表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

乙女ゲーム&育成ゲーム転生

トゥルーエンドをむかえてみせましょう

作者: 弥於

 皆さん初めまして。私はクレイグ・ブラックウェルと申す者でこの国の第二王子です。今日は私の六歳の誕生日で、誕生パーティー兼お披露目パーティーが先ほどまで盛大に執り行われていました。今は湯あみまで済ませベッドに潜り込んでいる状態です。初めて公の場へ出席したことで精神的な疲労感はかなりあるのですが、考えることが多く頭が冴さえている状況で眠気はまだありません。ですので、少々昔を振り返ってみようかと思っております。六歳のくせに振り返るような人生があるのかと言われそうですがこれには訳があるのです。……唐突ですが私には前世の記憶があるんですよね。その記憶によるとこの世界はどうやら乙女ゲームの世界で、私は攻略キャラの一人のようです。私は前世も男でしたが、当時の恋人がゲームの攻略キャラの第二王子と前世の私が瓜二つだったから話のタネに買ってみた、と言っていたので二人でその第二王子だけを全ルート攻略したんですよ。もうお分かりでしょうがその第二王子が今の私です。

 前世の私は真正のゲイで、家族や世話を焼きたがる親戚には自覚してから直ぐにカミングアウトしてました。そうでもしないとお見合い攻撃が凄まじかったでしょうからね。何せ前世の私は自他ともに認めるイケメンでしたから。あっだからといってナルシストではなかったですよ?ナルシストとかキモいと思ってますし、何よりそういう奴に限ってイケメン(笑)が多かったですし?

 まぁ、イケメンで実家は金持ちでおまけに就職してからは高給取りという条件までプラスされた超優良物件だったのでいつも周りには女性が群がってました。小学生の時からだったので、昔から付き合いのある友人達にはそれが当たり前の光景になるぐらいには群がられてましたね。正直言って邪魔以外の何物でもなかったですけどね!何せ小学生の時は友人達と遊ぼうとしても強引について来ては、もう疲れただの違う遊びがしたいだのと言って足手まといになってたし、中学生の時は何度私が止めたり諫めたりしても、勝手に牽制しあったあげく勝手に修羅場みたいなことになって問題ばかり引き起こしてたし、高校生の時は同性愛者だという自覚があったので恋愛対象外でしかなかったし、ストーカー紛いのことをされてばかりでしたしね。大学からはもう面倒だったので周囲にカミングアウトしましたよ。初めのころは追い払うための嘘だと思われたらしく今までと変わらず纏わりつかれてましたけど、時間が経つにつれて信憑性が増してきたのか段々と人が減ってきたおかげで初めて有意義な学生生活を送れました。まぁ取り巻きが減るにつれて同性からも少し距離を取られましたが、私が誰彼かまわず手を出すわけではないと分かると以前とほぼ変わらない関係を築けることが出来たのも嬉しかったですね。大学を卒業して大手の企業に就職してからも早い段階でカミングアウトしました。そりゃもう初めは色々と大変でしたけど、大学の時のように理解を得られてからは仕事が楽しくて楽しくて仕方なかったですよ。恋愛方面では相変わらず恋人の一人も出来ませんでしたが、代わりに人生初の女友達が出来たりして女性が敵だけでないこともよく分かりましたしね。

 そんなこんで楽しく暮らしていた私の前に一人の人物が現れたんですよ。それが私の最初で最後の恋人です。その人の名前は長谷薫さん。天使の輪がくっきりと見えるほど手入れの行き届いた黒髪に、瞳は祖母がアイスランドの方だったらしく澄んだ綺麗な緑。いつも優しげな微笑みを浮かべていた顔は、中性的でパッと見は性別が分からないけれども、見た人全員が美人だと声を揃えて言うだろうと断言出来るほど整っていました。もう一目惚れでしたね。ノーマルだろうとなんだろうと絶対に落とすと意気込んだのは後にも先にもあの人だけでしたよ。

 結論から言うとあっさりと付き合うことが出来ました。何せ彼……いえ、彼女は性同一性障害者の方で心は女性だったため恋愛対象は男だったんですよね。もうこれは運命としか言いようがないでしょう?私は彼女に彼女は私に会うためにこの世に生を受けたのだと当時は本気で神に感謝しました。彼女も私と同様自身のことは周囲にカミングアウトしていたので、ご家族の方に挨拶に行った時は私のことをすんなりと受け入れてくれただけでなく大歓迎までしてくれましたよ。この時が当時の私にとって最高な時だったんですよね。

