プロローグ2
目を開けると、そこは俺の部屋。ただし城の、ではなく日本にある俺の家の俺の部屋である。
……実はこの能力、覚えてさえいれば、前世である日本にまで戻ってこれたりする。残念ながら二十歳で死ぬ運命は何度タイムリープしても変えられなかったが。
ちなみに今いるのは、大学二期生の春あたりだ。両親は海外出張中、妹は海外留学中で一年近く帰ってこない。今この家にいるのは俺ひとりであり、多少変な行動をしても怪しまれる心配は無い。
この部屋は二階にある。
俺はパソコンの電源を入れた後、一階へと向かった。
ところで突然なのだが、俺は記憶力がかなり良い。
いや、さすがに読んだ文字一字一句全て覚えてますとか、そんなレベルではないけれど、それでも何も見ずに五歳くらいから今までの毎日の日記をつけられると豪語できる。
じゃあ何で持っていたゲームと自分のいる世界が同じであることに気付かなかったんだよと思われるかもしれないけれど、まあ理由は簡単だ。
やってないのだ、そのゲームを。
一階に降りた俺が向かったのは我が家の物置部屋。
埃っぽい中でごそごそと探し物をすること五分、俺はようやく目当ての物を探しだした。
クエストオブフェイリアワールド……デパートの抽選で母親がハードごと当ててきて、包装を解かれることもないまま物置小屋へと直行したゲームだ。
ちなみに俺が転生した世界の名前は『ファラリア』。うん、一応ニアミスだろうか。
話の内容は現実世界から異世界に召喚された主人公が勇者となって魔王に滅ぼされそうな世界を救うと言うわりとありがちなもの。しかし練り込まれた世界観と、そのボリュームの多さで人気はかなりあったらしい。
そしてその召喚に使われるのが先程の会話に出てきた聖剣である。パッケージ裏に名前が出ていたのでこれだけ覚えていた。
しかしこの聖剣、王都が占領されてもまだ使えないらしい。もう少しで召喚できるようになるのかもしれないが……いくらなんでも遅すぎる。
勇者はアテにしない方が良いだろう。
ゲームの箱を二階に運び、包装を解き、カセットをハードに差し込む。
パソコンの方は攻略サイトを開く。
電源をつけ、ゲームを開始すると流麗な音楽と共にオープニングムービーが流れ出した。やはりというか、ムービーの雰囲気が俺のさっきまでいた世界と似ている。
……さあて、今からしばらくはゲーム漬けだ。
このゲームには俺の助けになる情報がたくさん眠っているはず。そう信じて俺はプレイを始めた。
二週間後、俺はゲームを隅々までプレイし、またその情報を元に大体の行動計画を立てていた。準備完了と判断し、パソコンの前に座ったまま記憶のとある場面を思い出す。
……そして冒険のスタート地点へ跳んだ。