2:手と手が!
そうそう。
あたしの名前は、甲田志乃。
だから、
『しのっち』
とか、
『志乃』
って、まんま呼ばれてる。
でも、スタイル悪いし、髪はクセっ毛だし。胸なんか、恥ずかしいほどぺったんこだし。
勉強も全滅なら、スポーツもダメ。
2人みたいに、いいところ1つも無いの。
「そーやって、うじうじ考えるの。志乃の良くないトコだぞ」
あゆちゃんはキツい。
自分が一番良く分かってるよお。
ほたるちゃんがいつも、フォロー役に回ってくれるから、助かってるけどね。
あたしは、あゆちゃんを思わず上目遣いしちゃって、
『お弁当の箸でつんつくしちゃうぞ攻撃』
をかわしながら、
「だってさあ。班が一緒なだけで、後は何にも接点無いもん」
「そこ! それを上手く使わないでどーする!」
「とりあえず、あゆ。座って」
立ち上がってお説教のあゆちゃんに、ほたるちゃんがまた、フォローしてくれた。
はああ~。
☆
(告っちゃう、かあ……)
5時間目。
彼の背中を、じっと見てしまう。
あ。
名前がまだったね。
彼の名前は、古賀朋春って言うの。
そんなことを考えていたら、いつの間にか授業が終わっていた。
当てられなくて良かったよお。
今だったら、何にも答えられないもん。
苦手中の苦手、物理だったし。
今日はこれで、授業はおしまい。
HRになった。
「プリント配るぞー」
センセがそう言って、列ごとにプリントの束を渡す。
そしたら。
後ろを向いてくれた古賀くんと目が合っちゃったばかりか。
手と手が触れ合っちゃったの!
あたし、恥ずかしくなっちゃって、うつむいちゃった。
「あ。ゴメンね。はい」
古賀くんが、謝りつつもプリントを渡してくれた……。
「そ! そんな!」
わ。
話せない!
そんな慌ててるあたしを見て、古賀くんは、
「――何か、痛いことしちゃった? 保健室行く?」
なーんーてー!
やさしいことばをかけてくれた!
「う。ううんううん! だいじょぶ。おーらい!」
あたしー!
何を話してるんだー!
「そう? 辛そうに見えたから……」
あーん。
やさしいなあ、古賀くんは。
「ほらそこ! ちゃんと後ろまで配れ!」
センセに叱られちゃった。