表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

科学少年、科学少女

作者: 三堂いつち

僕らの世界に突然、悪の怪人が現れた。彼らの目的は不明。ただわかっていることはその芸人気質のノリの良さと、人とは比べ物にならない力を持っていることだけだった。


その怪人達による被害が減少の一途を辿る中、ついにあいつらに対抗しうる存在が現れたのだ。







「はっはっはー、今日はこの街を〜……、どうしてくれようかっ⁉︎」


駅前、多少どころか人通りの多いここで、明らかに人と違う何かが大きな声でそう叫ぶ。


「改札を全部前後ろ逆にしてやろうか〜、それとも券売機のボタンをゴチャゴチャに入れ替えてやろうか〜?」


最も人通りの多い改札付近、そこであっちに行ったりこっちに行ったりとせわしない赤色の、いかにも「怪人ですよ」と言わんばかりのそれは、人の肩にぶつかっては「ごめんなさい」と謝っていた。優しい人に「最近の券売機はたっち式でボタン付いてないですよ」と言われれば、少し恥ずかしくなりながらも「そ、そうでしたか。ご忠告ありがとうこざいます」と丁寧に礼を言う。


「券売機の硬貨投入口をのりで固めてやろうか〜?それともICカードをピッてやるところに瞬着で何か貼ってやろうか〜?」


それを見て周りの人たちは「な、なんてことを、ICカードが使えなくなってしまうじゃないか」とか「切符派に対する死刑宣告だわ」などと様々に棒読みで言い合い、まさに戦々恐々と化しているところだ。


そんな中、上空から鋭い声が駅前に響いた。


「やること決めてから出直してきなさい!」

「誰だっ⁉︎」


怪人がハッとして声の方向、上を見上げる。そこには白く、華奢なフォルムをしながらも、立派に空を駆ける勇猛な『ドローン』の姿があった。


「いや本当に誰だっ⁉︎」


怪人が思わずツッコミを入れる。それを気にした様子もなくドローンは飛行を続けている。


「無様に引っかかったわね。私はここよっ!」


と怪人は後ろから聞こえた声に振り向くと、そこにはシャー、と音を立てながら走行する『RCカーラジコン』が。


「天丼‼︎同じボケを繰り返すことっ‼︎」


たまらず叫ぶ怪人を嘲笑うかのように横をシャー、と走り抜けるラジコン。


「本当はここよっ‼︎」


今度はラジコンが駆け抜けていった方向から声が聞こえた。


そこにはセミロングの茶髪と白衣をたなびかせ、スケートボードに乗っているかのように滑ってくる少女の影が見えた。その横には少女の手を取り支えている黒髪の少年の姿があり、これまた白衣を着ている。


足元を見れば一瞬スケートボードと見間違うそれは、一般的なスケートボードのそれよりも4、5倍は厚く、スケートボードの特徴である車輪をつけていなかった。なんとそれは浮いているのだ。


音を立てずにゆっくりと怪人の前へ進むそれは、乗っている人物が白衣だからだろうか中々にシュールな絵面となっていた。しかも、少女はそのボードに乗るのが不得手らしく隣の少年に支えてもらってやっと進めるのだ。時折聞こえる「離さないで!離さないで!ゆっくり!ゆっくり!」はなんと勇ましいことか。


