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スペースマン  作者: 本山なお
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パラドックス④

「バカヤロー!通信で探知されるってわからなかったのか!」

 啓作に怒鳴られる三人。

「ごめんなさい。私が・・」 

「すまん。俺が許可した・・ずらかるぞ!」

「ワーププログラミング出来てるぜ」

 敵の探知を予想しヨキはワープの準備をしていた。

 <フロンティア号>が急発進する。

 パラドックス艦隊が追う。攻撃!  

 ビームが来る。

 <フロンティア号>は避けずにさらに加速。そのままワープ。

 ワープアウト。暗い恒星間空間。

「あの艦隊はスピカ周辺からワープして来たみたいだよ。つまりどの道待ち伏せされていたって事」

 敵を解析していたピンニョが説明する。

「・・・」無言の啓作。

「やはり地球連邦の軍艦だった。同型艦じゃなくて正規軍の識別反応が出ていた。どういう事?」

 マーチンの言葉をかき消すように、再び鳴る警報。

 先程の<パラドックス>艦隊がワープアウトして来る。

「ワープトレーサー(追跡装置)の反応はなかったのに」ピンニョが不審がる。

 艦隊が攻撃を開始する。


 パラドックス艦隊旗艦・艦橋。

「たかが小型機一機、破壊するのは簡単だが、副首領の命令だ。例のプレゼントで敵が混乱したら、トラクタービームで拘束する」司令官がニヤリと笑う。 

 無人戦闘機が<フロンティア号>に迫る。

 防御レーザーで迎撃。次々と撃墜。

 3隻の駆逐艦が三方に展開、発砲。

 ビームとミサイルが来る。

 明は易々と避ける。

「やはりこっちを撃墜する気はないみたいだ」

「ホイ。出来た」

 シャーロットがワーププログラムを組む。流石にヨキより早い。

「閃光弾!」

 目くらまし爆雷を散布。

 眩い光が広がる。レーダーやワープトレーサーの妨害効果がある。

「ワープ!」


 <フロンティア号>は二連星の近くへワープアウトする。敵の追撃は無かった。

 居間。

 しゅんと座っている美理。隣には非番のボッケンとマーチンがいる。

「食べる?」マーチンがバナナを差し出す。 

 美理は首を横に振る。

 みんなを危険にさらしてしまった。自分が甘すぎたと落ち込んでいる。暗い。

「・・・・・」間。

 ボッケンとマーチンは「お前言えよ」とか言いながらツンツンやっている。

 ボッケンが意を決して、

「僕の刀は有機物を斬れないように出来るんだ。ルリウス星でパワードスーツの装甲は斬れたけどパイロットは無傷だったでしょ」 

「凄い!じゃあ料理に使ったら食材切れずにまな板切れるって事ですか?」美理は真剣だ。

「・・・はい。そうですう~」予想外の質問に、ボッケンはトホホの表情。

「みねうちって事ですよね?」  (“真理女”は護身術として武道を教えるのだ)

「知ってるんだ。うん、パラライザーの代わりだよ。無益な殺生はしたくない。でも生き残るために敵を殺さなきゃならない時もある。そこは覚悟しといてね」

 美理は黙って頷く。ボッケンは話を続ける。

「本当は、敵を悪者を殺さない事が正しいのかは分からない。助けた相手が後で犯罪を起こして犠牲者が出ないとも限らない。でもそいつが改心するかもしれない。兄きは・・あ、明の事ね・・自分には人の命を未来を絶つ権利は無いって言ってる」

「弱肉強食の宇宙じゃ甘いと思うけどな」とマーチン。

「そんな事ありません。素敵です」

 美理は「殺す」という言葉に反応していた。でも命を大事に思っているのが嬉しかった。

 銀河移民時代。銃の所持は自衛の面から自由だった。初期の移民星では昔の西部劇の様な街が作られることも多かった。だが銀河連合加盟後、異星人とのトラブルの原因にもなるため、銃は各移民星ごとに規制が決まっている。例えばルリウス星ではパラライザーのみ所持を認めていた。民間宇宙船の武装については、宇宙海賊の存在もあり、惑星内での武器使用は原則厳禁だが武装そのものの装備は自由だった。

 今度はマーチンが、「人工重力切ってみる?」

「え?そんな事・・できるの?」

「できまっさ」

 マーチンは壁のスイッチを動かす。照明のスイッチかと思っていた。

 美理は身体が軽くなるのを感じた。ボッケンが「どうぞ」と前足で合図。

 床を軽く蹴る。

「わあ♡」

 身体がふわりと空中へ浮かんだ。スカートじゃなくてよかった。

 この部屋だけ無重力状態になっていた。

 大きな家具は固定されていて動かなかったが、リモコンやお菓子やバナナが空中に浮く。バナナはお菓子に含まれない?

 美理は笑いながら空中を泳ぐ。ボッケンもマーチンも空中遊泳を楽しむ。

 再び警報が鳴る。

 パラドックス艦隊がワープアウト。

「ワープトレーサーじゃないな。トレーサーならもっと早く、しかもワープアウトポイントに来るはずだ」

 啓作が推理する。通信やレーダー波を使っての船へのウィルス感染は認められていない。

「て事は発信機?・・積荷か!」

 “ブラカ星ステーション”で土下座した会社員から預かった荷物。

 リストでは『特注のネジ』とある。監視モニターで異常は見られない。もちろん搬入時に厳密にチェックされていた。

「オレ見て来るよ」ヨキが駆け出す。

 ピンニョも続く。啓作がヨキに代わって副戦闘席に移る。

 カーゴルームでは、積荷が中から切り裂かれ穴が開いていた。

 何かが這い出た跡が・・・


 居間。

 マーチンはコクピットと通信中。人工重力は元に戻っている。

「了解した。カーゴには俺も行くよ」

 その足元。液体が流れて来る。 

「何だろう?拭かなきゃ」美理が雑巾を・・・

「触れちゃだめだ!」ボッケンが制する。 

 それは生き物の形になる。ドロドロのスライムの様なクラゲの様な生き物。

「きゃあ~」

「液状生命体?」

 ボッケンは美理を後ろにさがらせ、刀を抜く。


 ヨキは貨物室への通路を走る。先行するピンニョが何かを察知する。

「サソリ!いやサソリ型の小型ロボットだ!」

 全長は10cm程。生物を探知し襲うようプログラミングされている。

 ピンニョが羽根手裏剣を投げる。

 命中。サソリは火花を散らしネジの姿に変形し停止した。

 積み荷の正体だ。だがそれは一体だけではなかった。

 ヨキが恐る恐る見上げる。

「うわあ~」

 サソリ型ロボットが通路・壁・天井を埋め尽くしていた。

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