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パーティ結成

 帝国が原因となる戦争を何とかしたい。

 これも一応、俺の旅の目標の一つである。


 しかし、そうはいっても何とかするのは簡単ではない。

 もし革命を阻止してしまうと、帝国の侵略はそのまま続いてしまい、更に多くの国が被害を受けるだろう。そしてその内に他の大国と戦争に突入する筈だ。どちらにせよ大きな戦争が起こる。

 理想を言えば、是非とも革命を成功させて貰いたいかな。


 「ルナさん……本当に、こんなことが起こるんですか?」


 ルシアが震える声で聞いてきた。見れば三人とも少し顔が青ざめている。

 しまった、少し脅かし過ぎたか。


 「ま、まあ、あくまで俺が何もしなかった場合の話だよ。そもそもこれは帝国が十分な数の蓄魔器を持っていたらの話だからな。すぐに蓄魔器の事は精霊界に知れ渡るだろうから、帝国はこれ以上蓄魔器を手に入れる事は出来ない筈だ。だからまあ、大丈夫だって。俺達は既に、この未来とは別の道を進んでいるよ」


 俺は鉛のようになった空気を払うように手を振り、三人を安心させるように言った。

 これは別に嘘ではない。蓄魔器の事がバレ、手に入らなくなることは、帝国にとっては大きな痛手だろう。


 「そ、そうなのか……。あれ?でもまだ肝心の魔王国が出てきてないよな?」

 「ん?ああ、魔王国か。そっちはこの戦争が落ち着いてきた頃になって突然に王国に向かって侵攻を開始したんだ」


 俺は魔王国から王国に向けて侵略を表す矢印を書いた。その矢印はやや北側の戦争が酷かった辺りを通っている。彼等は戦争の被害につけこみ、西に進軍していった。


 「このとおり、戦争で疲弊した地域ばかりを通って王国まで進軍してきたんだ。まあ、ここらへんって既に半分崩壊してるような国ばかりだったから、魔族軍は簡単にこの地域を手に入れる事が出来たんだろうな。ほとんど無傷のような状態で王国までやって来たよ。……で、戦争になって、王国が負けて……俺がタイムリープしたってわけだ」


 これで俺が知っている事は全て話した。

 以上だよ、と言葉を切る。

 俺がそう言うと、ファーレが眉間にシワを寄せて質問してきた。まあ、この疑問は俺も絶対来ると予想してたけど。


 「帝国については納得したけど、魔王国が侵略なんて始めたのは何でなんだ? あそこは大国だけど、侵略なんかするような国じゃないだろ?」

 「そうなんだよな。それについては三年後の王国も訳が分からなくて、必死に原因を調べたらしい。使者も何度も送ったそうだ。でも、結局分からずじまいで終わったみたいだ」

 「ええ……?」

 「ただまあ、かなり不自然な侵略の仕方だったみたいではあるよ。『フェイリアワールド』のように大陸全てを支配するんじゃなくて、ひたすらに王国だけを狙ってたらしい。帝国にも獣王国にも目をくれず、途中で侵略した国の管理もおざなり。とにかく王国だけを狙って、どんな犠牲も厭わないようなやり方で攻めてきたんだとさ」

 「更に分からなくなった……」


 ファーレが頭を抱えた。

 王国と魔王国は大陸の反対側にあり、両者の関係は薄い。大きな犠牲を払ってまで魔王国が王国を侵略しなければならない理由など本当は無い筈なのだ。


 「まあそれは今どんなに考えた所で答えは出ないよ。……さて、取り敢えず俺からの話はこれでひとまず終わりだ。これで俺の旅の目的は分かって貰えたかと思う。……さて、と。それで、なんだけど……」



 取り敢えず話はここまで。

 俺は言葉を切り、真剣な表情を作って三人を見る。姿勢を正し、正面から彼等と向き合う。


 そして、出来るだけはっきりとした声で口を開いた。



 「改めて言わせて貰うよ。どうか、俺の旅に協力して欲しい。王国を……いや、それだけじゃなく他の国々も、そこに住む人々も、助けるために……頼む」


 ぐっと頭を下げる。

 既に契約しておいて今更な感じもするけど、色々と大変な事に彼等を巻き込んでしまうのだ。一つのケジメとして、こういう事はしっかりと。


 誰かがはっと息を呑んだのが分かった。前を見ていなくても、戸惑いが伝わってくる。


 「わわっ、ちょ、顔を上げてくださいよ、ルナさん!」

 「そうだね。そんな大変な事が起こるなら僕達にとっても無関係じゃない。もちろん協力するよ」

 「わ、私もです! 契約者に協力するのが、契約精霊の役割ですから!」

 「…………あの、」

 「姉ちゃん?」


 ファーレ、ルシアからはすぐに返事が返ってきたが、フィールが黙ってしまっている。青ざめた顔のまま俯き、目が泳いでいる。


 「どうしたのさ、姉ちゃん?」

 「話が難しすぎたんですか?」

 「ああ、それならもう一度説明するけど」


 「違うわよ! ……このままだと大きな戦争が起こるってのはよく分かったわ。でも……ルナの能力はあたし達以外の人に情報を伝えられないんでしょ? あたし達四人だけで、本当に戦争を止められるのかなって……」

