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スペースマン  作者: 本山なお
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強襲①

 第3章  強襲


 星間犯罪結社<パラドックス>の宇宙艦隊はアクア星系を捜索していた。

 その数は、戦艦1・巡洋艦3・,駆逐艦7隻、艦載機は数えきれない。

 中でも一際巨大な旗艦、その艦橋。

 クラシック音楽が流れる中、マント付きの軍服姿の男が明達<スペースマン>の資料を読んでいた。広いデコがトレードマーク、パラドックス副首領デコラスである。

「・・我々のパワードスーツ一個小隊を行動不能に?過去にもギャングの息のかかった運び屋集団を壊滅?・・ほう、シェプーラがいるのか。希少種だな。こいつは生け捕りにするか。しかし・・こいつら本当に運び屋なのか?」

「副首領、報告します。アクア第2惑星にて、わが軍の戦闘機が発信機を積んだ無人機を発見。これを捕獲しました。奴らの偵察機のようです・・第2惑星に向かいますか?」

「いや。このままローラー作戦で星系全域を捜索しろ。」


 青い恒星アクア。その第6惑星。

 <フロンティア号>はその海中に潜伏していた。

 明は後悔していた。

 自分の夢の少女と美理が似ている事を、うっかり喋ってしまった。  

 案の定くいつく奴ら。コクピットには啓作と美理以外のクルーが集まっていた。

「夢に出てくる女の子に似てる?」ヨキが聞き返す。

「それはきっと運命の人だわ」シャーロットは目をキラキラさせながら計器を操作する。

「素敵、前世の恋人かもよ」うっとりするピンニョ。 

「応援するから夕飯少しくれ」マーチンは食べ物のことばかり。 

「・・・」ボッケンは何も言わず明の肩を叩く。 

「お前ら緊張感無さすぎ!敵が囮に引っかからないから、ここから逃げ出せないんだぞ」

 啓作が入って来る。すかさずヨキが事情説明。おせっかいめ。

「そうか。・・だが少なくとも前世は関係ないな」

「何でだよ」

 啓作は答えず、明に何か話をする。プランBについてだ。

「いいのか?それで。お前の方が・・」

「美理には話をしておいた。頼む」


 <パラドックス>はアクア星系の惑星・準惑星・小惑星をくまなく捜索。その範囲を潜伏している確率の最も高い第6惑星に絞っていた。

 敵の包囲網に対し、<フロンティア号>はエンジン始動し“ステルスバリアー”を張った。

 これは光学迷彩だけでなく音、金属探知、熱反応、生体反応も遮断する。だがその使用時間には限界があった。

 雲の中を低速飛行する<フロンティア号>に敵戦闘機が接近する。

「<フロンティア号>発見!」 

 攻撃・・・消える機体。 手掌大の超小型機によるホログラフだった。

 副首領デコラスは旗艦のキャプテンシートに座ってその映像を眺めていた。

「ダミーか。ふん。これでこの惑星にいる確率が上がった。それにしても不細工な船だ」

 一方海中の本物の<フロンティア号>では、

「ったくしつこい連中だ」ヨキが呆れる。 

「<銀河パトロール>への連絡は?」

 啓作の尋ねに、通信席でデータ解析中のシャーロットが答える。

「第2惑星の囮船から8時間救難信号発信していたけど・・(破壊された)」

「しいっ!上空、敵機通過!」

 レーダーには映っていないが、ボッケンの視力聴力は時に機械顔負けの力を発揮する。

 一同静かにする。

 ステルス偵察機が上空を飛び去る。今は夜、よく見えるもんだ。

「啓作。ステルスバリアーも、そろそろ限界だぞ」焦るマーチン。

 啓作は立ち上がり、号令をかける。 

「発進準備!第一級戦闘態勢!」

 クルーが席に着く。マーチンは主戦闘席に。ヨキは副戦闘席に。ピンニョも専用席に。そして啓作は主操縦席に。コクピットに緊張が走る。


 パラドックス旗艦・艦橋。

