表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

001話 夢なら早く覚めてほしい

はじまり、はじまりぃー。


 あれっ? なんだ? おかしいな?

 俺、自宅の部屋でFX(外国為替証拠金取引)やってた筈なのに……。


 もしかして寝落ちした?


 今日は、いやもう昨日か、日本時間の夜22時30分に、アメリカで雇用統計をはじめとする重要な経済指標が発表される日だから、ドルを中心に殆どの通貨の値動きが激しくなる可能性が高いので、気合入れて望んでた筈なのに。


「ふっ寝落ちするとは俺も齢をとったという事か……」と心の中で中二病気味に気取って苦笑してみる。


 まあ、経済指標発表後の値動きの激しい時間は既に済んで、売買もあらかた終えて、ポジションは全て決済しちゃってたから、寝落ちしても問題ないからいいけど。


 午前2時頃までは確かに起きてたのは覚えてる。一応、徹夜で各通貨の値動きを注視して、儲けるのに良い機会があれば、まだ売買する予定だったのだけど……。


 いや、そんな事言ってる場合じゃないな。現実逃避してる場合じゃないぞ、これは。

 妙だ、変だ、何かおかしい……。

 何せ気付けば、見知らぬ家の中に自分がいる。


 しかも、この家の中にいる人には俺が見えてないみたいだ。

 その見知らぬ人に声を掛けようとしたが声が出ない。


 なんか、自分の体重とかも無いような、体の感覚自体消えてるような。

 手も足も動かせない。

 まるで幽霊にでもなったかのようだ。


 やはり、これは寝落ちして夢を見ているのだろうか? だとしたなら早く目覚めなければ。

 そうは思ったが目覚める事ができない。


 困った。とても困った……。と、困惑している間にも、この夢の世界(?)の見知らぬ家でも、どうも時は進でいるようだ。


 それにしても、これは夢なのだろうか?


 俺ってば子供の頃から寝るとリアルな夢ばかり見てる。しかも悪夢が多い。

 大抵は現実の生活で気に掛けてる事や悩んでる事、困っている事が夢の中に出てきて、それを夢とは気付かずに、何とか解決しようと色々頑張るけれど失敗し、青褪めて頭抱えてるっていうような最悪な状況なとこで目覚めて「夢で良かった」とホッとするパターンが一番多い。


 何でも人は寝ている時に悪夢を見る事で心のストレスを発散させる場合があると、昔、某テレビの健康番組で見た事がある。だから俺は悪夢をよく見るのかと納得した事があった。


 だから、そういう夢が多いのだが……。


 今、見ているのが夢だとすると、ちょっと今までの夢とは趣きが違う感じだ。何せ、この見知らぬ家にいる人の顔を見ると外国人だ。それに加えて、その服装、室内の様子を見ると、以前にテレビで見た中世イングランドを舞台にしたイギリスのTVドラマや洋画を思い起こさせる。


 そして、どういうわけか、俺はさっきからこの見知らぬ家にいる一人の赤ん坊に引き寄せられるような感じで少しずつ、その赤ん坊に近づいている。


 いや赤ん坊はただ寝てるだけで何もしてないようだし、俺自身も何もしてないのだが、何者かに操られるような感じで徐々に俺が赤ん坊の傍に近づいている。

「くっ止まれ!」と踏ん張ってみようとしたが、駄目みたいだ。段々と近づいている。

 あぁ段々と近づいている。


 赤ん坊は幸せそうに眠っている。可愛いなぁ。大きさからして、どうやら産まれてからそれほど日が経っていない赤ん坊のように思える。


 いや、和んでる場合じゃない! そんな事より赤ん坊への接近が止まらない! 通常なら赤ん坊に近づくのに何ら躊躇う事はないのだけど、自分の意思でもないのに近付いて行くのだから心は躊躇するし心配にもなる。


 そんな事考えてる間に、赤ん坊のすぐ傍まで来てしまった。


 今の俺の手は動かないけど、動かせたなら赤ん坊に触れるくらい傍に来た。そんな距離で俺の動きはようやく止まった。


 赤ん坊は相変わらず眠っている。とても可愛い寝姿だぁ。


 もう何か俺が赤ん坊の背後霊みたいになっている。


 これから何か起きるのか?

 ドキドキする。あれっ、体の感覚は無いみたいなのに、何故か心臓だけはドキドキしたり心拍数だけは増えてるような気が……。

 いや、そんな事気にしてる場合じゃないな。


 赤ん坊は相変わらずで動きはない。俺もその傍でじっとしているだけ。

 動きは共に無い。静かに時だけが流れて行く。 


 赤ん坊の母親? それに侍女? らしき女性が、代わる代わる赤ん坊の傍にいて、たまに男性も顔を見せている。


 なおも静かに時は経過し……。経過し……。経過……。


 あっ! 赤ん坊が目覚めた! それで急に泣き出した! 大変だ!


 女の人があやしてる。それで、どうやら赤ん坊は、まぁご(ミルク)の時間らしい。

 母親らしき人が……。細かい話は省略しよう。こういうものは男が語るものじゃないだろう。見て見ぬふり。見て見ぬふり……と。


 そんなこんなで時間は過ぎてゆく。


 そう言えば、俺がこの見知らぬ部屋にいるのに気付いた時、窓の外は明るかった筈だが、もう薄暗くなっている。何時間経っただろうか。


 今のところは何も起きないな……。

 俺が赤ん坊の背後霊になってるだけ。

 それ以外は悪い事態は起きていない。事態は膠着状況だ。


 何か起こるかとビクビクしていただけに拍子抜けな感じた。

 とりあえず、ホッとした。

●今のところ地味な話が十数話続く予定。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