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スペースマン  作者: 本山なお
14/30

強襲③

「!」

 小型艇に<フロンティア号>から緊急通信が入る。

 高出力で発信されたため届いたようだ。内容は敵の妨害で確認できないが、非常事態に違いない。

「離陸する」

 いつの間にか雲が出て、月が二つとも隠れていた。辺りは真っ暗だ。

「!!」

 突如明と美理の前にデコラスは現れた。

 小型艇には<フロンティア号>と違い、エスパーによる攻撃を防ぐ“対ESPシールド”が無い。テレパシーで存在を探知されたのだ。

 明は小型艇の機銃を発射。暗闇のジャングルに銃声が轟く。

 命中・・する前にデコラスは消えていた。どこへ?

 危険を感じ、明は美理を抱いて脱出する。

 次の瞬間、キャノピーが粉々に吹っ飛ぶ。そして爆発。

 ふたりが着地する。

 闇の中、轟々と燃え上がる小型艇。立ち塞がるデコラスの姿が不気味に浮かび上がる。

 明は美理を後ろに下がらせ銃を撃つ。

 パラライザーの赤いビームはバリアーに阻まれる。 

「エスパーか!」

 デコラスは右手をかざす。 光。

 バシッツ!

 明が衝撃波で吹っ飛ぶ。

 ジャングルがクッションになる。それでもかなりの衝撃だ。 

「ふん。」

 デコラスはゆっくりと美理へ近づく。 

 明は銃を構え直し、撃つ。

 やはりバリアーに阻まれ効果なし。銃のパワーを上げる。

 デコラスは明を睨む。その目が光る。

 明は飛び退き、衝撃波を避ける。当たった巨木が倒れる。

 反撃!これまでと違い銃の反動が強い。パワードスーツの装甲も貫くフルパワーだ。

 デコラスはバリアーを張るが、衝撃でよろめく。

 明は走りながらデコラスの攻撃を避け、発砲する。一発二発三発・・。

 全て同じ一点に命中。

 バリアーが破られる事はなかったが、衝撃でデコラスは膝をつく。 

「くっ・・大した腕だ。だが・・見よ。」

 ホログラフ投影。氷漬けのフロンティア号が映し出される。

「!!」 

「仲間を助けたくはないのか?」 

 悲壮な表情の美理。

「わたしは・・」

「ダメだ!」明の声。

 美理はその声の方を見る。

「・・・助けるつもりなど無いくせに!」

 明は顔を上げ、デコラスを睨む。怒りで震えている。

「あいつらなら自力で脱出する」

 明は銃をデコラスに向ける。

 その銃口の先、デコラスが微笑む。

「!」

 危険を察知した明は素早くその場を飛び退く。

 間一髪。巨大な岩が明のいた場所に落下。

「当たりい。」デコラスが笑う。「よく避けたな。だが、こいつはどうかな?」

「!」

 明はその異変に気付いた。

 揺らめく炎に映し出されたのは、無数の影。

 砂粒からソフトボール大まで、様々の大きさの石がデコラスの周囲に浮かんでいた。

「脱出など出来ぬ。貴様らも仲間達も。」

 石が一斉に飛ぶ。それらは散弾銃のようにふたりを襲った。

 スペーススーツは宇宙ゴミ(デブリ)の直撃にも耐えられる。だが美理は普通の服だ。

 明はデコラスに背を向け、美理を抱きしめる。背を丸め、頭部の被弾を減らす。

「あ・・」

 少女は抱きすくめられ驚く。だがすぐに守られたことを悟った。

 明の背中に無数の弾が当たる。

 衝撃に耐える。弾が当たった頭部から血が流れる。

 弾丸が止んだ瞬間、明は振り向き、反撃。フルパワーで銃を撃つ。

 ・・ビームは空中で止まる。先程のバリアーではない、サイコキネシス。

「お返ししよう。」

 ビームが反転、明の方へ。

 避ければ美理に当たる。明は銃を離す。

 ビームは銃身に。銃が爆発。明は吹っ飛び倒れる。

「きゃあ!」美理の悲鳴。

 明は立ち上がる。

 防弾に優れるスペーススーツの腹部が裂け、大量の血が流れ落ちる。頭を守った両腕も負傷している。それでもデコラスを睨む。

「ふん。」

 容赦ない衝撃波攻撃が明を襲う。

 ビシッ!裂けたスペーススーツの防弾効果は落ちている。衝撃波がモロに体を直撃。

 明は倒れる。口から血を吐く。肋骨が折れ、左腕の感覚がない。

 明は立ち上がる。右手で剣を抜く。ビームブレード・光線剣だ。 

 ドシュ!再び衝撃波を浴び、なす術も無く打ちのめされる。

「もう・・やめて」美理は泣きながら呟いていた。

 それでもなお明は立ち上がる。もはや気力だけで立っていた。

 デコラスはまた無数の石を宙に浮かべていた。 

「死ね。」明を指差す。

 無数の石が一斉に明の方へ。

「だめっ!」

 美理は明をかばい、その前に立つ。

 考える前に体が動いていた。弾丸が当たればただでは済まない。

 ・・何も・・起こらない。

 恐る恐る目を開ける。

 石は目の前で止まっていた。 一瞬の後、それらは地面に落ちる。

 美理の膝がガクガクと震え出す。でも言わなくちゃ。精一杯の声を絞り出す。

「やめて!目的は私でしょ?私は投降します。でもみんなを殺すなら自害します」 

「だ、だめだ!」

 バチッ!明は叫ぶ間もなく衝撃波で吹っ飛ぶ。

 倒れて・・もう動かない。

 美理に自殺する気は毛頭ない。命の大切さは兄から父母から教わっている。だが自分にできる事はこれしかない。彼女なりの命懸けの駆け引き。もちろんデコラスに通用する保証は無い。

「“聖なる血”をもらえば用は済むのだが、本体があった方がいいか・・取引に応じよう。」  

 美理は明の元に駆け寄り、膝枕する。ハンカチでそっと額の血をふく。

「ありがとう。もう十分です・・・ごめんなさい」

 明の頬に美理の涙が落ちる。

「麻美子・・」明が呟く。

「?」

 明はそのまま意識を失う。

 焦る美理の腕をデコラスが掴む。

「お前は出生の事を何も知らないのか?」

「え?」

 テレポート。二人が消える。

 支えを失い、明の頭は地面に落ちる。

 その顔に水滴が。一滴・二滴三滴・・・。

 雨が明の体を濡らしていく。血が流れる。

 雨は小型艇の炎を消し、辺りは闇と化す。

 デコラスは美理を連れ、旗艦艦橋に現れる。

「撤収する。」

 上昇していく旗艦。残りの艦は待機したままだ。

 デコラスが命令する。

「跡形もなく消滅させろ!」

「うそつきっ!」

 美理の叫びが艦橋に響いた。


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