 恋人が出来たことは彼女の事情も含め親しい人達には報告していました。勿論彼女の了承は得ていましたよ?彼女の事情は私が勝手に吹聴しまわって良いものではありませんからね。ですがそれが悪夢の始まりだったのかもしれません。そのことを風の噂で聞いた人達が『心が女でいけるなら体が女でも落とせるかもしれない』なんて馬鹿な考えを起こしたらしく、カミングアウトをするより前の時以上に私の周囲に纏わりつく女性や、恋人が居るのを知っているにも関わらず告白してくる人が増殖しました。勿論丁寧に説明をして納得したうえでお引き取りいただきましたが、そのせいで薫と過ごす時間が少なからず削られてストレスが溜まる一方でしたよ。 段々と荒んだ雰囲気を醸し出した私を見て、不憫に思った友人や親しい同僚達が増殖を抑えようと手伝ってくれていましたが、そんな時に空気を読まない馬鹿がとある事件を起こしてくれたんですよね……。問題の馬鹿とは、私と同期で新人教育を共に熟したということしか接点がなかった自分の美貌(笑)に自信を持っていた女性でした。そう私が嫌いなナルシストな人だったんですよ。そんな彼女は自分にとてつもない自信があったのか、衆人観衆の元私に「付き合ってあげても良いわよ」と上から目線で告白してきました……最早告白かどうかも分からない領域ですね。その告白につい私は反射的にその場でお断りしてしまいました。せめて場所を移してから返事をすれば良かったのかもしれませんが時はすでに遅しでした。彼女は羞恥心や怒りから顔を真っ赤にしながら私を罵倒してきたんですよ。まぁ私のことだけだったらこれ以上面倒なことに関わりたくなかったので全て右から左に流す気だったのですが、彼女が恋人のことも馬鹿にし始めた時点で堪忍袋の緒が切れてついつい口撃にて彼女の心をズタボロに引き裂いてやりました。周りが顔を引き攣らせながら見てくる程度にはとどめておきましたが。


 「女が駄目だって言うくせに恋人は心が女なんでしょ!?なのに付き合ってるってことは女だとは認めてないってこと!?ただ利用しているだけじゃない!!」


 彼女も私も沈黙したことでようやくこれで終わりか、という安堵に似た思いをその場に居た人全員が思ったことでしょう。なのにその空気を壊すかのようにそんなセリフを吐いてきた彼女。屈辱に震えながらも、気丈に私を睨みながら反論してきた彼女に対して親切な私は極上の笑みを浮かべると


 「女が好きなわけじゃない。好きになった奴が女だっただけだ。それに例え女が恋愛対象だったとしても、お前のような屑を相手に選ぶわけがないだろう。身の程を知れ。」


 と止めを刺してあげました。それから彼女と関わることは皆無でしたが仕事は辞めずに続けていたようです。私が言うことではないでしょうが、よく続けられるなと当時は呆れを通り越して感心していました。何せあの事件は会社の近くで起こった出来事ですので、次の日には半数以上が噂を耳にしているほどに広まっていましたからね。ですが、この時に手を打っておけばあんな悲劇は起こらなかったのかと思うと今でも悔みます。

 あの事件から約一か月後、彼女はさらなる事件を引き起こしました。突然薫の職場に現れると、私と別れろと詰め寄ったあげく断られたことに逆上して薫を刺し殺したのです。後から知ったことなのですが、彼女はあれから私のストーカーの一人になったらしくその為仕事も辞めなかったのだとか。あれほど貶した私に執着する理由が分かりませんでしたが、私の対応の甘さの結果薫が殺されたことだけは理解出来ていたので、当時は薫の後を追うことしか頭になく周囲の人を悲しませていたことをよく覚えています。ですが、薫の妹が四十九日を終えてなお馬鹿なことを考えていた私に言った言葉が目を覚ましてくれました。


 「月並みの言葉かもしれないけど、貴方が後を追って姉さんが喜ぶとでも思ってる?姉さんを馬鹿にしないでよね!姉さんは貴方が原因で殺されたなんて絶対思わなかっただろうし、私達家族や貴方の幸せを祈って逝ったに決まってるじゃない!!」


 涙を浮かべながらの言葉に、私の行為は薫を侮辱していたのだと分かり頭を殴られたかと思うほどの衝撃を受けました。それからは薫に報いるためにも、何より私達のような人を増やしてしまわないように少しでも世間を変えれるように働きかけようと心に決めたのです。そう決意し実行に移してからは時間があっという間に過ぎ去っていきました。仕事を続けつつも自身が広告塔となることで、同性愛や性同一性障害についての実情を知ってもらい少しでも理解者が増えるようにと奮闘の日々。その甲斐もあって老衰で死ぬまでに少なからずの人の価値観を変えることに成功しました。これが前世の私の全てです。

 そして現在に至る訳ですが、ぶっちゃけ楽してます。何せ二歳の時には自己意識ががあったので、勉強や鍛錬などの大切さや必要性を理解していたため真面目にやりましたし、才能もあったのか乾いたスポンジが水を吸うかのごとくあっさりと習得出来ましたからね。こういうのをチートというんでしたっけ?まぁおかげで文武両道の完璧王子道を邁進しております。とは言っても年子の兄との鍛錬で殆ど勝てたことがないので最強という訳ではないみたいですけどね。

