ネオ=マルス⑤
洋館二階。
指令室の扉の前には数人のパラドックス兵が倒れていた。
明と啓作はその扉の前に立つ。
明が時計の表示を見る。ここだ。啓作がうなずく。
中では、首領リッターブーンが真剣な表情で悩んでいた。
「・・・そうだ!“聖なる乙女”でもパンツ見る位なら・・」
手が美理のスカートに!
扉が開き・・・光が差す。
うなだれていた美理が顔を上げる。
「・・・!!」涙が溢れる。
明と啓作が立っていた。
「何をしている(怒)」
「え?あ、これは・・その・・ええい!動くな!動けばこの娘は・」ちなみに丸腰である。
ふたりは銃を構え、撃つ。
リッターブーンの腹部に命中。倒れる。(パラライザーなのだが)
「お前ら、二人で汚いぞ・・まあいい、私は頭だけでも生きられるサイボーグなのだ」
「!!」
首を分離するリッター。プロペラが生えて飛ぶ・・ ブ~ン。
「それが・・どうした~!!」
明がオーバーヘッドキック!
「ぎえ~~~~」
部屋の端まで吹っ飛ぶリッターブーン(の首)。
啓作は美理に駆け寄る。腕輪の拘束具を外す。
「もう大丈夫だ」
「兄さん!兄さん!」
抱き合う二人。
明はそれを見つめる。嬉しそう。
美理が明に気付く。抱きついて来る。
「無事だったんですね。よかった」美理の涙が光る。
「(胸・・当たってる・・黙っとこ)」照れる明。「(・・・泣いてる?)」
「よかった・・本当に・・」
「ありがとう」
明は美理を抱きしめ・・ようとして、啓作の視線を感じて止める。
その時だった。
「オ~ン!・・ウヒヒヒヒヒヒ・・・」
三人は笑い声の方を見る。
リッターブーンの首は巨大な“装置“に合体していた。その目が光る。
「これでこの<ネオ=マルス>は私が掌握した」
機械が不気味に唸る。震動。警報が鳴り響く。
一方、<フロンティア号>のピンニョとシャーロットも異変を感じていた。
<ネオ=マルス>が動いている。
ノズルを噴射して旋回。地球の方を向く。
「何が起こっている?」
異常は地球・赤道上の人工大陸<ラ・ムー>の地球連邦司令部も察知していた。
地球および月面基地から艦隊が緊急発進。<ネオ=マルス>壱号基と参号基も起動、臨戦態勢をとる。
リッターブーンが笑う。
「ウヒヒヒ・・巨大光子砲を地球に撃ち込む事も出来るのだ」
「何のためにそんな事を!」
「何の・・あれ?何でだろ?・・・まあいい。・・地球の運命は吾輩の手の中にある」
「あのね、自分の立場わかってる?」啓作が尋ねる。
「ん?」
「いくら無敵の要塞でも、俺達が心臓部にいるんだよ」
「んん?」
「ここで貴様を倒せば・・」
「あれ?あれれ?・・・やれるもんならやってみろ!」
「よっしゃ」
背後に立った明がアッパーカットを叩きこむ!
「ぎえ~~~~~~」
機械との結合チューブがちぎれ、吹っ飛ぶリッターブーン(の首)。
<ネオ=マルス>は何事もなかったかの様に停止した。
バタバタと来る人影。パラドックス兵ではなく<銀河パトロール>だ。
ボッケンは刀をしまう。周囲には数十人の敵兵が気絶していた。マーチンと顔を見合わせ、
「逃げよ」走り去る。
ふたりは洋館一階で疲れ果てて座り込んでいたヨキと合流。
「勝てた?」
マーチンの尋ねに、ヨキはVサインで答える。
「奴はどこ?」
「何言ってる?ここに・・・あれ?」
デコラスは忽然と姿を消していた。
震動。
それはパラドックス艦隊旗艦が<ネオ=マルス>より発進した震動だった。
この艦は寄港直後で点検整備中だったため、グレイの偽情報による海賊討伐の出撃を免れていた。その艦橋にデコラスはテレポートしていた。美理の血液の入った鞄を持って。その頭にはでっかいたんこぶが出来ている。
艦はワープして消える。
「ワープトレーサー失敗。追えませんでした」
<フロンティア号>のシャーロットからの通信だ。(彼女の名誉のため補足すると、失敗は偽装スクリーンのせいである)
「(デコラスに)逃げられた」悔しがる啓作。「どうする?明・・明?」
明は無言で窓の外を眺めていた。
その視線の先には地球。
自然と涙が溢れてくる。美理もその涙に気付く。
「明!」
啓作の声に明は我に返る。涙をぬぐう。今は懐かしんでいる時ではない。
「おまたせ」ボッケン達が合流する。
明はリッターブーンに詰め寄った。
「答えろ!奴は何をしようとしている?」
首領なんだから何らかの情報を知っている筈だった。・・でも気絶していてダメ。
「私の血液を“聖なる血”と言っていた」
「何だよ、それ」
「・・・」啓作は無言のまま。
「良からぬ事を企んでいるのは間違いないよ。追いかけよう」
「だが何処へ?」
「多分、ここ」ボッケンがモニターを指す。
惑星が映っている。青い海と赤い大陸の惑星だ。
階段を上る音。<銀河パトロール>が<パラドックス>司令室の近くまで来ていた。
「ずらかるぞ!」
「まかせて」
ヨキのESPは回復していた。
<フロンティア号>コクピットへテレポート。
各々の席に着く。美理は後部ソファに。
「発進!デコラスを追う!」
偽装スクリーンを解除する。エンジン噴射。
<フロンティア号>は<ネオ=マルス>より離れる。
<ネオ=マルス>のバリアーは回復していたが、中から外へ出るのには働かない。
さらに加速。
ふたたび宇宙の彼方へ・・・




