったの?」
「そーだよ。」
エミリーはふーんと言いながら肉を摘んだ。
「なんとなく、そんな匂いするでしょ?」
「高瀬がぼっちだったってこと?」
「うん」
「うん、そんな匂いする。」
「ストレートだなぁ」
と僕は笑った。
エミリーは肉をまた摘みながら
「でも、今はぼっちじゃないじゃん。楽しいでしょ?」
「うん。」
「じゃあ、いいじゃん。今が楽しければ」
斎藤が
「お前らコソコソ何話してるんだよ。」
と言ってきた。
それに対してエミリーが
「高瀬が今だに童○なのはなんでだろうね。って話してたの」
「いや、そんな話してねーよ。」
沼山が
「でも、高瀬くんねキスはしたことあるだって!」と言い放った。
「沼山やめてくれよ。内緒だって!」
エミリーが続けて
「幼馴染の年上の人としたんだってさ!」
「え?エミリーに言ったっけ?」
「聞かされてないけど。タコス食べながら、それについて語ってた同級生がいたからさ。」
斎藤と飯田が声を揃えた。
「たかせぇ〜〜まじかぁ〜」
エミリーが目がギラギラさせながら
「それについて話してよ!」
僕は頭を掻きながら
「弱ったなぁ」と言い、富山での思い出を話した。
話を聞いた後、エミリーが
「その人、東京にいるんでしょ? 会えるんじゃない?」
「東京なんか人だらけで分からないよ。でも、これはもう思い出だから。」
僕らはジンギスカンを楽しみ、お店を出た。
エミリーが
「ちょっと、ローソンよる!ミンティア!ミンティア!」
斎藤が呆れながら
「あと、家に帰るだけじゃん。口直し必要か?」
と言った。
僕らはローソンに向かった。
するとローソンに、どかで見たことがある背の高いスポーツマンイケメンでサッカーかバスケをやってそうな顔の人がギャルっぽい大学生と一緒に手を繋いでスイーツコーナーを見ていた。
僕らはその二人を目で追っていた。すると、男の人は僕らを見て、ニヤリと笑って会釈した。その二人は手を繋いでローソンを出て、センター街の方面へ消えて行った。
エミリーが僕らの方を見て
「あのギャルの感じ沙優じゃない。」
僕はかなり動揺した。
「見て分かるよ。沙優じゃないことぐらい。てか、沙優はまだあそこで待ってるわけではないよね?」
斎藤が
「さすが、待ってないだろう。来ないなってなって帰ったか、彼氏がやっぱごめん今日は無理!って言うんじゃないか?」
確かにそう思った。でも、沙優がもしかしたら、あの場所でずっと待ってるかもしれない。いや、そんなことはないか。いや、でも確認したいな。
「1回、大学に戻るのはなしかい?」
僕の言葉にみんなが疑った。
「そんなのしてどうするのよ?沙優が心配なのは分かるけど。正直、沙優はうちらと関わりがなくなってるじゃん。可愛そうだけど、しょうがなくない?」
飯田が
「エミリーの言ってることわかるなぁ」と言った。
僕らはそのまま帰宅することにした。
でも、僕は心の中で心配な感情が渦巻いていた。
戻っていなくてもいい。確認だけしたい。
まだ終電はあるし、明日は何も予定ないから大丈夫。
僕はJRの改札を入らず大学に向かった。
明治通りを真っ直ぐ急足で歩いていると
「高瀬!!」
と呼ばれ振り返った。
そこにはエミリーと飯田、沼山、斎藤がいた。
「あれ?みんな帰ったんじゃないの?」
斎藤が
「どんくせーな。高瀬は。エミリーがあいつ一人で確認しに行くつもりだよってLINE来たからさ。」
と言った。
「マジか‥」
エミリーが
「高瀬って自分の意見曲げないよね。気が弱そうなのに、意志だけは強いよね。いい所でもあるし、悪い所でもあるし。取り敢えず、みんなで大学戻ろう。沙優いないと思うけど。確認ね。」
僕は凄く嬉しかった。こんなにも思ってくれる人がいるなんて。
「みんな、ありがとう。」
僕らは大学へ向かった。
校門の所で沙優が立っていた。
夕方、僕らと会った場所と同じだ。
沙優は僕らの方を見て
「彼氏ね。テスト終わって、腹痛いからトイレに行ってくると連絡来てから、一切何も連絡来なくなったの。待ってるんだけどね。来ないの。もう4時間も待ってるの。」
エミリーは沙優のことを見つめながら
「沙優、もう何となく分かってるんじゃないの?」
沙優は目をうるうるさせながら、
「私ね、バカだからずっとね、ここで待ってたの。今日は来ないなって分かってるのに。でもね本当に来る時もあるから‥よく分からないの私。」
「あのね、沙優。私たちがご飯食べ終わってコンビニに行った時」
「大丈夫!もう、分かってるから。なんとなく、分かってるから。彼のために彼のためにってやってるのに、気持ちが伝わってるのか分からないの。多分私は都合のいい女なんだと。みんなありがとう。私はここでもう少し待って見るよ。」
僕は沙優のことをじっと見つめた。
「沙優、自分たちと一緒に帰ろう。」
「高瀬ありがとう。でも、大丈夫。もう少しだけ。」
「いや、沙優帰ろう。彼は多分来ないよ。」
「うん‥」
「沙優の居場所は彼の所ではないし、彼の家でもないよ。」
「でも。」
「沙優が本当に自分を出せる所が沙優の居場所だと俺は思うよ。ごめん。沙優にはキツいことばかり言って。でも、そのなんというか。」
エミリーが呆れながら僕の顔を見た。
「要するに、自分たちは友達だから、言ってるんだよと。友達だからこそ、俺らのグループが居場所だと。」
僕は苦笑いをしながら
「そそ!そーいうこと。」
と答えた。
斎藤が
「何がそーいうことだよ。言い回しが下手か。沙優ちゃん、とりま帰ろうぜ!な?」
と言った。
沙優は目が若干ウルウルしながら
「分かった!帰る!」
と答えた。
僕らは大学を出て、渋谷駅に向かった。
夏の夜は暑いが、涼しい風がたまに吹くから居心地が良い。今まで一人だったが、今は凄く楽しい。過去は過去。今は今。
結局、数日後に沙優は彼氏と別れた。LINEでさようならとメッセージを送ったら同意したんだとか。そのぐらいの男だったと沙優は言っていた。