 そこは畳が敷かれ、デコラスが正座してお茶を飲んでいた。

「<フロンティア号>発見!」

 モニターに駆逐艦が攻撃している光景が映る。・・・消える機体。 

「またダミーです」 

 兵の報告に無言のデコラス。お茶をすする。

「星の反対側にエネルギー反応!」 

 朝日の中、海中より飛び出すパラドックスの駆逐艦の映像が映し出される。

「申し訳ありません。友軍でした」

「待て。」デコラスは少し考えて、「当てなくていい。そいつを攻撃しろ。」

 上昇して行く駆逐艦に向けて、無人戦闘機が接近、発砲。

 ビームは駆逐艦の傍を通過。

 その影響で映像が乱れる。ステルスバリアーとその上に投影されていたホログラフが解かれ、<フロンティア号>が現れる。

 デコラスは微笑む。そして命令する。

「追え!」

 <フロンティア号>は第6惑星から脱出を図る。 

 が、数十機の無人戦闘機に阻まれる。 

「頭を押さえられたか・・」啓作が舌打ちする。

 明は副操縦席、美理は後部入口脇のソファにいる。

 迎撃。機首のレーザー機銃と側面の防御用ホーミングレーザーを発射。

 敵戦闘機が次々と炎上。

 <フロンティア号>はその爆炎を通過する。

 敵駆逐艦が行く手に立ち塞がる。数隻が集結しつつ攻撃。

 ビームが機体上方を通過。

「前方の艦隊の他に旗艦らしき大型艦接近中!」ボッケンが叫ぶ。

 防御レーザーが敵戦闘機を次々撃墜。続いて、

「てぇ!」ヨキが発射ボタンを押す。

 機体に軽い衝撃。プロトン砲発射!

 ビームが敵駆逐艦を貫く。

 有人船への実弾攻撃は彼らのポリシーに反する行為だが、追い詰められては仕方がない。

 艦隊より攻撃。幾つものビームが<フロンティア号>を襲う。

 啓作が操縦桿を引く。

 避ける。明に勝るとも劣らない腕だ。

 駆逐艦が右舷より接近、並走する。発砲。

 避ける。

 プロトン砲が右に旋回。ヨキの副戦闘席は砲の旋回に連動し360度回転する。

 発射!

 駆逐艦に命中。大破はしないが墜落していく。

 そのはるか後方上空。パラドックス旗艦が主砲を発射!

 ビームは惑星の大気を引き裂いて接近。先程被弾した駆逐艦に命中。

「え?」

 爆発!衝撃と破片が来る。

「バリアー貫通!メインエンジンと第4エンジンに被弾!出力低下!」

 マーチンが懸命に制御する。予想外の攻撃だった。

「誤射?・・違う。味方を犠牲にして威力を見せつけたんだ」

「なんて卑劣な」

「・・・これまでの敵とは違う」啓作が呟く。

 さらに旗艦の砲撃が来る。

 ビームは<フロンティア号>の脇を通過。

 衝撃! 命中してはいないが、その破壊力は巡洋艦の比ではない。

「メインレーダー機能停止!5秒待って!」ボッケンの声も苦しい。

「くそお!」

 巡洋艦・駆逐艦の砲撃。

 衝撃。右翼に命中。

「第2エンジンに直撃!緊急停止!」

 マーチンがエンジンを切り爆発を防ぐ。

「落ちる・・・」浮遊感の後、Gがかかる。

 落下する<フロンティア号>。

 残る第3エンジンを噴射し落下を防ごうとするが、推力が足りない。

「重力遮断シールドを使え!」

「間に合わない!」

 衝撃。再攻撃を受け、<フロンティア号>は海へ着水。巨大な水柱が立ち上がる。

 デコラスが命令する。

「凍結弾発射!」 

 駆逐艦よりミサイル。それは<フロンティア号>に当たらず、着水。

「!!」 

 海が凍っていく。

 <フロンティア号>は左に90度近く傾いたまま動きを封じられた。

 パラドックス艦隊は獲物を狙うハゲタカの様にその上空を旋回している。

 啓作たちは誰も声を発することが出来なかった。

 メインモニターに男の映像が映る。強制介入通信だ。

『私はパラドックス副首領・デコラスだ。大人しく娘を渡せ!』


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