第四話 松子ばあちゃん
私は釣りが趣味で、猫は大体魚が好きなものと思い、ロンを喜ばせたいと魚を釣って来て、刺身にして与えてみたら、唇で触って見るだけで食べようとしなかった。煮ても焼いても駄目だった。魚種が違えば食べるのではないかと思い、試して見たが食べなかった。
だから私達が食事をする時も、全然寄って来ないので楽だった。
但し鰹節は喜んで食べた、だからお好み焼きをした時は、鰹節をかけるので、テーブルの下までやって来て、ウロウロソワソワしていた。
松子ばあちゃんは私の母で、ロンが我が家に来た時は80歳だった。父は8年前に77歳で死亡していた為、我が家に隣接した一軒家に独り暮らしで、時々うちにお茶を飲みに来ていた。ロンが大好きで来ると必ず
「ロン君、ロン君」と探して
「はよ来い、はよ来い」と手招きをして、しつこく呼んだ。あまりしつこいので
「もう止めんさいや」と止めてもやめなかった。又いつも
「ロン君は外へ出してもらえんのんか、ただ家の中におって可哀想に、ちったあ出してやりんさいや」が口ぐせだった。
母に仲の良い「竹子」と言う妹がいる。竹子叔母さんも、時々母と一緒にお茶を飲みに来ていた。叔母さんはロンを見て
「どうせ飼うんなら、もうちょっと可愛らしいのを飼やええのに」と言った。もっと毛色の綺麗なのが好みだったのだろう。
そしてロンを可愛がる私の顔を見て
「ふうん、わしらにもあがいな顔をせいや」と言った。
ロンを飼うようになって、テレビも動物番組をよく見るようになり、外を散歩する時も、犬や猫を見かけると、可愛くて気にかかるようになった。




