3:えっち、い?
「ほー。で、志乃。古賀くんの手は、どんな感触だったのかね?」
放課後。
文芸部に入ってる、あたしとあゆちゃん、ほたるちゃんは活動場所の教室へ向かった。
その途中での、質問攻め。
あゆちゃん、容赦無いよー。
「あの、そのっ」
わたわたしているあたしを見かねたのか、
「ほら、あゆ。あんまりしのっちいじめるな」
ほたるちゃんが助けてくれた。
「いじめじゃないもーん。純粋な好奇心だもーん」
「それを世間じゃ、
『いじめ』
って言うの。おっけい?」
「ぶー。ただ単に知りたいだけなんだけどなー」
☆
部活の休憩時間も、やっぱりこの話題。あゆちゃ~ん。
あたしは、思い切って言ってみることにした。
「その、ね? 触ったら……。そこがすごく……」
『ふむふむ?』
わーん!
あゆちゃんばかりか、ほたるちゃんまでー!
耳まで熱くなったあたしは、しどろもどろになっちゃって、
「で。――すごく、じーんって。しちゃって。離れてもそこだけが、ずっと熱い感じがして、ね?」
「うん」
「で? で?」
ひーん!
ほたるちゃんもあゆちゃんも、にじり寄って来るよー!
☆
「まだ言うの~?」
『うん!』
フォローに入ってくれるほたるちゃんが、
『興味津々モード』
だから、誰も助けてくれないー。
「もー。でね? 熱いところが熱いって言うか……」
意味分かんないよ、あたし。
「志乃。何だか……、えっちぃぞ」
「え? ええ~!?」
あゆちゃんがとんでもないことを言った。
ふと、ほたるちゃんを見やる。
恥ずかしそうに、ほっぺを紅らめてた。
誤解されてる~!
「えっちくないよお! ――でも。ちょっと。えっち、い?」
「――私、聴いてて、どきどきして来ちゃった」
えー!? ほたるちゃんまで~?
「でもでも! ほたるちゃん、彼氏いるじゃん!」
「だから……。余計に……」
「あたしも何だか、――変な気分になって来た」
ほたるちゃんもあゆちゃんも。他人の経験(しかも、手が触れ合っただけ)、で妄想しないでよー。
そりゃあ、あたしにとって見れば、すごい経験なんだけど……。
救われるように、チャイムが流れた。休憩時間、終わりだー。
「志乃。帰り、一緒にな」
「私も。カズくん、もう帰ってると思うし」
「そこまでして~。ほたるちゃん、カズくんと一緒じゃなくていいの?」
「帰宅部だから……。後でメール入れる」
ふあ~。大ごとになっちゃった。