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3:えっち、い?

「ほー。で、志乃。古賀くんの手は、どんな感触だったのかね?」

 放課後。

 文芸部に入ってる、あたしとあゆちゃん、ほたるちゃんは活動場所の教室へ向かった。

 その途中での、質問攻め。

 あゆちゃん、容赦無いよー。

「あの、そのっ」

 わたわたしているあたしを見かねたのか、

「ほら、あゆ。あんまりしのっちいじめるな」

 ほたるちゃんが助けてくれた。

「いじめじゃないもーん。純粋な好奇心だもーん」

「それを世間じゃ、

『いじめ』

って言うの。おっけい?」

「ぶー。ただ単に知りたいだけなんだけどなー」



 部活の休憩時間も、やっぱりこの話題。あゆちゃ~ん。

 あたしは、思い切って言ってみることにした。

「その、ね? 触ったら……。そこがすごく……」

『ふむふむ?』

 わーん!

 あゆちゃんばかりか、ほたるちゃんまでー!

 耳まで熱くなったあたしは、しどろもどろになっちゃって、

「で。――すごく、じーんって。しちゃって。離れてもそこだけが、ずっと熱い感じがして、ね?」

「うん」

「で? で?」

 ひーん!

 ほたるちゃんもあゆちゃんも、にじり寄って来るよー!



「まだ言うの~?」

『うん!』

 フォローに入ってくれるほたるちゃんが、

『興味津々モード』

だから、誰も助けてくれないー。

「もー。でね? 熱いところが熱いって言うか……」

 意味分かんないよ、あたし。

「志乃。何だか……、えっちぃぞ」

「え? ええ~!?」

 あゆちゃんがとんでもないことを言った。

 ふと、ほたるちゃんを見やる。

 恥ずかしそうに、ほっぺを紅らめてた。

 誤解されてる~!

「えっちくないよお! ――でも。ちょっと。えっち、い?」

「――私、聴いてて、どきどきして来ちゃった」

 えー!? ほたるちゃんまで~?

「でもでも! ほたるちゃん、彼氏いるじゃん!」

「だから……。余計に……」

「あたしも何だか、――変な気分になって来た」

 ほたるちゃんもあゆちゃんも。他人の経験(しかも、手が触れ合っただけ)、で妄想しないでよー。

 そりゃあ、あたしにとって見れば、すごい経験なんだけど……。

 救われるように、チャイムが流れた。休憩時間、終わりだー。

「志乃。帰り、一緒にな」

「私も。カズくん、もう帰ってると思うし」

「そこまでして~。ほたるちゃん、カズくんと一緒じゃなくていいの?」

「帰宅部だから……。後でメール入れる」

 ふあ~。大ごとになっちゃった。


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