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平成23年②

朝、早く学校に行き職員室に入り、山根先生に挨拶をした。

山根先生は立ったまま竹刀を片手で持って、もう一方の手でコーヒーを飲んでいた。

竹刀に巻いてあるオレンジ色のテニスグリップはいつも気になっているが、聞くほどでもないと思った。

「山根先生。おはようございます。今、お時間よろしいでしょうか?」

山根先生は図太い声で

「高瀬、おはよう!なんだ?話し聞くぞ」

僕は山根先生の顔を見ながら

「僕に小論文のレクチャーをして下さい。」

山根先生はうん?という顔をして考えていた。

「高瀬、期待に応えてあげたいが、俺は英語の教師だからな。英語の小論文なら教えてあげられるが、それ以外は難しいなぁ」

「そうですか、ありがとうございます。すみません。変なこと聞いちゃって。」

「いやいや、俺よりいい先生はいるし、矢部先生だって、歴史系の大学出てるんだろ?矢部先生に直接、小論教えて貰ったらどうだ?」

僕は気まずい顔をして

「矢部先生はちょっと、なかなか打ち解けずらい所が多々ありまして。」

山根先生は図太い声でうーんと唸った。

すると、山根先生は職員室の後ろの流し台でコーヒーを入れている若い先生を呼んだ。

「大谷先生、ちょっといいかな?」

と声を掛けた。

大谷先生は何かを察知して

「今、取り組み中なことがありまして。」

と言い逃げるように職員室を出た。

山根先生は僕に付いてくるに言い

職員室を出て隣の講師室に入った。

講師室には、一人でコーヒーを飲みだから小テストの添削をしている大谷先生がいた。

山根先生は大谷先生に

「大谷先生。この子に小論文の指導してくれないかな?」

大谷先生は困りながら

「いや〜僕も一杯一杯なんですよ。小論文の指導受け持っている子が50人いるんですよ。難しいですね。」

山根先生は笑いながら

「さすが、生徒たちから人気がありますな。この高瀬はすごい頑張り屋さんでな。毎朝、早く来て勉強をしてるんですよ。」

大谷先生は「はぁ」と言っていた。

山根先生は続けて

「俺に小論を指導してくれってきたんだが、俺は英語担当だからな。大谷先生のような現代文と古典担当なら安心じゃないかと思ってたんだよ。」

大谷先生は渋りながら

「困ったなぁ。山根先生のお願いなんですもんね。君、確か。僕の授業受けてる子だよね?」

「はい、現代文と古典です。」

「だよね?一番後ろの大人しい子だよね?」

と大谷先生は言い机置いてある名簿を見た。

「高瀬春樹くん。ふーん。現代文と古文はクラス1位か。うーん。うーん。しゃーない。受け持ちますよ。僕が。」

山根先生は

「大谷先生、ありがとう。高瀬も良かったな。」

僕は

「大谷先生、山根先生、ありがとうございます。小論文をガッツリ勉強して、AO入試を受けたいです。」

大谷先生は

「では、高瀬くん。なんでもいいから小論文を書いてきて貰っていい?題材はなんでもいい。文章だけチェックするから。」

「はい!分かりました。よろしくお願いします。」

大谷先生はニコって笑って

「よろしく」

と言った。

僕は教室に戻り、朝勉を始めた。


後日教室にて、ネットで見つけた題材を元に文章を書いて大谷先生に添削して貰った。

大谷先生はうーんと唸りながら

「起承転結の形と内容については大分できるね。後は、誤字や言い回しがくどいね。そこを修正すればいいと思うよ。」

僕は少し笑みが零れて

「出だしとしては、いい感じですか?」

「いや、普通。正直ね受ける大学が文学を推している所だから、もうちょっと書けた方がいいかも。取り敢えず、夏休みには文章を沢山書いてなれること。12月の入試まで文章力を上げよう。」

「はい、分かりました!」

タイミング良くチャイムが鳴り、大谷先生の現代文の授業が始まった。

相変わらず、うちのクラスは動物園状態だ。一体この動物たちは進路について考えているんだろうかとも思う。

大谷先生は何も言わずに授業を止め、バインダーに挟んである用紙に何か記入をしていた。

そんなことを気にせず、大声で喋ったり、床に座って円を作り井戸端会議をしている生徒もいる。

大谷先生は無言で何か書いていた。

床に座っている一人の生徒が気づいて大谷先生に質問した。

「せんせー。何書いてるの?私も一緒にそれ書きた〜い。」

と笑って言った。

大谷先生は笑顔で

「今、くっちゃっべってる人や寝てる人、床に座って授業を受けていない人をチェックして評価を落としてるんだよ。一緒にやる?」

すると、その生徒はえ?と言って自分の席へ戻った。そして、一気に静まり返り動物園は閉園した。

すると、大谷先生は何かもなかったように授業を始めた。

その後も静かに授業が進み、閑静な教室のまま終わった。

僕は放課後に大谷先生から添削して貰った文章を書き直して見せに行った。

大谷先生は和かに

「お!前より良くなってるじゃん!いいね。高瀬!今回はコレでokだね。」

「ありがとうございます。」

「前より、文章がスッキリして読みやすくなったよ。文章も効率良く書かないとね。」

「効率ですか?」

「物事は何でも効率良くやることが豆なんだよ。生徒たちを教えるのも、ただ叱るのではなく、自分自身で気がついて直して欲しいんだよね。だから、今日の授業は怒らず生徒たち全員に置かれている状況について考えさせたんだ。」

「そうなんですね。」

「そー。効率だよ。あ、高瀬の成績は落としてないから安心して。」

と笑って言った。

大谷先生はふと思い出したように

「夏休みに、現代文の補講を行うんだけど、高瀬も参加しない?」

僕は迷わず

「はい、お願いします。補講が終わった時、小論文の添削もお願いしてもいいですか?」

「勿論だよ。」

と大谷先生は答えた。

僕は

「じゃあ、よろしくお願いします。」

と言い教室を出た。

僕はなんとか実力を上げて、矢部を見返してやろうと決意した。

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