 今生は王族に生まれたので政略結婚も仕方ないとは思っていますが、ゲームのシナリオ通り大人しくヒロインと恋仲になるつもりはありません。それに攻略キャラは私だけではありませんでしたから、必ずヒロインを好きになると決まっている訳ではありませんよね。まぁそれ以前に、私にも王位継承権はありますが兄の方が継承権が高いですし、上位貴族の娘と結婚して兄の補佐に回る方が現実的だという考えがありました。第一私が心から求めているのは今でも薫だけなので、無駄な諍いは起こさず大人しく駒である方が誰にとっても幸せだと思っていました。彼女を見つけるその時までは。

 パーティーでは、初めの挨拶を無難に終えてからは引っ切り無しに来る貴族達からの挨拶への対応に追われていました。その挨拶の内容も殆どが似たり寄ったりで、私へのお祝いが一に煽てが二、残りの七は自分達の自己紹介を含めた自慢という割合でした。まぁお世辞に関しては

 

 「学問に関しては先生方の教え方が分かりやすかったおかげですし、武芸は兄上に勝てた例がほとんどありませんよ。文武に秀でた兄上のことは心から尊敬しています。これから先、王となられる兄上の助けになれるようこれで満足せずより高みを望めるようこれからも精進していくつもりです。」


 といった感じで謙遜しつつ兄を褒め、なおかつ争う気はないと遠まわしに伝えるようにしていました。実際兄のことは尊敬してますし大好きなので嘘ではありません。前世の記憶がある分、こういったやり取りには免疫がありましたが流石にこうまで続くと疲れは隠せなくなってきます。なので一旦休憩を取ろうかと思っていた矢先に近くにいたとある家のご令嬢が意識を失い倒れてしまいました。ちょっとした騒ぎにもなりましたし、思わずそのご令嬢に目を向けた時私は再び神に感謝しました。倒れたご令嬢は薫だったのです。勿論姿形は以前とは全く違いますから見た目で分かるはずがありません。ですが、電波と言われようとも私には彼女が薫だと何故か確信できたのです。薫の父親らしき男性は、すぐさま父上に場を騒がした無礼を詫びると同時に退席の許可を願い出ました。そして許可を得ると自らが薫を抱きかかえ、妻らしき女性と共にその場を後にしたのです。それから後も変わらず挨拶攻めは続きましたが、私は先ほどの疲れなど忘れたかのように手早く捌きました。何故なら挨拶攻めが終わらなければまともに動くことが出来ず、薫の情報を集めることが出来ませんでしたからね。その甲斐もあってか欲しかった情報は見事集めることが出来ました。欲しかった情報は薫の今の名前と年齢、父親の地位、貴族の位です。これらが分かれば薫を手に入れる方法が思いつくと思い収集しましたが、集めた結果に正直笑いが止まりませんでした。パーティ中でしたし実際は微笑む程度には押えましたけどね!

 現在の薫はフェリシア・アシュクロフと言って、名高いアシュクロフ侯爵家の一人娘でした。年齢も私と同じなうえ、家柄的にも私の婚約者となるには全く問題ない訳です。将来は臣籍に下るつもりですし、その先が現当主も優秀で父上からの信頼も厚いアシュクロフ家なのは王家にとっても都合が良い。これならば、さほど反対されることなく彼女の婚約者の座を得られるはずですね。兎に角、他の誰かが彼女に目をつけてしまう前に手を打たなければ。善は急げと言いますし早速明日にでも父上に彼女とのことをお願いしてみましょう。


 ――あぁ、色々と考えていたら流石にそろそろ眠くなってきました。明日からは今まで以上にやることがたくさんあるし早く寝なくては……。

誰か人がいる時には常に良い子は演じていて、乙女ゲーム通りの王子の中の王子。でも本当は腹黒王子になる予定だったのに全然腹黒くならなかった……残念。因みに他の攻略キャラの情報は一切持ってないので兄が攻略キャラだとは知らない。


――前世設定――

お名前は藤ノ宮椿さん。父、母、兄、双子の弟達の六人家族。カミングアウト前も後も家族仲は良好。彼女とは友人行きつけのカフェで出会い、何度も通って友好を深めつつ情報を集めていた。その際彼女の事情をカミングアウトされ自身のこともカミングアウト。椿さんと彼女は両家共に家族ぐるみの付き合いをしていて、その結果椿さんの兄と彼女の妹が想いを育み見事恋仲に。事件があって延期していたが、椿さんが立ち直った後暫くしてから二人は無事結婚。そのため事件後も、両家の望み通り以前と変わらない付き合いを続けていた。椿さん自身は、亡くなった彼女のことを心から愛していたため生涯独身を貫く。しかし世間の認識を変えてくれたおかげで助けられたという人が多く、亡くなった際はかなりの人たちにその死を惜しまれた。享年九十一。


……こういった裏設定みたいなの考えるのが超楽しい。おかげで筆が進んで裏設定ばかり増えるから困る(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] かおるさんににげられないかがしんぱいだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