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スタート地点

 「来月の生誕祝いだが、そなたは何が欲しい?カタリナ」


 「新しい杖がほしいです、お父様! もっとたくさんの魔法を使ってみたいのです!」


 ファラリアという名のこの世界に戻ってくると同時に、そんな声が聞こえてきた。


 今いるのは、俺の年齢が八歳十一ヶ月くらいのある日の昼だ。魔族軍に攻められたのは十二歳になってすぐだったので、大体三年と少し戻ってきたことになる。


 俺の父であり、またこの国、リグラド王国の王であるヴィクトールが、俺と双子の妹であるカタリナに生誕祝いの贈り物、要するに誕生日プレゼントは何が良いかを尋ねている場面。




 …………ここが俺の選んだスタート地点だ。今から三年以内に、魔族が攻めてくる未来を変えなくてはならない。




 「ではルミリナは何が良い?」

 父がこちらに顔を向ける。ルミリナ・リュースレインというのが今の俺の名前だ。


 確か前回は新しい魔術書を頼んだはずだが、今の俺に必要な物はそれではない。


 「アイテムボックスが欲しいです、お父様」


 「え?お姉様?」

 

 カタリナが驚いてこちらに振り向く。まぁ、ついさっきまで魔術書を頼むと言っていた姉が別の物が欲しいと言い出したのだ。無理もない。

 父も意外そうな顔をしている。


 「ほう、確かにあれば何かと便利かもしれんな。それではカタリナは新しい杖、ルミリナはアイテムボックスで良いな?」


 「「はい、お父様」」


 その後、貰う品物についての具体的な話をして父との会話は終わった。






 「お姉様!魔術書が欲しいのではなかったのですか?何で変えたんですか!?」


 父が去った後、カタリナが頬を膨らませて聞いてきた。その疑問は当然だが、別に怒らなくても良いと思う。

 ああ、そういえば貰った魔術書を見せてあげる約束をしてたっけか。なら仕方ないか。


 「城にきた商人が使っているのを見て、急に欲しくなったのです。約束を破ってしまってごめんなさいね」


 適当にごまかすが妹からの追及は続く。


 「そもそもアイテムボックスなんて何に使うのですか?」

 「あれば何かと便利だと思ったのですよ」


 アイテムボックスというのは、見た目よりもずっと多くの物が入る魔法の収納道具だ。しかも中は時間が止まっているので、食料を入れても腐らないため、商人や冒険者といった人達は皆これを欲しがる。

 もちろん値段はかなりお高いのだが仮にも王女様への贈り物だ。なかなか良い物を貰えるのではないかと期待している。


 ……で、何でこれを欲しがったのかだけど、俺は近いうちに家出するつもりなのだ。いや、この場合は城出というのだろうか?とにかく、そのためにはアイテムボックスが必須なのだ。


 そして何故俺が家出する計画を立てたか、その理由は俺の能力の制限に関係してくる。

 無制限とか言ってた癖に、地味に厄介な制限が存在しているのだ。


 それは『タイムリープで得た情報を人に伝える事ができない』ということ。相手がすでに知っている情報ならば問題なく伝わるのだが、そうでない場合は大声で叫ぼうが紙に書いて見せようが内容が伝わらずに首をかしげられてしまう。

 この縛りがあるせいで俺は三年後の事を伝えられない。未来を変えたいなら自分で動くしかないのだ。そんなわけで俺は王族という権力のある身分に生まれながら、城を出て自分で行動するハメになってしまった。当然理由もなく外へ出るなど許して貰えるはずもないのでこっそり抜け出すしかない。


 ……ちなみにこの縛り、何故か日本では存在しない。解せぬ。




 「そうですか。確かにそうかもしれませんね。さすがお姉様です!」


 何がさすがなのかは分からないが、とりあえず納得してもらえたらしい。



 カタリナは甘えん坊なところがあるが、可愛い妹だ。

 あまり悲しませたくはないけれど……城を出るならやっぱり心配をかけてしまうだろう。






 今は冬だ。

 そして三ヶ月後、春の始めには王都の東にある王族の別荘に遊びに行くことになっている。俺はそのときに姿を消すつもりだ。


 ……それまでにきちんと準備をしておかないとな。

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