第三話 遊び 「戦いごっこ」
ロンの餌はカリカリで朝と晩の2回に分けて女房がやっていた。トイレの掃除も毎朝女房の係だった。ウンチはしたら直ぐに見つけた方が処分した。
ある日女房が
「見て、見て」と言うので見ていたら、ロンが立っている女房の足元に寄って行って、よじ登る様にして抱っこをせがんでいた。女房は嬉しそうに直ぐに抱き上げて、頭やノドをなぜてやった。ロンは喜んでノドをゴロゴロ鳴らしていた。私は
「羨ましいな、女房が餌をやるからかな?」と思った。
二~三日すると私にも同じ仕草をしてきたので、嬉しくなって直ぐに抱っこしてやった。
ロンは全然鳴かなかった、声を聞いた事が無いので声帯に異状があるのではないかと思った。
ロンは一匹で飼っているので遊び相手がいなくて、私の手を目標に戦いを挑んで来た。
突き放すと、姿勢を低くして威嚇するように、
毛を逆立て顔をひし形にして身構え、尻をクリクリと振ってから飛び掛かって来た。少しもみ合い突き放すと、小さいくせにいっちょまえに、強者の様な顔を作って、又身構え飛び掛かって来る。
私の手はアマガミや爪で引っ掻かれ、傷が絶えなかったが、可愛いので我慢して遊んでやった。
もう一つの遊びで、私が座って左手を前に出し
「ジャンプ」と言うと、飛び付いてぶら下がるので、右手で落ちないように支えてやって
「すごい、ロン君は上手じゃね」と誉めてやった。
私が毎朝新聞を広げると、その上に乗ってきて読むのを邪魔をした。頭や身体を擦ってやると、ノドをゴロゴロ鳴らして暫く降りなかった。わざと新聞を開かずに様子を見ていると、構って貰いたくて、開かせようと催促して来た。
女房には、台所で何かしているとわざと足にチョッカイを出して、通せんぼをするので
「お父さん、ロン君が悪いよ」と言うと、
ばつが悪そうな顔をして止めるのだった。
私にはそう言う事はしてこない。
ロンは女房が弱くて優しいと判っていて、使い分けているのだろう。
ロンがうちの子になって、何か嬉しくて車を運転する時
「ロン君、ロン君、ロン君、ロン君♪」と
「いつでも夢を」のメロディーで、鼻歌を歌うのが癖になった。
又会社に行っても、休みに外出しても、ロンはどうしているか気になり、帰るのが楽しみで、帰ったら
「ロン君は良い子にしちょったんね、お留守番が上手じゃけんね」と言って抱き締めてやった。




