19:そんな個性はヤだな
「いいんじゃないか? 距離は縮まっただろ」
またまたお昼休み。
いつものベンチでお弁当。
あゆちゃんがそう言った。
「でもでも。みっともないトコ、ばっかしだよー」
「それがしのっちのキャラなんだから。ありのままを見せておいても、悪くないと思うけどね、私は」
ほたるちゃんはそう言ってくれるけど。
あたしの場合、
『ありのまま』
が、悲惨過ぎるのよね。
「前からだろ。遅刻寸前なのは」
「そーだけどさー」
「古賀くんも慣れてる」
「そーかもしれないけどさー」
相変わらず、あゆちゃんはキツい。
「まあ待って、あゆ。しのっちも。
『遅刻寸前モード』
でも、立派な個性だと思うよ?」
「そんな個性はヤだなー」
ホントに。
それ以前に、個性とは言えない気がする。
「カズくんによると、今日にでも部活、見学したいみたいだよ」
「ふぇ~。緊張する」
「いつものままでいいさ、志乃」
「その、
『いつもの』
って言うか、
『ありのまま』
が……、って、振り出しに戻っちゃうからヤメるけど」
お弁当のフタをしたほたるちゃんが、
「いいチャンスだと思うけど」
「あたしもだ。堂々としていて、じっくり見学してもらおうじゃないか」
と、あゆちゃんも言ってくれた。
今日の部活は、何だか波乱の予感……。




