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sunny

作者: 柚
掲載日:2016/11/29

最悪。

一昨日から雨が続いてた。朝降って、帰りはやんでるというパターンだ。今朝も雨が降ってた。

一昨日から朝は傘を指して、帰りは忘れるのを繰り返していた。持って帰る傘はいつのまにか、今日持ってきたのをあわせて3本になった。

3本も持って帰るのは目立つし、大変だ。だから、お母さんが学校の近くまで迎えにきてくれる予定だった。そう、予定だった。さっきまでは現在進行形だったけど、今は過去形。

用事が入って迎えにこれなくなったらしい。

今日は金曜日。天気予報では月曜日も朝から雨。家にはもう、あたしの傘はない。休みの日にわざわざ、学校に取りに来るのも嫌だ。

腹をくくろう。仕方がないから目立って帰ろう。

でも、目立つのは最低限に抑えたい。せめて皆が帰るのを待とう。ウサギの定期入れを弄りながら、教室から人がいなくなるのを待ってた。

窓の外を見ると、朝の雨は嘘のように晴れていた。綺麗な夕日まで出ている。余計に目立つじゃないかと、夕日に少し苛立ちを覚える。

廊下を歩いて、玄関に行く。靴を履き替える。周りに人がいないか確かめる。

いた。最悪だ。でも···いや、やっぱり最悪だ。

いつもなら喜ぶかもしれない。同じクラスの三嶋君。女の子と話してるところは、あまり見たことがない。背が高めで、クールな感じの印象。見方によっては冷たそうにも見える。だからか、女の子達も積極的に彼に関わろうとはしない。彼もまた然り。

でも、あたしは知っている。彼の鞄に小さな、ウサギのストラップがついていることを。よく見えなかったが、確かにウサギだった。

あたしはそのギャップに衝撃を受け、そして同時に惹かれた。自分でも驚いた。え、これで好きになる?

そのウサギさんはいつもは、うまい具合に鞄の中に隠してある。

どうしよう。これは話ができる機会かな。いや、傘3本持ってるし。

なんて考えていたら、傘が手から落ちた。慌てて手を伸ばしたけど、届かなかった。

「傘、落としたよ。」

抑揚の少ない囁くようなが聞こえた。三嶋君だ。その声を発すると同時に、あたしを見た。そして、驚いた様な顔をした後に笑った。

「今朝、そんな凄い雨降ってた?」

傘を受けとりながら何とか答えた。

「あ、いや、そんな雨が凄かったから3本持ってる訳じゃなくて。」

「当ててあげよっか?」

クイズじゃあるまいし。と言うよりも早く、三嶋君が口を開いた。

「最近朝だけ降ってたから、帰りに持って帰るの忘れてたんだろ?」

「···正解。」

三嶋君って結構話しやすいな。というよりも、思ってたより怖くない。仲良くなれそうで嬉しい。

三嶋君が歩き出した。今度は何だと見ていたら、少し進んで振り返った。

「倉田、帰らないの?」

「え?帰るけど···」

「じゃあ折角だし、一緒に帰ろうよ。」

三嶋君は全然怖くない。でも、何か不思議な感じだ。いきなりクイズにして、しかも当ててくるし。

「傘、2本持つよ。」

「いいよ。悪いし。重いわけじゃないしね。」

「倉田、3本も持ってるの見られたくないから、皆が帰るの待ってたんでしょ?」

「···じゃあ、よろしくお願いします。」

三嶋君は探偵みたいだ。皆当てられる。悔しい。何か仕返ししてやりたい。

「三嶋君、鞄にウサギのストラップつけてるよね?」

「え、何で知ってるの?」

三嶋君が狼狽える。何だか勝った気分だ。

「いつもは鞄の中に入れてるでしょ?前に鞄から出てるの見えたんだ。」

三嶋君は下を向いて、小さな声でつぶやい呟いた。

「···ひく?」

今日は三嶋君が笑ってるのとか、驚いてるのとかみれて嬉しかった。仕返しにと思って、大丈夫だと思って言ってみたけど、でも何だかこれはやり過ぎた気がする。え、そんなに気にしながらつけてたのかな。慌てて手を振りながら答えた。

「ひかないよ。ただかわいいなって思って。」

三嶋君は顔を上げて、照れたように笑った。

「なんだ。良かった。」

あ、笑った。良かった。

「でも、偶然なんだよ。わざとじゃないんだ。」

三嶋君は、何の話をしているんだろう。

「かわいいなと思って買って、次の日に鞄につけていったら、倉田の鞄にも同じウサギのやつ、ついてんだもん。俺もびっくりした。」

あたしも今、びっくりしてる。口を挟む間もなく、三嶋君は続ける。

「で、鞄の中に入れてたんだよ。でも、鞄からとるのも何かもったいなくて」

だから、隠してた。と、三嶋君は笑った。同じウサギにもびっくりしたけど、あたしの定期入れを見ていたことにもびっくりした。

「あたしの定期入れなんて、よく気がついたね。」

「そりゃ、気づくよ。俺、倉田のこと好きだもん。」

三嶋君が夕日に照らされる。赤く見えるのは気のせいだろうか。多分、あたしの顔も同じ色になってるんだろうけど。

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