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スペースマン  作者: 本山なお
5/30

スはスペースマンのス④

 再び公園。

 <パラドックス>のパワードスーツ隊が散開する。

 パワードスーツとは、機械の力で人の能力を何倍にも強化した強化服の事。元来建築や介護の分野で培われた技術だが、それを兵器に転用したものが、いま明たちに迫りつつある軍用パワードスーツ(装甲強化服)である。

 頭部は剣道やフェンシングの面を思わせる半球状のバイザー、左肩にロケットランチャー、腰部にビームマシンガンを装備している。身の丈は3mもないが、見た目はそれ以上の威圧感がある。

「げ」困惑するピンニョ。 

「拉致が目的なら重火器は使えない。上からサポートしてくれ」

「了解」

 ピンニョは空へ。飛行中かき消すように見えなくなる。

「消えた」美理が驚く。 

「光学迷彩だよ」

「高額明細?・・あ、光学迷彩か」

 ピンニョにはカメレオンよりもステルス能力の高い生物のDNAが組み込まれている。

 明は左右を見る。どちらにも林。位置を確認する。腕時計を触る。

 その間にもパワードスーツは花壇のパンジーを踏みつけ、二人に迫る。

『降伏しろ。命だけは助けてやる』

 パワードスーツ隊リーダーの声が響く。

 明の腕時計に上空のピンニョから通信が入る。近距離なら繋がるようだ。

『三手に分かれた。正面から2体、1体は離れて待機、残り2体は左から後ろに回り込もうとしている』

「サンキュー」

 明は右手に銃を持ったまま両手を上げつつ、隣の美理に辛うじて聞こえる声で命令した。

「目をつぶれ!」

 美理は言われた通り目を閉じる。

 ぴカッ。

 明の左腕の時計から眩い光が発せられた。目くらましだ。

「モニターが(真っ暗)!」ただの目くらましではない、レーダー攪乱効果もある。

 焦るパワードスーツのパイロット達。めくら撃ちでネット(網)を発射。

 明は左腕で美理を抱きかかえ、右手で銃を撃つ。光線でも実弾でもなく無線アンカー(錨)。それは林の中の木に刺さる。

 美理は瞼を閉じたまま、真っ赤になっていた。男子とここまで近づいた経験はない。困る。退学ものだ。何より・・恥ずかしい。

 桜吹雪の中、ふたりはアンカーに引かれ右側の林の中へ飛ぶ。

 それらは一瞬の出来事だった。ネットは空振り。

「ここで待ってて」 

「はい」 

 美理を林の中に残し、明は走りながら銃のスイッチを入れ替える。パラライザーからレイガンへ。

 そして狙いを定め、撃つ。パラライザーの赤色と違う白色のビームが走る。

 ビームはパワードスーツの装甲で跳ね返される。 

「まだ弱いか」銃を調整。パワーを上げる。

「モニター!まだか!」焦る敵兵。

「回復まであと2秒」 

「!」パワードスーツのモニター回復。そこには銃を構えた明が映っていた。

 明は両手で銃を持ち発砲。反動でのけ反る。

 スーツの頭部装甲を貫き、吹き飛ばす。パイロットは失神。1体撃破。

「馬鹿な。ハンドガンで!」

「男だけ?娘はどこだ?」 

 敵はビームマシンガンを発射。

 焦っているのか当たらない。走りながら明は銃を撃つ。

 ビームはスーツの両足(踵)を貫通。

 前のめりで激しく転倒。中の兵士は失神。

 明は倒れたスーツを蹴り、飛ぶ。

 空中で発砲。マシンガンを吹き飛ばす。2体目。

「ごめんね」

 林の中。美理はアンカーで傷ついた桜の木を撫でていた。

 そこを回り込んでいた敵に発見される。

「娘は林の中だ!そいつは放っておけ!何が何でも!」

 パワードスーツ2体が林に向かう。

 追う明。

 後衛のスーツがそれを阻止すべく発砲。

 明はジャンプして避ける。

 ピンニョが急降下し、明を追い越す。

 美理を狙うスーツの前に躍り出て“羽根手裏剣“を投げる。

 メインカメラを破壊。足止めになる。 

 もう1体は木を倒しながら美理に迫る。

「きゃあ」

 追いつめられる美理。絶体絶命。 

 飛び込んで来る白い影。白い馬。

 日本刀をくわえている。ビームブレードの様に伸縮自在。だが光線ではなく金属の刃だ。

 パワードスーツが倒れる。

 その腹部は切断されていた。斬られたのは装甲服のみで、中のパイロットは衝撃で気絶しただけだった。これで3体目。

「おまたせ」

「遅いよ。ボッケン」

 シェプーラ星の高等動物。そのフォルムは地球の馬そっくりで(サラブレッドより小さくポニーより大きい)、四本の足は(ひづめ)で走行に特化しているが、頭部は犬に近い。額に当たる部分は隆起している。これは脳が地球人類並みの大きさのためである。走行速度は地球環境で時速300km超。顎と歯が発達しており、口に武器をくわえて攻撃する。<フロンティア号>では前足にマニュピレーターを付けて操縦をする事もあるが、主にレーダーを担当。その視力聴力は人類を凌駕しており、機械以上の情報をもたらす事もある。

 美理はあっけにとられていた。今度は喋る馬だ。

「乗って」脚を曲げ背を低くしてボッケンが誘う。

「よし。ずらかるぞ」

 明は美理を抱きかかえ、ボッケンの背に乗る。

「兄きには言ってないのに」

 ふたりを乗せ、ボッケンは走り出す。ピンニョも続く。

 敵は残り2体。 

「くそお!」

 メインカメラをやられた1体は上昇し、空中でショルダーキャノンを発射。 

「血迷うなよ。重火器は使っちゃダメだろ」

 はるか遠くの空中で停止しているWC-001から啓作がライフルで長距離狙撃。

 弾は、ショルダーキャノンの弾丸に命中。爆発。

 爆風を受け、パワードスーツは墜落する。4体目撃破。

 待機していた残りの1体。

「いったん引く!形勢を建て直し・・」

 パワードスーツは背部ノズルを噴射し、空へ。

 その行く手に宇宙船が出現。

<フロンティア号>だ。

 反重力航行のため速度は出ていない。宇宙船としては小型だが、パワードスーツに比べるとはるかに大きい。

 ガン。

「ごめん。ぶつけた」コクピットのマーチンが謝る。

 ジャストなタイミングだったが、実は駐機料金が上がる直前に離陸しただけだ。

「わー」

 パワードスーツは吹っ飛び、墜落。べしゃ。

 最後の2体は地面激突前に“自動運転”で不時着したが、衝撃でパイロットは気絶。

 これで全滅。

 倒れたパワードスーツの上に桜の花びらが舞い落ちる。スーツを運んで来たトレーラーはボッケンが破壊していた。 

「あなた方は?」

「俺たちは<スペースマン>。宇宙の運び屋だ。君の兄さんの仕事仲間だよ」

 

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