平成24年③
飯田と大学で別れた後、渋谷駅に歩いて向かった。自分の地元と全く違う。夜がこんなにも明るいんなんて。お店も沢山。牛串屋?こんなに行列ができてるなんて、凄く美味しんだろうな。マッサージ屋? 水着のお姉さんが行うのか!?今度見てみようかな‥
あそこのコンビニでカツアゲか?東京も物騒だな。目を合わせないようにしよ。
知らないふりをしてコンビニの脇を通り過ぎようとした時、カツアゲされていたヒョロメガネの奴が僕に駆け寄ってきた。
「この人!僕の友達でぇ!親が医者やってて、金持ちのボンボンなんです!!」とヒョロメガネに指を指された。
一瞬、うん?なんのことだ?こいつ知り合いだっけ?と考えていたら、大柄で金髪の目つきが悪い(いかにもヤーさんみたいな)奴がゆっくりと僕に近づいた。
「金、少し貸してくれないか?」
僕は棒ランドセルCMのように背筋ピーンとなった。
「いやです‥だって、東京来たばかりだし、まだいろいろ」
「うるせーな!いいから気持ち分渡せよ!」
「‥‥‥」
僕は言葉が出なかった。言い返したいが、言葉が喉に詰まって声が出ない。恐らく、かなりビビってるんだろ。
僕はリュックのチャックをそっと開けた。
「早く出せよ。ほら。」
僕は飲みかけのポンジュースを出しキャップをそっとはずした。
一気に力を溜めて、思いっきり腕を後ろ下げてポンジュースを金髪男めがけて、ぶっかけた。
ポンジュースは綺麗な放物線を描いて金髪男の顔にクリンヒットした。
金髪男の目にポンジュースが入ったようで、目をしょぼしょぼしている間に2人で走って逃げた。
果汁100パーセントだから目に入ったら、凄い染みるだろうに。
ポンジュースにこんな使い道があったのか!
と思いながら必死に逃げた。
渋谷のセンター街を突っ走り、代々木公園方面に向かっていた。渋谷はまだ来たばかりで正直何処にいるのか分からない。
「ここまで、走れば大丈夫でしょ」
僕はヒョロメガネに言った。
「はぁはぁ‥え、てか君息切れてないけど、すごいなぁ‥」
「中学、高校、テニス部だったからね。て、なんで君は僕を巻き込んだんだい?」
ヒョロメガネはリュックからお茶を飲んで、少し間を置いて話した。
「巻き込んで、ゴメン。たまたま君が近くに通り掛かったから。しかも、同い年ぐらいで凄く優しそうな雰囲気だったから。本当にゴメン。」
だからって面倒なことに巻き込むなよ。内心そう思ったが
「いや、結果オーライだよ。気にしないで。」
取り敢えず感じだけは良くしとこ。
ヒョロメガネはキョロキョロ辺りを見渡した。
「ここどこだろう?」
「ここどこって渋谷でしょ?」
「渋谷って言っても広いし、迷路みたいだから、慣れてる人じゃないと迷っちゃうのよ。」
確かに、故郷の富山とは全く違う異次元の世界。オシャレなお店やハメを外そうな人たちで溢れかえっている。
取り敢えず、ヒョロメガネと一緒に細い路地を歩いて駅の方へと向かった。ちゃんと向かっているのかさえ分からない。
ヒョロメガネが腕を組みながら
「君、渋谷分かる?」
と質問してきたので
「僕は地方から来たばかりだから、渋谷は詳しくないんだ。」
「そっか‥」とヒョロメガネは呟いた。
逆に君は分からないのかな?とも思った。駅も分からないし、お腹空いたし。さっきうどん食ったのにもう腹減った。
「お腹空いたなぁ。駅分かればいいんだけどね。」
それを聞いたヒョロメガネは、
「僕も腹減ったよ。あ、そこのタコスのお店で何か食わない?今日会ったのも何かの縁だし。」
「タコスかぁ。食べたことないな」と僕は呟いた。
2人はタコスのお店へ入った。
お店は多くの人で賑わっていた。
タコスのハンバーガー屋ショップのようだった。
購入方式はマックと同じだ。
前に並んでいた金髪ギャル2人が
「ここ!めざましテレビで紹介されてたらし〜よ〜」
「マジで?映えるぅ〜」
と言っていた。
何か映えるのらしい。
僕らはタコスを頼みいろいろと話した。
ヒョロメガネは沼山といい、東京の武蔵境に実家があり、そこから僕と同じ大学に通っている。
そして、偶然にも同じ学部。
沼山は手で後ろの髪を掻きながら
「いや〜高瀬くんも同じ学部だったんなんて!しかも同じ童○なんて!奇遇だなぁ」
と笑った。
「いや、童○なんだけど、キスは済ましてるから。」
「えええーー!そうなの!どんな人と?」
「沼山くん!静かにして!」
僕は周囲を見渡したが、他の連中もワーワー騒いでるので、沼山の声は全く聞こえてないだろう。
沼山は僕の顔を見ながら
「どんな人なの?」
と聞いてきた。
「中学生の時に年上の幼なじみの人と‥」
沼山はへぇー!と目を輝かせながら言った。
僕はその詳細について言うか迷っていたら、
背後に気配を感じ振り向いた。
そこにはエプロンをつけた若い女の店員さんが立っていた。
その店員さんは気まずそうな感じを出しながらも
作り笑顔で
「あの、お話に夢中の所すみませーん。あと10分で閉店時間なんですけどー他にご注文はありますーか?」
と声を掛けてきた。
僕は
「いや、大丈夫です。すみません。もう出ます。」
と言った。
店員さんは
「あと、10分なので〜」と言い真顔で他のお客さんの所へアナウンスしに行った。
僕は沼山と店を出て、渋谷駅に向かった。
「高瀬くん、さっきの店員さんだけどさ、なんか顔は可愛いらしいのに勿体ないなと思わない?
真顔というか」
と笑いながら言った。
「まぁでも、以外と話してみたら、面白かったりするもんだよ。分からないけど。」
僕らはLINEを交換して帰宅した。