 「それは……」

 「もし失敗したら、大勢の人が死ぬのよね?それってかなり、責任重大なんじゃない?」


 意外なことに、フィールも色々と考えていたようだ。まあ気持ちは分かる。たった四人で戦争を止めるなんて、普通は不可能に等しい無茶な事だ。しかも結果によっては、大勢の人々の命を左右してしまう。突然こんな大きな話をされれば、それは戸惑うだろう。



 ……しかし幾つか、認識が間違ってるぞ、フィール。



 「ん~、まあ確かに、四人で戦争を止めるのは非常に難しい事だよ。夢物語って言ってもいいかもしれない。……でも、『タイムリープ』にはその夢物語さえも実現させてしまえるような力があると思う。諦めさえしなければ何度でも挑戦できるんだから」


 「それはそうかもしれないけど……。でも、何度挑戦しても出来ない事ってあるでしょ?」


 「まあな。いくらタイムリープを使った所で、全てを丸く収めるのは絶対に不可能だ。どこかで何かを切り捨てて、妥協点を探さないといけない。さっきの話についても戦争を止められるかっていうより、被害を減らせるかっていう方が正しいよ。被害ゼロなんてのはあり得ない。……でも逆に、多かれ少なかれ被害を減らせるのも確かだろ? 成功も失敗もない。精一杯やれば、いつか納得出来る結果に辿り着けるよ」


 「…………」


 「責任重大ってのも少し違う。別にタイムリープを持っているからって、人を救う義務や責任が発生するわけでもない。もっと単純に、自分が救いたいと思えば手を差しのべれば、それでいい筈だ」


 実はこれ、レイナからの受け売りだけど、タイムリープの能力者にとってはここらへんの区切りはけっこう大切な事だと思う。



 「そう……。う~ん、それなら……」


 フィールはこれを聞いて、腕を組んで考えだした。しかしその顔には、さっきまでの険は無い。



 その後少し間を置いて、ようやく表情を緩めて笑ってくれた。



 「分かった。なら、問題ないわね! あたしだってルナを手伝って、嫌な未来を変えたいって思うもの!」

 「そうか、じゃあ改めて、よろしく頼むよ、フィール」



 取り敢えず握手をと思い、俺は右手を差し出す。しかしフィールはそれを見て、手を上に挙げた。

 一瞬戸惑う俺に、彼女は悪戯っぽく笑って説明してくれる。

 

 「握手ならもう、契約のときにしたじゃない? あたし達は仲間になったんだから、もっと軽くてもいいと思うのよ」

 「ああ、そういうこと」


 俺もフィールに習って手を挙げ、タイミングを合わせて軽く振る。俺の手と彼女の手が重なり、パチンっといい音がなった。


 「よろしく!」

 「っ……こちらこそ」


 ちょっと痛かった。流石フィール。


 

 「じゃ、一応僕達も……」

 「そうですね!」


 その流れで残る二人とも、パチンパチンとハイタッチを交わす。ただそれだけの、なんのこともない行為だけど、しかしなんとなく距離が縮まったような気がした。











 

 「うん、よし! じゃ、契約成立祝いってことでさ、一つパーっと宴会とかしない?」

 「え?」


 重要な話が終わり、重かった空気が緩んだのを感じたとたん、フィールが元気よく提案した。するともはやお決まりのように、ファーレが突っ込む。


 「姉ちゃんまだ食うの? て言うかさっきまでもかなり好き勝手してたじゃん!」

 「良いでしょ別に。考えたらお腹が空くのよ!」

 「なにそれ……?」

 「契約成立祝い……。う~ん、それならパーティ成立祝いってことにしませんか? 四人もいれば立派な冒険者パーティですよね!」

 「そうよ!取り敢えずそんな感じで!!」




 ……冒険者パーティ、か。


 楽しそうにしている三人を見ながらぼんやり考える。


 精霊境に来たときはまさか三人の精霊と契約するだなんて思ってもみなかった。予想外なことだったけど、旅の仲間が増えるのは、とてもありがたいし心強い。契約に失敗したりルシアが大変な事になったり、たった二日の間に色々あったけど……まあ、どれも結果オーライだろう。


 フィールもファーレも、飛び入りで契約したルシアも、みんな強くて気の良い精霊だ。これから苦楽を共にするには、これ以上ないほど良い仲間だろう。契約できたことを本当に嬉しく思う。



 「ねールナー、お酒あるー?」

 「ん~?缶ビールならあったかもな。俺は普段あんまりお酒は飲まないから……」

 「どれどれ?あ、これ?少なくない?」

 「そうですねー。あ、ルナさん、もし買いに行かれるなら次は私もご一緒して手伝いますよ!これけっこう重そうですし!」

 「んん、それならいっそ居酒屋なんかに行った方が早いかな」

 「イザカヤ?」

 「こっち世界の食堂だよ」



 ……まあ先は長いんだけども、彼等と一緒ならかなり良い未来に辿り着けるんじゃないだろうか。


 俺はこの時、遠くにある目的が一歩確実に近づいたのを感じていた。それは決して、小さくない一歩だった。

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