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スペースマン  作者: 本山なお
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死の遺産①

 第6章  死の遺産     


 <フロンティア号>は水星の近くを航行していた。

 空になったブースターを太陽に落ちる軌道に廃棄した。船の第2エンジンは壊れたままだが、それ以外の損傷は軽く、航行・戦闘に支障はない。ワープも可能だ。

 <ネオ=マルス>のパラドックス本部で見た星は“パンゲア星”と判明した。

 太陽系からの距離790光年。地球連邦所属の移民星、正確には惑星ではなく木星型惑星の衛星。この星には数億ものパンゲア星人がいたが、約2000年前に絶滅している。正確には、ある日忽然と姿を消してしまった。戦争によるものと考えられているが、真相は未だ不明のままである。

 パラドックス副首領デコラスの乗艦をワープトレーサーで解析できなかったが、向かった大凡の方角は掴めており、それはパンゲア星のある方角と一致していた。

 美理は最後列のソファですうすうと眠っている。

 よほど疲れたのか救出されて安心したのか。誰かがソファを倒してベッドにして、ふとんをかけている。

 その寝顔を愛おしく見ていた明は仲間の視線を感じてバツが悪そうに言った。

「行くぞ!」

 姿勢制御ノズルを噴射し<フロンティア号>は方向を変える。

 速度を上げ、ワープへ。

 デコラスの乗艦=地球連邦の正式戦艦は速度が遅いが、パワーがあり長距離ワープが可能だ。だが計算では三回のワープで追いつくことが可能だった。


 一回目のワープ終了。

 次のワープまで時間があるため(連続ワープは船体に負担が強く極力避けた方がいい)、

 美理を起こして食事を摂らせ、そのまま食堂で明・ピンニョ・ヨキはだべっていた。

 啓作が食堂に入って来る。思いつめた表情で美理の前に立つ。

「美理・・」

「な、何?」

「・・”聖なる血”についてお前に話しておきたい事がある。みんな、席を外してくれるか」 

 その真剣な表情に圧倒され、明たちは黙って席を立つ。

「明、やっぱりお前はいてくれ」

 三人になる。

「・・・・」無言の三人。

「やっぱ俺出て行こうか?」

「・・いや・・いてくれた方がいい・・」

「兄さんは“聖なる血”の意味を知っているの?(そうだ。捕まった時に「お前は自分の出生の事を知らないのか?」とデコラスに訊かれた)」もちろん知る由もない。

「・・美理、お前がなぜ狙われたのか?・・よりパンゲア星人に近いからだ。・・お前の血液は、いや俺たちの体はDNAは普通の地球人とは異なる所がある」

「え?」

 啓作は話しつらそうだったが、言葉を続ける。

「俺たちの母さんは・・異星人、未だ銀河連合とコンタクトの無い未知の星の人間だった」 

「!!・・何を言っているの?・・・冗談よね?」 

 啓作は黙って首を横に振り、話を続ける。美理から笑みが消えた。

「今から20年前―地球連邦のパトロール船が漂流していた宇宙船を発見した。

 船には攻撃を受けた跡があり、中に地球人型(ヒューマノイド)の異星人の親子がいた。

 母親はエレーヌという名前以外の記憶を失っており、男の子はまだ幼かった」

「エレーヌ・・おかあさん・・」

 美理はまだ信じられない表情だが、黙って兄の話を聞いている。明は何も言えない。

「パトロール船船長・流啓三はこの事を上層部に報告せず、親子の面倒をみた」

「親父さん、軍人だったんだろ?」やっと明が口をひらく。

「勿論軍規違反だ。腐りきった地球連邦を嫌っていた。いろいろと問題起こしていたみたいで、あまり出世できていない。で、その幼い男の子が俺だ。やがて啓三とエレーヌは結婚。美理、お前が生まれた」

「そんな・・じゃあ兄さんは・・」

「俺は異星人だ」

「わ、私は・・・」

「異星人との混血だ」

「うそよ!そんなの、信じない!」

 美理は部屋を飛び出す。

 明はふたりを見比べ、後を追う。

 美理はカーゴルームへのらせん階段の途中で座り込んでいた。背中が震えている。

「美理・・さん」明はとなりに座る。 

「・・・」

 泣き顔の美理も美しい、でも笑顔の方が似合うと明は思った。 

「ヨキやマーチン、移民星人も異星人みたいなもんだ。ボッケンも・・いやあいつは馬か。異星人同士の混血は・・あまりいないけど、俺は幸運な事だと思う。異なった星の二人が出会う奇跡、新しい命が生まれる奇跡・・(何言ってんだ俺)」うまく言えない。

「・・・」

「(ええい)・・俺の夢に君そっくりの女の子が出てくるんだ」 

「え?」

 美理は明を見る。 

「初めて会った時、その子が本当に現われたのかと思った。でもそれは、俺の失われた記憶だった」

 二人で階段に座り、明は自分の話をする。

 約500年前の“恐怖の大王“を体験したこと。冷凍睡眠から目覚めたこと。最近(つい数日前だ)その事を知ったこと。そして麻美子のこと。

 それは美理の興味を引き、高ぶった感情を静めていった。後は時間が解決してくれるのかもしれない。

「明さんが少し変わった気がしたのは、記憶が戻ったからなんですね。・・そんなに似てます?私」

「そっくりだよ。双子みたい。写真か何かあればいいんだが」

「母も今の私とよく似ていたみたいです・・ふう」美理はため息をついて、

「ありがとうございます。少し落ち着きました。あのバカ兄貴、いきなりこんな大事な話するんだもん。・・おかあさん、とっても優しかったの。大好き。それは今も変わらない。たとえ異星人でも。それに・・私より兄さんの方がずっと辛かったと思う」


 二回目のワープの時間になった。

 <フロンティア号>コクピットに明と美理が入って来る。既に他のメンバーは席に着いていた。明は主操縦席、美理は最後尾のソファに着く。

 美理は始終無言、啓作と目が合うと視線を逸らしてしまう。もう怒ってはいないがバツが悪そう。

 啓作は頬を掻きながら明に礼を言う。

「ありがとな。俺が親父からさっきの話を聞いたのは16歳の時だった。ショックだったよ。その翌日、親父は出航し行方不明になった」 

「パンゲア星がお前の故郷じゃないんだな?」

「違う。パンゲア星人は俺たちとも地球人とも異なるヒューマノイドだったらしい。高度な文明を持ちながら、地球の古代マヤのような生贄の風習があったようだ。“聖なる血”とは生贄に適した血液の事らしい」

「生贄・・」

「読めてきた。デコラスは、奴らの目的は・・・」

「お二人さん。準備OKだよ。・・後で教えてね」

 マーチンの言葉にうなずき、明は叫ぶ。

「ワープ!」

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