やがてそれらしい距離に着くと少女は地面に足をつけボードを止める。降りる時はしっかりと少年に支えてもらう。


「な、なんだ貴様らはっ⁉︎」


オーバーに驚きつつ怪人は白衣の少年少女にそう問う。


「説明しよう」


今まで無言を貫いてきた少年が、急に説明的キャラのようなセリフを吐きながらポーズをとる。そして、タイミングを見計らったかのように白衣が揺れる。


「これは『ホバーボード』。その名の通り浮いて地面からの抵抗を受けずに進める代物だ。ホバーといえば空気で浮いているのかと思うかもしれないが、実はこれは磁力で浮いているのだ‼︎そもそもホバーボードとは、かのSF大作名画『バックトゥザフューチャー』で主人公が乗っていた乗り物だ。映画の中では2015年に実現できていることになっていた、そして人類は『バックトゥザフューチャー』をフィーチャーして、クスッ、ついに『ホバーボード』を作り上げるに至ったのさっ‼︎あ、ちなみにこのホバーボードは僕の手作りね。テレビで見ていいな〜、と思い作ったのさ!普通のボードとは違い地面からの抵抗が皆無!つまりそれは蹴った力の分だけ前に進む力となる‼︎ああ、なんと素晴らしい発想!なんと美しい計算式、いやむしろ科学式!科学万歳!サイエンス万歳!化学はそんな好きじゃない!歌手の方は好き!」


と、雄弁に語った。つまり少女が乗っていたのは近未来的な創造物であり、それを再現できた科学はスゴイ、と少年は言ったのだ。


「違う!確かにスゴイことだけどもっ!俺が聞いたのはお前らでそのホバーボードとやらではない‼︎」


もともと赤い顔を、さらに赤くさせながら地団駄を踏む怪人。


「よかろう!ホバーボードを蔑ろにするのはよくないから先に説明しただけだ。教えてやる、僕たちは!」


少年が右手を空に掲げる。それに合わせて白衣が揺れる。


「科学少女クミ!」

「科学少年サイ!」

「「科学の力が未来を彩る。2人合わせて【サイエンティスツ(複数形)】」」


少女は顔の半分を隠すように右手をあて、少年はその隣で怪人から斜め45度で見えるように腕を組んで立つ。バサァ、と白衣が風も吹いていないのにたなびいた。


それは2人の着ている白衣が『演出白衣』という発明品だからだ。これはその時に合わせて自動的にたなびく、という優れものだ。これによって風のない日や、激しく動くことをしなくても白衣が揺れるのだ。


2人の名乗りを聞いた周りは、たちまち2人の応援に回る。人とは適応する生き物だ、と誰かが言ってた気がする。


「科学少年?科学少女?」

「そう、科学の力で滅殺よ☆」

「星つけても恐ろしいわっ‼︎」

「そうだよクミ、そこは「科学の力でグチャグチャよ♪」でいこう。片仮名だからある程度可愛く見えるだろ?」

「なるほど〜」

「いや何も変わってないからな。むしろグチャグチャの方が逝く未来を想像できて怖いわっ‼︎音符つけちゃったらむしろ猟奇的殺人やる人みたいに聞こえちゃうから‼︎」


敵を前にしても余裕の会話を繰り広げるサイエンティスツ。さすがだぜ!


「そろそろギャラリーもあったまってきたからな、そろそろ始めるか」


科学少年はスイッチが入ったらしく、ニヤリと笑みを含みながら、ゴーグルの奥の双眸で怪人を睨む。


「長いことコンビやってるけど、あんたのキャラ未だに掴めないわ」


と、横で呟く科学少女。どちらも準備万端だ。いけ、やれ!サイエンティスツ!


「たかだか小僧に何ができるっ‼︎」


お決まりのようなセリフを吐きながらサイエンティスツに走り寄る怪人。いくら芸人体質とはいえそこは怪人。普通の人間では追いつけないような速度で駅前を駆けていく。


「かかった!」


少女のその言葉と同時に、宙を舞っていたドローンから怪人の頭にべちゃっとした何かが落ちた。怪人は頭に乗ったそれを手に取る。すると手には泥がついていた。


「あーはいはい、ドローンからどろがどろ〜んってね」

「「……」」

「なんか言えよ!俺がスベったみたいになるだろ!」

「いや、実際スベってたし」

「救いようなかったよね」


少年と少女は顔を合わせて怪人をなじる。「やめーろよー」と怪人は頭を抱え苦しんでいる。そうだ!その調子だ、サイエンティスツ!


