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スペースマン  作者: 本山なお
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ネオ=マルス②

明はこの殴り込みに際して「強制はしない。自由に降りてくれていい」と仲間たちに言っていた。だが船を降りる者は誰もいなかった。

ちょっとドジだが一生懸命で笑顔が可愛い美理。彼女を助けたい気持ちは皆一緒だった。

「何か知らんが、艦隊が海王星方面へ急行している。今がチャンスだぞ」

<ネオ=マルス>に向かう時、明は躊躇した。手が震える。

「(くそっ。怖いのか?・・俺はスペースレーサーじゃなかった。そんな俺にできるのか?こいつらの命をあずかれるのか?)」

「肩の力を抜け。お前の腕は本物だよ。大丈夫だ。俺たちならやれる。明、自分を信じろ」

啓作の励ましが無ければくじけていたかもしれなかった。


「・・・・」

 スクリーンを睨んでいた明は深呼吸し振り向く。

「行くぞ!」

 シャーロット以外のメンバーが接舷したスペースポートに立つ。

 いつものスペーススーツ。視界を遮るヘルメットは被っていないが、頭部は透明なパーソナルバリアーで覆われている。これは空気は通す(呼吸できる)のに真空でも空気は抜けない魔法の膜で、短時間なら宇宙空間でも生存できる。防弾効果も多少ある。

 パラドックス本部。

 モニターには明たちの姿が映し出されていた。

「生きてた。みんな・・生きていた!」

 美理の目には涙が溢れていた。先程の涙とは違う、暖かいうれし涙。

 そのモニター。啓作がライフルを構える。映像が消える。

 歯ぎしりしながらリッターブーンが命令する。

「生かして帰すな!」


「行ってきまーす」ピンニョが飛び立つ。

 瞬く間に見えなくなる。

 猛スピードで通路を飛ぶ。ステルス能力は使っていない。

 侵入者迎撃用の対人レーザーが次々に発射される。基本的に“真理女“の防衛システムと同じだが、これには殺傷能力があった。

 しかしレーザーは空を切るばかりで当たらない。 

 彼女の役目は偵察と陽動だ。

 やがてレーザーが発射されなくなる。

「対人レーザー無効化成功」シャーロットから連絡が入る。

「よし!行くぞ!」明たちはピンニョとは別の通路へ。

 <ネオ=マルス>は直径2km全長20kmのシリンダー型(島3号と同じ)と内径1kmのトーラス型(ドーナツ型)の複合型スペースコロニーを改造した宇宙要塞である。

 反重力理論による人工重力が開発される以前は遠心力による人工重力が生じていた。

 前者内部は兵器化(光子砲)されており、後者は有事避難用として残されていた。

 明たちの目的地・パラドックス本部はシリンダー型の先端、巨大なドームの中に造られた高級住宅リゾートの中にあった。

 <ネオ=マルス>内の通路は広い。戦車も通れそうだ。

 ある通路では十人程のパラドックス兵が待ち構えていた。

 ハンドレーダーを見ながら、「目標接近!あと30m・・20・・10・・5・・・-1・・-5・・?」

 何も現れない。

「目標ロスト!」

「ハッキングだ!レーダーの情報はでたらめです!」

「どこにも反応ありません!」

「馬鹿者!よく探せ!」

 ハッキングによる偽位置情報表示を解除したものの、<パラドックス>本部は明たちを見失っていた。再度ハッキングしてもいいが、こちらの位置を捕まれる可能性があった。対人レーザーの方は依然無効化されたままだ。 

 五人は走る。

 明たちは通常の通路を避け、グレイの指示した抜け道をひた走る。

 傷の癒えぬ明はボッケンの背に乗っている。

 ハッチを開け、広い通路に出る。

「D666エリアに反応!兵を向かわせます!」

「奴ら、なぜこうも<ネオ=マルス>の内部構造に詳しいのだ?」

 デコラスにもその理由は分からなかった。

 啓作はライフルを撃ち、敵兵を気絶させる。続けて、監視カメラを破壊。

 別の監視カメラをヨキが脳波誘導ブーメランで破壊する。適当に投げても、自在にコントロールできる便利な武器だ。命中すると電気が流れる仕組みだ。明たちと出会う前、ヨキはこれと電磁網で昆虫採集、じゃなくてベムハンターをしていた。

 警報が鳴り響く。

「ほぼ無人の宇宙ステーションじゃなかったのかよ」

「連邦の兵士じゃない!情報通り、このエリアは<パラドックス>の巣だ」

「じゃあ。連邦の軍事基地の中に勝手にアジト作っていたって事?」 

 ばらばらと押し寄せる敵兵。

 すかさず明が銃を構える。早撃ち。敵兵は残らず倒れる。 

「そうみたいだな」腕は落ちてはいない。

「まるでシロアリ」ヨキが呆れる。

「連邦の正規軍と見分けがつかん。とりあえずパラライザー使っとけ!」

「もうやってる!」

 マーチンはビームマシンガン(麻酔弾)を撃ちまくる。 

 ボッケンはみね打ちで敵兵を倒し、一行は奥へ奥へと進む。

「こっちだ!」

 明は腕時計を見て指さす。グレイに感謝してもしきれない。

 一方、パラドックス本部。

 報告を受けたリッターブーンは唸っていた。

「何て連中だ。たった一人の娘のために、この<ネオ=マルス>に殴り込むとは・・」

 無言の美理。リッターブーンは続ける。 

「だが・・見ろ」

 スクリーンが切り替わる。

 巡洋艦の砲撃。ダミーのフロンティア号に命中。爆発。

「<フロンティア号>撃墜!」歓声が上がる。

 兵の報告に、美理は肩を落としうなだれる。

「これで奴らの帰る所は無くなった。後はこの基地でしらみ潰しにしてやる」 

「目標・再びロスト!」

「首領。奴らの目標はここです。居住区の手前・D969エリアに兵を集中させましょう。」

 デコラスの提案にリッターブーンはうなずく。

 一方、貨物船に偽装した本物の<フロンティア号>では、

「ただいまー」ピンニョが帰って来た。

「おかえりー。お茶にしようか」

 シャーロットとふたりでティータイム。


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