死の遺産④
啓作は語る。
「今から話すのは仮説だ。デコラスの本、石になった被害者、それらから考えて・・・」
パンゲア軍は一旦後退する。距離をとり、隊列を立て直す。
その間にも怪物はゆっくりと進んで行く。その度に赤い大地が激しく揺れる。
「護衛艦、牽制攻撃!」
パンゲア軍より無数のビーム・ミサイル群が発射される。
地平線ギリギリの狙える距離からの攻撃。
次々と命中。衛星軌道からの攻撃も。
だが怪物は臆することなく艦隊に迫る。
明らかに先程より効果が薄い。怪物は進化しているのか?
「反物質爆弾用意!」
「ドルメンマイヤーバリアー展開完了」
怪物周囲直径1400kmにバリアーが張られた。
反物質爆弾は惑星はおろか恒星すら破壊可能な兵器だ。だがその効果を閉じ込めるバリアーが開発されていた。
「反物質爆弾!爆破!」
「爆破!」
怪物の足元に仕掛けられた爆弾が炸裂する。
眩い光が怪物を包む
「ギエエエエエ・・・・・」
怪物の断末魔の叫びが木霊する。
バリアーの中、巨大なキノコ雲があがる。
「地中も含め直径1400kmが吹き飛びました。反物質中和バリアー有効」
「やった!」喜ぶ艦隊司令。
キノコ雲は天井のバリアーに触れて形が崩れていく。地面にはバリアーに沿って球状に直径1400kmもの巨大なクレーターが出来ていた。濃い霧の中、すべての物が消滅していた。
・・・薄れていく霧。その中から忽然と怪物がその姿を現わす。
「ば、馬鹿な」
5つの首の根元・巨大な目が開く。背中よりコウモリの様な羽根が生え、飛ぶ。
飛ぶことを覚えた怪物はバリアーを粉砕して外へ。
「総攻撃!」
パンゲア軍の必死の攻撃。艦砲射撃・ミサイル・地上基地や戦闘衛星・・・
無数の爆発が怪物の周りで起こる。
だが怪物は無傷だった。
5つの首より稲妻光線が発射。
艦隊を次々と粉砕していく。はるか上空の戦闘衛星も破壊。
怪物は基地に着地、その衝撃で基地の大半は崩壊。
触手が基地を戦闘機を襲う。腹部の口が開き、基地を飲み込む。
怪物は再び飛び立つ。
応戦中の旗艦・空中戦艦のブリッジに迫る。
5つ首の根元の“目“が輝く。眩い光が放たれる。
その光線のエネルギーはパンゲア軍を全滅させるのに十分だった。
・・・沈黙。
啓作は話を続ける。
「奴の正体は・・精神エネルギーを吸い取る化け物だ。パンゲア星の最終兵器とは、人間の魂を自分のものにしてしまう怪物だったんだ。そいつが生まれた時、パンゲア星の人々は魂を奪われ、滅んだ。そして今、悪魔は蘇った」
「でもさ、あの怪物は封じ込められていたんだろ?だったら、奴を封じる方法があるんじゃないか?」マーチンが尋ねる。
「どうする?ずらかる?」
ヨキは出来れば逃げたい。みんなそうだ、多分。だが・・
「もはやこの星だけの問題ではないかもしれない」
「怪物はパンゲア星の首都へ向かっています!」
「・・・・・」
啓作のつぶやきとボッケンの報告に、誰も何も言えなかった。
明が口を開く。
「シャーロットさん、奴のエネルギー分布わかる?」
「モニターに映すわ。目よ。5つの首の付け根にある巨大な目に集中している」
「奴が人によって造られた兵器なら、そのもとを破壊すれば・・・」
「あれだけの攻撃が通用しなかったんだぜ」ヨキの言葉は正しい。
「奴は一度受けた攻撃に強くなる。反物質兵器にも耐性ができているだろう。でも反重力兵器とプロトン砲にはまだ耐性はできていない。反重力ミサイルで奴のバリアーを吹き飛ばして、再生前に中枢へ直撃、その二段攻撃なら・・」
「兄き、反重力ミサイルでバリアーを吹き飛ばせると思う?」
「反重力は10倍まで威力を高められる」
「エリアは1/1000になるけどな」マーチンの言う通り。
「エネルギー分布を見る限り、それでもいけそうよ」シャーロットが答える。
「ミサイルはあと1発だよ」ピンニョの声も緊張している。
「奴は5秒で再生する。チャンスは5秒しかない」啓作が導き出したデータを見て言う。
「でも、やるしかないよ」
明はモニターに映る怪物を睨んだ。他のクルーもモニターを見上げる。
美理は自分だけ避難しろと言う兄に反対した。実際、彼女を逃がす時間はなかった。
かつてない難敵に対し、明たちは戦闘重視のポジションで臨んだ。
明は操縦、啓作は副操縦兼機関制御。ボッケンはレーダー、シャーロットは分析、ピンニョは通信と反重力ミサイルを担当。マーチンはプロトン砲に専念、ヨキはそれ以外の武器を担当。
「エンジン異常なし」
「全砲門開け」
「反重力ミサイル用意」
「プロトン砲OK」
「重力遮断シールド準備」
「行くぞ!」
エンジンの力強い咆哮。<フロンティア号>は怪物を追う。




