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本当に呼びたいの?

「江川の隣は私にするくらいの保険は掛けときなよね」

なんだって直属の上司があいつなんだろうね。

そう呟く真美さん、ご尤もです。


ある意味、あの頃内緒で付き合ってたからこその、この状況なんだろうけどね。

きっと、社内恋愛満喫でオープンな関係だったら、スキャンダルもいいとこ。

人の噂は75日なんて言うけど、何年経っても陰で言われ続けたんじゃないだろうか。

出世と天秤に振られた女というレッテル。

確かにその通りなのだけど、その通りだからこそ馬鹿にされるのも同情されるのもどちらにしても、そんな好奇な目でみられるのは辛かったと思う。

そしてきっと私は違う部署はもとより、違う支店に飛ばされていただろう、専務の采配で。

まあそこでいい出会いがあったかもしれないけれどね。


「それにしても、よく江川招待するの反対しなかったね、梨乃の両親」


やっぱりそこよね。

私も真美の立場だったらそう思うとこだ。


「それがね。お前が良いんだったらいいよ。って言ってた。そうそう、江川も同じ事言ってたよ」

ここでケラケラと笑える私って。

しみじみ乗り越えたんだなぁって思ってしまう。


「ふーん。そういうものかね」

世間一般ではそういうものでもないだろうに。

なんて呟きまで添えてくれた。


世間一般ね……


聞くに聞けないってこういう事よね。

私だって親に言った時、絶対何か言われるかと覚悟してたのに、拍子抜けだったのだからさ。


「それでもって本当に専務まで招待とか言わないよね?」

と真美の一言に思いだした。

そういえば、いつぞや部長を出し抜くのに専務に式の会場とか何とか言ってたかもしれない、ではなく言ってたよ。


「それって直属の部下でもない私が呼んでいいものなのだろうか?」

素直に口にした私に


「あんたね、結婚してないそれも結婚も考えた事ない私にそれを言うか。あれでしょ、部長に啖呵切った時に江川と口裏合わせしたんだから、江川にでも相談すればいいんじゃないの?」


はぁー。

大きなため息が出たのは仕方がないよね。

大きな会社じゃないにせよ、そこそこの会社だったりする訳で。

一介の社員の結婚式に毎度専務が出てたらキリないわよね。

でも来るって言われたらどうしよう……

まあどうにもならないけどさ。


一人妄想が広がった。

今朝の夢といい、今日の私はなんて非現実的な空間に飛んでいるのだろう。


大きく伸びをしながら

「梨乃の結婚式じゃ、うーんと気合入れていかなきゃ。私にも運命の出会いがあるかもしれないからね」

と真美は言うけど。


私にもの”にも”ってなんでしょう。

あの可愛い魚さんじゃない事だけは確かだ。

アイツが私の運命の相手って言っちゃうの?

運命って何だろう。

あー駄目ダメ、そんな事考えたらまた無限のループだよ。


納得したのよ、私は。

結婚にはいろいろな形があるって事。


政略結婚でさ、年もうーんと離れてて、理想の好みにもこれっぽっちにも引っかからない相手と結婚するよりよっぽど幸運よ、私は。

そう、私は幸運なんだわ。

おーほっほと高笑いしてやりたいくらいにね――って自分で想像してため息が出た。


ポンっと肩に置かれた手。

「先行くよ」

とトリップし始めた私を容赦なく置いていこうとする真美って冷たくないですか?

確かに休み時間が終わりそうだけど。

重たくなった腰を持ち上げて去りゆき始めた真美の後を追った。


就業中、江川の周りに人がいないのを確かめると、専務の事を早速聞いてみた。

「本当に呼びたいの?」

と一笑された。

招待したいのだったら、口きくけど? との言葉まで。

勿論即効でお断りしましたとも。

専務もそんなお暇はないでしょう。

娘さんがつわりで帰っているのなら尚更よね。


おっと片瀬の事を失念していた。

周りにいないと思ったけれど、あやつ何処で見ているかもしれぬ。

何だか武士のような言葉使いになってしまうのは何故なのだろう?

一人笑いながら今更ながらそーっとフロアを見渡してみる。

片瀬らしき人は無し。

まあ別に聞かれて疾しい事はないんだけど、やっかみは受けない方がいいからね。


そういえば、吉川は何処へ行ったのだろう。

永山もいないときた。

あの2人が揃っていないなんて、はて? 今日は会議なかったよな。

ちょっかい出しの吉川がいないと静かでいいのだけど、何となく変な感じがする。

まあ、私の知った事じゃないわね。


その時2人がまだ呼んでもいない私の結婚式の2次会でのプレゼントを給湯室で思案していたなんて夢に思わない私だった。















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