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ミストフラムへ

 ルミリナから二文字取ってルナ。うん、少し安直すぎたかな。まあ偽名なんてそんなに深く考えなくても良いか。

 そんな事を考えながら、俺は短剣をアイテムボックスに仕舞う。この短剣は少々装飾過多なので、既に布を巻いて宝石等の飾りを隠してある。


 さて、助けるのには何とか間に合ったが、此処からどうしようか。大して広くもない、散らかった洞窟の中をぐるりと見回す。


 「盗賊を捕まえた場合って盗品は捕まえた人の物になるんだっけか」

 「うん、そうだけど…………あの、その、私達の荷物は……」

 「いや、さすがにそれを要求したりはしないよ、他の物が手に入れば十分だから」

 

 俺がそう言うとレイナはホッとした表情にはる。


 「ありがと、それは正直助かる。でもコイツら私達の荷物以外はロクな物持ってないよ」

 「ってことは外の馬車はレイナのか」


 洞窟を見回してみると確かに、宴会をしていたらしい所には中身を確認していたと思われる箱がたくさんあるが、他の物は少ない。まあ五人しかいなかったのだ。襲える対象も限られていただろうから、盗品が少ないのも当然だろう。俺は盗賊達を指差してレイナに質問する。

 「じゃあコイツらはどうしようか」

 「う、うん、そうだね……一応殺しても罪にはならないけど、もう少しでミストフラムって街につく筈なんだよね。そこで引き渡せば報償金がでると思う」

 「報償金、ね」


 少し時間を取ってしまうがお金があるのはこの先助かる。さすがに金目の物を城から盗み出す訳にもいかなかったので手持ちが余りないのだ。

 もちろん出来ないわけではなかったが、俺のせいで管理責任を問われたり給料が消えたりする兵士やら文官やらが出るのは本意ではない。


 「五人いるけど君の馬車に乗せられる?」

 「ちょっと重量オーバーかな。けど近いから大丈夫だと思う」

 「ならお願いして良いかな、縛り方は知ってる?」

 「まあ一応。まかせといて」


 レイナはアジトに置いてあったロープで器用に盗賊達を縛っていく。王女としての教育で盗賊の縛り方なんて習う筈は無く、日本でも全く必要無い技術であるため、俺は縛り方を知らない。まあ、やろうと思えばタイムリープで城に聞きに行く事も出来るけども。


 俺は洞窟の隅のレイナの物ではなさそうな品物を調べ始める。量は少ないが換金出来そうな物は多い。ついでに血がこびりついている物も多かったが。

 使えそうな物を探してアイテムボックスに入れていると、レイナが声を掛けてきた。


 「ルナ君、そのポーチってもしかしてアイテムボックスなの?」

 「うん、そうだけど」

 「うわあ、凄い物を持ってるね。ルナ君って本当はお金持ちのお坊ちゃんだったりするの?」

 「さあ、どうだろうね」

 「でも本当に凄いよ、ルナ君。まだ小さいのに盗賊を簡単に退治して、あんなスキルを持ってて、それにアイテムボックスまで……ルナ君だったら直ぐにでも高ランクの冒険者になれるよ」


 それに比べて私は……って服音声が聞こえた気がした。明るく振る舞おうとしているが、かなり無理をしているように見える。

 盗賊達の服には返り血と思われる血がついていた。私達の荷物って言葉から考えると、一緒に襲われた人がいた可能性が高い。

 

 俺が使えそうな盗品をアイテムボックスに入れ終わったときには、レイナは既に盗賊全員を縛りあげ、自分の荷物を箱に詰め直していた。

 「手伝うよ」

 「あ、ありがとう。じゃあそこの箱を馬車に持っていってもらえるかな」

 「分かった」

 箱を持ち上げるときにレイナの周りにある箱の中身が見えた。家財道具の様な物の他に、食器や調理道具、調味料といった物がたくさんある。そういえば食料もやけに多かった。


 彼女の方を見ると、男性用らしきエプロンを箱に詰めるところだった。俺がエプロンに視線を向けているのに気付くと、彼女は悲しそうに笑って俺が気になっていた事を教えてくれた。


 「このエプロンは私のお父さんのなんだ。料理人だったんだよ」

 「その、お父さんは……」

 「子供の頃から自分の店を持つのが夢だったらしくてね。ようやくミストフラムで出店出来ることになって引っ越しする途中だったんだよ。けど、盗賊が出たときに私を庇って前に出て、それで……」

 「そうか……」

 「私のせいなの。私、どうすれば良いんだろうね」


 自嘲するようにそう言ってうつむくレイナ。やっぱり彼女だけじゃなかったようだ。

 俺はその様子を見て、少し考えてから口を開いた。


 「その盗賊に襲われたのはいつか聞いていい?」

 「え?何で急に……」

 「まあ良いから、今からどのくらい前?」

 「う、うーん……六時間くらい前かな。あいつら結構長く宴会やってたし」

 「六時間か……」


 タイムリープで戻るには少し遠すぎるな。

 俺はシヨンの森を出てから最低限の休憩しかとらずに此処まで来た。六時間もの時間を捻出するとなると、五日前のシヨンの森まで戻り、出発の時間を早めないといけないだろう。レイナには悪いが、見ず知らずの人に対してそこまでする気にはなれない。

 

 「悪いな、間に合わなくて」

 ……というか間に合わせなくて。本当なら人として、何日戻っても助けに行くべきなのかも知れない。

 「え、いやいや、ルナ君が気にする事じゃないって。私を助けてくれたんだから、それだけで本当に感謝してるよ」


 彼女はそう言って箱詰め作業に戻り、俺もその手伝いを再開した。





 暫くして、馬車に荷物を乗せ終わった。その隙間に盗賊五人を押し込んだら準備完了、出発である。俺とレイナは御者台だ。ようやく座れるのはありがたい。休憩を無かった事にして此処まで来たので、そろそろ足がヤバかったりする。


 「じゃあ行くね?」

 「おう」


 馬車がゆっくりと動き出した。


 「うわ、結構揺れるのな」

 「ええ?ここら辺の地面は柔らかいから、そんなに揺れてないけど?」

 「え、これで?揺れを軽減する魔道具とかは……」

 「そんな高いの買えるわけないじゃん」


 そうかこれが普通の馬車なのか。今までは王族用しか乗っていなかったら知らなかった。凄い揺れるな。


 「そんな高級な馬車しか乗った事がないって……もしかしてルナ君って貴族の生まれだったりする?」

 「え、あ~まあそんなとこかな」


 名を上げれば爵位を貰える可能性があるため、家督を継げない貴族の三男や四男が冒険者を志すことはある。何ならそういう事にしておこうかな。高貴な生まれってとこは嘘じゃないし。……いや、年齢的に無理か。 


 暫くすると街道に出た。あれから何も会話をしていなくて、少し空気が重い。ちらりと隣を見ると、レイナは相当に思い詰めた顔をして物思いにふけっているようだ。一応空元気を装ってはいるが手の方に目を向けると鬱血するほどに握りしめられている。


 ……何か話しかけた方が良いだろうか? このままだと何かの拍子に馬車の車輪にでも飛び込んでしまいそうだ。


 「後どのくらいでミストフラムか分かる?」

 「ん、えと、今から一時間くらい……かな。どうかしたの?」

 「いや、単に気になっただけだよ。この辺りの地理にはくわしくなくて。後は少しお腹減ったって思ってさ。今日は朝から何も食べて無いんだ」


 正確に言えば一度は食べたがタイムリープで無かったことにしてしまった。走りっぱなしだったせいでかなり空腹だ。

 

 「そっかあ、じゃあ着いたら美味しいお店を紹介するよ。お父さんの出店準備なんかに付いていってたから、そういうのは詳しいんだ」

 「ありがとう。それじゃあ頼むよ………………それにしても……」


 俺は言葉を切って後ろを振り返る。出発からずっと盗賊達の悪態やら呪詛やら懇願やらが聞こえて来ていたが、後一時間のくだりから一段とうるさくなった。


 「猿ぐつわ噛ませとけば良かったかな」 

 「街に着くまでの辛抱だよ。気にしない気にしない」

 「分かった、そうするよ」


 洞窟で会話したときから思っていたが、レイナは父親を殺された割に盗賊への態度が淡白な気がする。父親が死んだ事に対してはかなり思い詰めている様子だが、盗賊に関しては興味無さげと言うか、あまり考えて無さそうだ。

 そんな事を考えていると、次はレイナから質問がとんできた。


 「さっき盗賊と戦ってたときさ、ルナ君は空中を走ってたよね。あれってスキルなの?それとも、もしかしてギフトだったりする?」

 「ああ、それは……」


 どう答えようかな。

 ここでいうスキルと言うのは、魔力を使って出す技や技術の事だ。剣に炎を纏わせたり、風の力を借りて加速したりと様々な種類があるが、結局は術式を組んで行う物であるため魔法との境目は結構曖昧だ。剣や槍を使って戦う前衛職が、補助の為に使う簡単な魔法と言っても良い。


 対してギフトと言うのは生まれつき持っている特殊能力の事だ。この世界では他には無い特殊な能力を持った者が時々生まれるが、その能力は魔法やスキルと違い、術式を組む必要は無い。例えば炎を操るギフトを持った者なら、術式など考えずに思い通りに炎を操れる。俺のタイムリープも一応ギフトに入るのだろうか?


 スキルの天駆はかなりレアで、しかも数歩しか空を蹴れないと聞いている。ギフトということにしといた方が怪しまれ無いと思う。


 「ギフトだよ。天駆って呼んでる」

 「やっぱりギフトだったんだ。ずっと空中を走り続けられるの?凄い能力だね」


 そこでレイナは言葉を切った。しかしチラチラとこちらを見て、まだ何かを言いたそうにしている。


 「まだ何か?」

 「えっと、さ。ルナ君はさっき剣を持った盗賊五人と戦ってたじゃない?」

 「うん、戦ったけど」

 「その、怖くなかったのかな~なんて……ゴメンね変な事聞いて」

 「いや、そりゃ怖かったけど」

 「嘘だよね。私戦ってた所見てたけど、剣が顔をかすめても涼しい顔してたよ、ルナ君は」


 適当に答えようと思ったけどレイナの顔は真剣だ。だが、彼女に本当の事を教える事は出来ない。俺が恐怖を感じなかったのはタイムリープがあるからだ。例え致命傷を受けても直ぐに無かったことに出来るから、俺はあの五人と恐れずに戦う事が出来た。

 しかしタイムリープ能力の縛りにより彼女にこの能力の事は教える事が出来ない。本当にどう答えたものか。


 「そうだな、あいつらでは俺に勝つ事は出来ないって確信してたから、かな」

 「確信……じゃあもっと強い人が相手ならルナ君も怖くなったりするの?そんな相手とも戦えるの?」

 「まあ、怖くなったりはすると思うよ。そういうときは自分の力を信じて頑張るしかない」

 「ふうん……自分を信じて、か。凄いね、ルナ君は」

 

 レイナはそれっきり黙ってしまった。なんだか先程よりさらに沈んでる様に見える。タイムリープの話を出さずに上手く答えられたと思ったけど、何かまずかっただろうか。


 そこから先は特に何事もなく、そしてまた会話もほとんど無く、俺達はミストフラムへ到着した。

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