死の遺産③
宇宙船がワープアウトする。明たちを追跡してきたパラドックス旗艦だ。
「な、何だこれは!?デ、デコラス様!」
デコラスの位置を示すシグナルは巨大な“卵“を示していた。
「敵機捕捉!攻撃開始!」
戦艦の主砲が旋回、<フロンティア号>に狙いを定める。
発射!
啓作は難なく避ける。外れたビームは“卵“へ。
命中。巨大な“卵“にヒビが走る。
「やばっ!」
地上の明とヨキは“板“の後ろに隠れる。ヨキがESPでバリアーを張る。
“卵“のヒビが広がる。光が漏れる。
やがて殻が凄まじい光と風と共に吹き飛ぶ。まるで台風か火山の噴火だ。
その殻はパラドックス旗艦を直撃。船は大爆発を起こし粉々になる。
<フロンティア号>は高度と距離をとり、被害を免れていた。
嵐の後。
バリアーのお蔭で明とヨキは無事だった。
「な・・」それを見たふたりは絶句した。
<フロンティア号>の啓作たちも言葉を失った。
“卵”から生まれたもの。それは山のようにそびえる“怪物(怪獣)”だった。
雲よりも高く、5つの龍の首、6本の足、3つの長い尾、腹部に大きな口、首の付け根に巨大な目。よく見ると、5つの首は角が二つだったり三つ目だったりと形が違う。
「ウソだろ?」
「八岐大蛇?・・いや数が合わないか」明は怪物を見つめたまま呟く。
「何それ?」
「地球の、日本の古い神話に出てくる怪物だ」
怪物は動かない。死んでいるのか?巨大な彫刻のようにそびえている。
ふたりは小型艇に戻り、計器を点検。異常はない。
「<フロンティア号>に戻ろう」
明とヨキがコクピットに帰って来た。美理は胸をなでおろす。
明は回収したデコラスの本を啓作に渡した。すぐさま啓作は本に目を通す。
ボッケンが分析結果を読み上げる。
「全長・・推定1万m、でも、レーダーには何も映っていません!膨大なエネルギー反応はあるのに」
見えているのにレーダーに映らないのは、可視光線とレーダー波による差なのか?幻やホログラフなのか?不明だ。
改めて怪物を見る。生物というよりまるで山だ。
「ど、どうする?」
「かつてパンゲア星を滅ぼした最終兵器だとしたら、うかつに手は出せない」
「私の血のせい?」
「気にするな。君のせいじゃない」明が宥める。
「高熱源体接近!」
パンゲア軍の衛星軌道からの攻撃だった。光の束が真上から一直線に怪物へ。
命中。眩い光と爆炎。
遅れて衝撃波。更に煙が来る。
煙が薄れる。怪物は変わらぬ姿でそこにいた。
「あ!!」
眠っていた怪物の目が開く。
山が動いた。
一歩。ズズウウ~ン。
その一歩は津波を起こし、次の一歩は山を踏み潰す。
その破壊力は怪物がその大きさに相当する質量で生じるものだ。
確かに怪物はそこに存在していた。
「レーダーに反応。パンゲア軍です」
赤い大地に怪物の巨大な足跡が続く。
怪物の行く手にパンゲア星の軍隊が展開していた。その数は小型機を除いても数十隻。<地球連邦>の国境(宇宙境?)にあるこの星の軍事力は、同連邦の中でも十指に入る。
<地球連邦>の国境(宇宙境?)にあるこの星の軍事力は、同連邦の中でも十指に入る。
「何て奴だ。スコープからはみ出しやがる」
「アタック!!」
前衛の戦闘機編隊より無数のビーム・ミサイルが発射される。
それらは一直線に怪物に・・命中。無数の爆発が起こる。
その爆炎の中、怪物はゆっくりと歩く。全くの無傷。
後方の空中戦艦よりブラスター発射。
怪物はレーダーに映らないため、ホーミングにはならないが、相手は巨大、次々と命中する。
怪物の首を切断。だがそれはすぐに再生した。
怪物は歩みを止めない。
その5つの口が開き、けたたましい咆哮と共にビームが発射される。
それは稲妻の様な軌跡を残して戦闘機に命中。爆発。
ステルス化して脱出を図る機もいたが、怪物には見えているのか?次々と撃墜される。
足と背中のフジツボ状の突起物から無数のイソギンチャクの様な“触手”が伸びる。
それは戦闘機を捕える。絶叫を残して石になるパイロット。