「僕的には500グラムまでなら持ち上げて8メートルまで飛行できるところをツッこんでほしかっなぁ」

「マニアック!」


怪人の悲痛な声が響く。科学少年はまだまだ手の内を明かしきっていないようだ。


「くそっ、こうなったら!」


怪人は手のひらを科学少年に向けた。その手のひらからは赤色の光が放たれ、そして何かが発射された。


「サイっ⁉︎」


風を切る音も聞こえず、発光の次の瞬間には少年の左胸に、赤い棘が刺さっていた。少年は棘の勢いに負け後ろから倒れた。


「はっはっは、俺様の『赤いレッドニードル』の威力を思い知ったか。細いわりに結構強いんだぜ、これ。249/250の確率でトマトが発射されるんだがら今回は当たりだったようだな」


慌てて少年に駆け寄る少女を横目に怪人は得意げに話す。


「サイっ⁉︎しっかりして?」

「無駄だ。当たりは殺傷能力結構高いんだぜ?豆腐とか余裕で貫通するんだぜ?」


と、怪人が勝ち誇ったように高笑いをしている。事態はひどい方向に向かっているのか、誰もがそう思った時、



「ヒュー、危なかった〜」

「サイっ!」


少年がむくりと起き上がった。


「な、なんだと?まさかアレか?ベタに「胸ポケットにコイツがあって助かったぜ」ってお守りを出すアレか?」


怪人は1人驚いている。


「サイ、大丈夫なの?」

「ああ、胸ポケットに『ナンテコタナイサー』を入れておいて正解だった」


と、少年はポケットからその『ナンテコタナイサー』を取り出そうとしたが、棘が服に刺さっており取り出せない。やがて少年は『ナンテコタナイサー』を取り出すのを諦めた。


「いや出せよっ‼︎諦めんな‼︎そんな気になるネーミングして出さないとか酷くね?」


怪人が喚いているが2人は気にしない。フラリともせずに少年が立ち上がる。


「さあ、今度はこっちのターンだ」

「え、マジで?急にシリアスになっちゃうの?」


少年と少女が白衣の内側に手を入れる。そして取り出したのは銀色に鈍く輝くハンドガンだった。


「途端に物騒‼︎なにそれ?お前らギャングだったっけ?サイエンティスツだよね?殺し屋とかじゃないよね⁉︎」


サイエンティスツの出した武器にビビっている怪人。


今だ‼︎サイエンティスツ‼︎


「安心しなよ。僕らも殺すのは嫌だからね」

「じゃあエアガンかなにかか?」

「いや麻痺銃スタン・ガンさ」

「へ?」

「だからぁ、電流を流して相手を気絶させるスタンガンの機能を、銃弾に持たせた麻痺銃スタン・ガンよ」


武器の名前を言う少年。それに間髪入れず聞き返す怪人に説明する少女。2人は銃口を怪人に向けている。いつの間にか怪人の後ろには人が居なくなっていて、もし怪人に弾が当たらなくても二次災害は出ないぞ。


チャンスだ!サイエンティスツ!


「という訳で」

「とりあえず〜」

「「死んじゃえ♪」」

「いや殺すのはってさっき言って、ギャぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」


こうして1つの悪は滅ぼされたのだ。すごいぞサイエンティスツ!


「お腹すいた〜」

「たいして動いてないだろ、太るぞ」

「なんであんたはそんなにデリカシーがないの、よっ」

「いたっ!蹴るのはダメだろ!」


そう言いながら去っていくサイエンティスツ。


ありがとうサイエンティスツ。君たちの勇姿を我々は忘れることはないだろう!






▽とある中学校


「ねえ?本当に昨日のあれ誰にもばれてないの?」

「ひどいな〜、僕の発明を信じてないの?」

「そりゃあ、あんな透明のゴーグルで顔バレしないとか誰が信じるのよ?」

「あれは僕の作った『ご都合ーグル』だよ?バレる訳ないじゃん」

「そのネーミングセンスどうにかしたほうがいいかも……」

「なんか言った?」

「別にー」

思いついたら即書き起こし、そしてこんなのが出来てしまいました(笑)


閲覧ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