第一話 ロン君うちの子になる
二週間ぐらいして、百合がロンを連れて帰って来た。
「泊まり掛けで、研修に行くので、ロンを預かって来れ」と言う事だった。
ロンはカリカリの餌を食べて、小さいのに、ちゃんとトイレも出来ていた。
「偉いもんだ」と感心した。
ロンは何処にでも、居るような雑種で、毛色はキジトラで、尻尾が少し短かった。顔は目がキリッとした、なかなかの二枚目だと思った。
明るい茶色で、両前足の同じ位置に、濃い焦げ茶の、太い横線が入り、セーターを着ている様で、好ましかった。
私達は二階で寝ていた。私はロンと一緒に寝たかったが、猫の毛で汚れるからと、女房が嫌がった。
ロンは爪を引っ掛けて、引き戸を開ける事が出来たので、一階の戸に鍵を掛けて、二階に上がれないようにした。
朝は私の方が早く起きた。一階に降りると、ロンが、直ぐに私の側に来て、遊ぼうと誘うので、嬉しくて思わず大きな声で、
「ロン君、ロン君」と遊んでいると、
女房が後から起きてきて、
「ロン君、ロン君、やかましい」と怒られた。
一週間ぐらい預かって、百合が迎えに来た。
それから間もなく、又ロンを連れて帰って来た。
「夜勤があるけん、心配なんよ」と言うので、
「暑くなって来たけん、閉めきったアパートに、一匹で置いておくのは、可哀想じゃけん、うちで飼ってやるけん、置いて帰りんさい」と言うと、寂しそうにしていたが、自分では飼いきれないと思ったか、素直に置いて帰って行った。
その頃には、女房もロンに、メロメロになっていた。
「ロンの鼻は、ちょっと赤みがかっているのう」と言うと、
「そこが可愛いんじゃないの」と女房が言った。
ロン君はうちの子になった。
私が55歳、女l房が50歳 の時だった。
最初に私に会った時、直ぐに寄ってきて、スリスリしたのは、
「宜しくお願いします」と言っていたのだろう。我が家に、次男が出来た様な気持ちだった。
女房が、友達に、
「トイレの砂が木材で出来ていて、あまり臭くないのよ」と教えてもらい、近場では、宇品のホームセンターにしか、売っていないので、フェリーに自転車を乗せて、トイレと猫砂と、ペットシートを買いに行った。猫砂は3ヶ月毎に買う必要があった。ホームセンターは、宇品の桟橋から、2kmくらい離れており、8kgと重たい為、女房は自転車で、私は歩いて行くため、かなり重労働だった。
餌と、水と、トイレは、ダイニングに置いた。狭い家なので、教えなくても、ロンは直ぐに覚えた。




