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16:不思議の繰り返し

 ちゃぽん。

 お風呂の湯気の中。

 あたしは古賀くんのことを想い返していた。

(ここまで惹かれるなんて……)

 自分でも不思議だ。

 でも。

 不思議の繰り返しが、

『恋愛』

ってものなのかな、とも思う。

 これでも一応は、文芸部員だからね。

 きっと、

『ココロの機微』

って言うんだ。

 あたしだったら、そう表現する。

 でもなあ……。

 湯船の中の、自分を見返す。

(全然、胸が無い。

 ウエスト、くびれて無い。

 お尻、丸くない)

 ――女性の魅力と言うものが、完全に欠如してる。

 それが、あたしのカラダ。

(うう。情けない)

 あゆちゃんもほたるちゃんも、JKらしいスタイルしてるもんなあ……。

 哀しくなって、顔を埋める。

 ――ぶくぶくぶく。

 想いが泡になって、そのまま消えて行った。

(これじゃ、告るなんて遠い夢)

 あゆちゃんにまた、叱られそうだけどね。

 そう言えば。

 どうして、文芸部のことなんて訊いて来たんだろう?

 あたしが思ったように、作品発表の場が欲しいのかな?

 でも、好みが、

『読んでくれる子』

って。

 何だか矛盾してるけど。

 ――訊いてみるしかないよね。

 とにかく。

 雰囲気のことを訊かれたんだから、それに答えないと。

 どんなだろ?

 あたしにとってみれば、とても居心地のいい部活。

 だけどな。

 作品を見せ合って、お互いに切磋琢磨して……。

 アットホームな雰囲気だと思う。

 おっかない先輩も後輩もいないし。

 共通してるのは、みんな読書好きだってこと。

(これなら、古賀くんへの答えになるかな?)

 分かんないけど。

 それしか思い浮かばない。

 何に対しても、中途半端な自分がイヤになって来る。

 今までに感じたことの無い、強烈な恋心。

(振り向いてくれる? ――ねえ、古賀くん)

 あたしはのぼせちゃう前に、お風呂から上がった……。


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