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スペースマン  作者: 本山なお
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スはスペースマンのス①

 

 第1章  スはスペースマンのス


「!」

 目が覚める弓月明。

 自由貿易宇宙船<フロンティア号>居室。自分のベッドの中。夢だった。

「またか」

 ぼさぼさの頭を掻く。同室のボッケンは当番で部屋にはいない。

 地球人。20歳。元スペースレーサー。2年半前の事故で引退し、今は運び屋<スペースマン>のチームリーダー。この時代の地球人としては小柄。イケメンではないがブサイクでもない。こげ茶色の髪で片目を隠しているが、不思議と操縦の邪魔にならない。操縦技術は今も現役レーサー並。動体視力に優れ、格闘技や銃剣の扱いにも長けている。

 彼らの船であり家でもある<フロンティア号>は全長88m、大気圏内飛行はおろか潜水航行も可能な汎用宇宙船だ。そのフォルムはデルタ翼の航空機に近い。

 コクピットは航空機の操縦室に当たる場所にある。長距離ワープ可能なメインエンジンとその下に一基、両翼に各一基、計三基のサブエンジン。他に姿勢制御ノズルを多数装備し垂直離着陸可能。流線形の機体の上部には、無理矢理くっつけた様な無骨なプロトン砲があり、サブコクピットと垂直尾翼が収納されている。

 重力や空気をはじめ船内の生活環境は地球と変わりない。

『ルリウス星接近!大気圏突入まで10分!』

 その声に明は飛び起きる。1Gの人工重力下、狭い通路を通ってコクピットへ。

「遅いぞ」

 副操縦兼機関制御席のマーチン。

 移民星ブウ出身。18歳。若いがメカニックのプロである。身長より腹囲が大きいのではと思える太っちょ。趣味は食べる事。経理も担当して節約に厳しいが、エンゲル係数は高い。常に遮光性の特殊バイザーを付けていて、乙女チックな目を隠している。特殊能力あり。

「またあの夢をみたの?」

 通信席のシャーロット=クイーン。現在宇宙港と通信中。

 地球出身。21歳。長い金髪と緑の瞳の美女。元ピアニスト。ワーププログラミングとデータ解析のプロである。名家出身で姉御肌。スタイル抜群。残念ながら彼氏あり。

「啓作。大丈夫なのか?こいつ」

 レーダー席のヨキ。

 移民星ミルキン出身。12歳。元ベムハンター(宇宙生物捕獲者)。マーチンとは逆にやせ気味の小柄な少年。美少年ではない。愛嬌のある顔。賢いように見えないが、頭は悪くない。短い髪を後ろに束ねたポニーテールいやチョンマゲヘア。今はレーダーを担当しているが、通信や戦闘もこなす。特殊能力あり。

「医学的には問題ない。おかしいのはいつもの事だ」

 主戦闘席の流啓作。

 移民星ルリウス出身。21歳。医師。17歳で医科大学を卒業した天才。コンピューター顔負けの知識があり、熱血漢な明と対照的に冷静沈着、チームの参謀役である。明より背は高く足も長い。銃の名手で特に長距離射撃は星間オリンピック選手クラス。操縦・戦闘・索敵何でもこなすが、通信は嫌い。シャーロットの彼氏。

 クルーとして他にボッケンとピンニョがいるが、積荷の点検中で今はコクピットにいない。このふたり以外のクルーは共通の銀色のスペーススーツを着用している。スーツの模様とラインの色のみ各人で異なり、明が赤、啓作が青、マーチンが黄、シャーロットがオレンジ、ヨキが紫となっている。

「もう時間ないぞ」ヨキが急かす。

 明は空いている主操縦席に座る。目の前に青い星。操縦桿を握る。

「大気圏突入」

<フロンティア号>はオレンジの炎を上げながら降下していく。


 青空を横切る流星。

「あ・・」

 窓の外を見ていた少女・流美理は思わず声を出していた。啓作の妹。

 16歳。陽の光を浴びて輝くセミロングの髪。こげ茶混じりの黒髪に白いカチューシャが眩しい。兄に似てないが整った顔立ち。大きな瞳。まだ幼さがあり、美人というより可愛いという言葉が似合う。

 美理はハッとして前を見る。教室の中。宇宙史の授業中。やばい。

「え~旧暦1999年に落下した“恐怖の大王”と呼ばれる隕石により、地球の地軸は曲がり、舞い上がった噴煙により太陽光は遮られ、地球は氷河期に突入した」

 髭を生やした初老の教師は教室内を歩きながら講義中。

 黒板は3D、各生徒の机に透明なディスプレイがある以外は昔の教室と大差ない。

 美理は再び空を眺める。

「やがて人類はワープ航法を発明し、宇宙に進出して行く。銀河移民時代。え~異星人との接触から<銀河連合>の存在を知り・・・」チラと美理の方を見る。

「流。<地球連邦>が<銀河連合>に加盟したのは宇宙暦何年だ?」当てられた。

「は、はいっ。333年です」

「憶えやすい年でよかったな」

 教室は笑いに包まれる。 

「さてこの“ルリウス”に移民が始まったのは・・」

 いつの間にか空は曇り・・・

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